偉大なる“UP! DOWN! 野郎たち”!!、今回は“タレ尻”が原因で宿敵コロナに首位を奪われた410型のリベンジを果たすべく当時の日産の持てる技術を総動員して新開発した3代目『510型ブルーバード』を取り上げます!
510ブル、今更私などがクドクドと語らなくとも有名なクルマで国産傑作車、名車としその地位は今や不動のモノで今でも愛好者、ファンが多いモデルですね!!
でもこのクルマも大好きなクルマなのでクドクド語らせてもらいます(汗)、よろしければお付き合い下さい!
この年代になるとワタクシも若い頃は友人他も結構乗っていたりD営業時代に下取りしたりとかなり馴染み深くなってきます。
67/8、タレ尻スタイルを矯正して411とし410の極端なDOWN!!を打ち止めにしやや人気や販売も回復傾向へと歩みだしたブル、しかし410以降の64yに登場したボクシーで重厚感のある“アローライン”で大人気となったトヨペットコロナ(T40/50系)の勢いには全く歯が立たない状況でありこれに追い付け!追い越せ!の当時の日産社長、川又克二氏の肝入りと大号令で日産の持てる技術を総動員して開発されたのが510です。
イタリア自仕込みのモダンで気品を訴えた410が日本人には受け入れられなかった事を反省、510はアメリカ的な角ばった直線的なスタイリングに変更、コロナのアローラインに対し“スーパーソニックライン”を採用、ハイスピードを求める世相を反映して当時海外で就航したばかりで話題になった最新鋭超音速航空機の「コンコルド」をイメージに取り入れる戦略にてスーパーソニックラインを大々的にアピールしました!
↓ダイナミッテクな“スーパーソニックライン”が鮮烈な新星510ブル!
(前期1600SSS)
これは合併前のプリンスがスカイラインの上級車(後に日産ローレルC30型として登場)に描いていたデザインでありこれをローレル発売前、合併のドタバタで「どうせ合併で同じ会社になるんだからうちの看板車に使わせろ!」と言ったか言わないかは知りません(汗)がそれなりの圧力?協力?からプリンスでほぼ完成されたローレルのデザインをほぼそのまま持ってきたものでした。
サイドを走るFrからRrエンドに力強く走る直線=スーパーソニックライン と全体的に贅肉がなく無駄のない直線シルエット、クラス最大値を誇る堂々としたトレッドとシャープな横一線のFrグリル、前後の逆スラントと三角窓を一早く取り去ったすっきりしたサイドビューから造られるスタイリングは専門家~一般大衆に広く支持され510はT40/50コロナの後ろ姿があれよあれよと近づく程の大人気UP!!!UP!!!となりました!
↓発売時のカタログには“コンコルド”をあしらった 『SUPER SONIC LINE』を誇らしげに謳う!!
(前々期1300DX)
510はその卓越したスタイリングだけではなく新開発、OHC機構を持つL型エンジンや新設計のシャージ&脚廻りも評価が高く特に脚は当時では高級スポーツカーでしか見られなかったFrストラット/Rrセミトレーディングアームの4輪独立懸架方式を採用、これは例え廉価版STDであってもこの脚廻りを設定しておりこの部分ではクラス最高の乗り心地と走破性を示し特にRrはライバルのコロナやコルト等が旧態(と言っても当時は常識)化のリーフ式を採用していたのに対し大きく差を付けるモノ、国産初のHTボディやDXな装備で高級をイメージに売りとしたコロナに対して見えない部分、OHCエンジンや高度な脚周り等、機構にコストをかけ玄人に訴求するブルとなりました。この辺から当時、自他共に認める「技術の日産・販売のトヨタ」という言葉が浸透するようになりましたね~…
↓透視図他で4独サスをアピール!!
この脚廻りが大きな要因となり輸出先の北米市場では廉価な割には欧州車並の秀逸な乗り心地と操縦性が味わえるクルマとして「DATSUN 510」の名前は大人気を得、国外ではコロナなど問題にならない程の爆発的UP!!!となっていました!
それでは車両概要に移ります。
(サイズ)
:全長4120全幅1560高1400ホイールベース2420(以上mm)
(車重)
910kg(1300DX)
(定員)
5名
(エンジン)
L13型 水冷直4 1300cc OHC シングルキャブ 72ps
L16型 水冷直4 1600cc OHC ツインキャブ 100ps
(駆動)
FR
(ミッション)
4速MT /3速B・WAT(DX/STD=コラム/SSS=フロア)
(脚回り)
Fr:ストラット
Rr:セミトレーディングアーム
(バリェーション)
1300STD/1300DX/1600SSS
(ボディ)
2ドアセダン/4ドアセダン/エステートワゴン
サイズは410に較べ大幅に大型化、これは既に1000ccクラスには新星なる『サニー』が登場した事によるクラスグレードアップによるもので拡大されたサイズにより室内長さ1610mmとクラス最大の数値を得ています!
車高は410とは逆に抑えられ70年代に向かう「低く・長く・幅広く」を実現、スクエアなデザインの為無駄な大きさは感じられない非常に好感を持てる存在感だったと思います。
ボディバリェーションは410時代と変わらずの2/4ドアセダンとエステートワゴン、そして410後半で追加された商用バンとなります。
410で記載しませんでしたがこれまで「ダットサン・バン」をブルーバードのバンとしてきましたがダッサンには2ドアバンの設定しかなく幅広い需要に応える為、エステートを商用に変更→ボディは後年~現代同様バン/ワゴンで共有化がなされ正式に「ブルーバード・バン」としてラインナップされています。
新開発L型エンジン、130セドリックで“L型(L20)”を名乗って以来510でL型エンジンの第二弾となりこの後20年に及び(78y以降は4発L型→Z型に改称)日産の看板エンジンとなってゆきます。
L20は高級車向けストレート6でしたが510では4気筒の軽量/シャープな吹け上がりを身上とするものでワタクシも後年、510は全てのL型(L13~L18)を体験しましたが最小排気量のL13であってもスムーズで軽快な吹け上がりは魅力、同排気量のプリンス系G型や三菱サターン4G32型と較べるとパンチこそ控えめながら何と言うのか…紳士的な品のあるエンジンと言いましょうか?プリンス/三菱より静粛でかつ元気なよくできたエンジンでしたねー。
↓新開発、OHC機構と鋭い吹け上がりが身上のL型エンジン(L13型)
↓L13搭載の普及グレード「4ドアセダン1300DX(前々期型)」
↓「2ドアセダン1300DX(前々期型)」Rrビュー
↓パイオニアである「エステートワゴン」も勿論ラインナップ!
尚、410でデビューし話題を呼んだ“スーパースポーツセダン”『SSS』も健在でこちらには300cc排気量拡大しSUツインキャブで武装、実に100psという高性能を持つL16型を搭載し410SSSを上回る運動性能はよりこの種を好むユーザーから高い支持を得たのは勿論、これをベースによりワークス・ラリー活動も活発化し後年70年には510SSSにて第18回サファリラリーにて総合・チーム優勝の2冠達成!!という快挙を成し遂げこの活躍がブルーバード(日産)=サファリラリーのイメージが定着、当然510のイメージアップにも大きく寄与していました。
60年代~70年代、後年のWRCで活躍するトヨタ、三菱、富士重も既に国際ラリー参戦は果たしていながらも一早くそれにて目立った成績を残したのは62yにダットサン210から参戦した日産=510が初めてであり自動車後進国だった日本車のイメージを覆し世界中に実力をアピールし日本車の実力を知らしめた510の存在は非常に有意義だった事と思います!(68y~510にてサファリ参戦し70yに2冠達成、三菱ギャラン→ランサーがサザンクロスで総合優勝を果たしたのは72y~の出来事でした。)
↓410から発展継承する“スーパースポーツセダン”『1600SSS(前々期)』
↓SSSには1.6Lまでボアアップ&ツインキャブ化したL16型100psエンジンを搭載!
↓戦力大幅UPした510SSSはサファリ2冠達成という快挙を!!
(70yサファリ優勝のSSSラリー仕様車)
尚、510ブルのダートラ走りを拝見したい方→
こちら にて!
余談になりますがこの510のサファリ2冠は当時大きな話題で各書物が出版されたり石原裕次郎氏も感動して自身主演で石原プロ製作の幻の映画と言われる(=死去前に「これだけは簡単に公開して欲しくない」 と裕次郎氏がコマサ=石プロ番頭 に言い残したとか)“栄光の5000キロ”という映画も作られました!
510のラリーでの活躍詳細は→こちら (リンク先の「70年代」をクリック!!)でも確認できます!
510の特徴は先記のようにズバ抜けた運動性能の他、スクエアなデザインからなる室内の広々感と視界の良さという点も挙げられると思います、インパネも外観同様にスクエアなデザインでSTD/DXでは流行の横バー式メーターを、SSSでは4連丸型のスポーティな味付けとされ機能的で見た目もスッキリ、素っ気なさを感じる程ながら嫌味もなくgooなデザインだったと思います!
↓1300DX(前々期)のインパネ
↓1600SSS(前々期)のインパネ
それではモデル改歴に移ります。
(68/10)
「1600ダイナミックシリーズ」と称して1600シングルキャブ(L16型OHC 92ps)を追加設定しています=1600DX及び1600エステートワゴン及びSSS
ダイナミックシリーズではグリルとテールを専用デザインとし1300と差別化、グリルはこの頃のシンボルだった【D】マーク(DATSUNの“D”)を1300の横型から縦型に変更し高級感をアピール、テールもそれに倣った味付けとされています。
SSSも1600という事ありダイナミックシリーズに編入、テールを共通化(MC)、グリルを専用デザインにしインパネも小変更しています。
上記1600系はこれまで410より続いた、続に言う「ケンカワイパー」(=ワイパーピボットが左右それぞれ右端/左端に設置されワイパー作動時は対向してそれが動作) 方式から通常の並行動作のタイプとされています。
“ケンカ”式(対抗式)は輸出用と国内用に2タイプのワイパーを用意する必要がなくコストダウンには有効ながらどうしてもその特性から物理的に一番視界的に重要なセンター部分の拭角面積が減るのが欠点で並行式を新たに採用した訳です。
↓新たに追加されたダイナミックシリーズの1600DX(㊤Fr㊦Rr)
↓1600DXに搭載されたL16型シングル
↓SSSもダイナミックシリーズとしてMC!!
1600DXには1300でコラムのみの設定だったところに4MTフロアがラインナップされシングルキャブながらもスポーティに振られたモデルでもありました。
↓小変更が施されよりスポーティになったSSSのインパネ
(68/11)
ブル初となるスポーツボディである『クーペ』新設定。
ライバルのコロナが高人気の最大の理由=HTの存在である事に対抗、510ではコロナ同様のHTではなく従来の2ドアセダンをベースにルーフを低くしFrと特にRrウィンドゥの傾斜を強めたクーペを追加設定しコロナに闘いを挑みます!
HTの二番煎じをせずにクーペで若者層に訴求した部分、当時の日産の意地を感じますネ!!
クーペは1600のみの設定でシングルキャブのベースグレード(クーペ1600)とツインキャブのSSSクーペとなっていました、ミッションは4MTフロアのみ。
尚、クーペは後年道路運送車両法で規制された為、現在では採用不可な「シーケンシャルフラッシャー」をRrウインカーに装備、C30ローレルHTも同様の装備をなされていましたが子供心に510クーペやローレルが右左折時の後ろ姿でウインカーを点灯する姿!~ピラピラ~ と流れる点滅に妙に魅せられていました(^^;)
文字通りの“子供騙し”でしたが最高にカッコ良かったです!!
↓「SSSクーペ」のFr&Rrビュー
(69/4)
セダンに設定の3ATはB・W製より内製となります。
(69/9)
セダンの1300/1600共にのMCを実施、前後期型となります。
Fr/Rrの意匠変更に加えインパネデザインを安全対策を兼ねて変更、ソフトパッドを大幅追加したダッシュとなっています。
クーペは外観は従来型を継続しながらインパネ変更とグレード変更を行い従来のベースグレードをクーペ1600スポーツとしています。(セダンにもシングルキャブながらSSSの外観を持つ「セダン1600スポーツ」を追加しています)
この他、ラジオアンテナを従来のフェンダー部からAピラーへ移設がなされます。
↓前後期型1600DX
↓前後期型1600SSS
↓前後期型よりインパネも新デザイン(㊤普及グレード/㊦SSS)
(70/1)
クーペに3AT追加。
(70/9)
再びのMCで後前期型となります。
Frグリルの意匠変更(Rrは変更なし)と共に1300→1400へ、そして新たに1800SSSが設定されています。
1400はL13のボアアップ版L14型OHC シングル85psを、1800SSSはL16のボアップでL18型OHC SUツイン110psを搭載しワイドバリェーションを繰り広げます。
この時期、出せば売れる時代でありトヨタがコロナやカローラで火を付けた“ワイドバリェーション”は日産のみならず各社に飛び火、一つのクルマでミッションやボディカラー選択まで入れると幾何学的な選択肢が広がったのもこの時代=高度成長期の語り草ですね!
搭載エンジン拡大/充実によりセダン1400/1600に新グレードの「GL」を設定、SSSは1600/1800の2バージョン化となっています。
GL系と1800SSSは内装の高級化、専用デザインのホイールキャップを装備、インパネにも従来にはないセンター空調吹き出しルーバーが設けられていました!
↓セダンに新追加の「GL」グレード
↓セダン/クーペに新設定の「1800SSS(セダン)」
↓同「1800SSSクーペ」
↓「1800SSSクーペ」のRrビュー(ちなみにこのカラーはサファリラリーのアフリカ=土 をイメージした“サファリブラウン”として510のイメージカラーでした!)
↓高級化されたGL㊤/1800SSS㊦のインパネ
(71/9)
ブルーバードは71/8、510登場後モデルライフの4年を経過した事もあり次世代型となる『4代目610型ブルーバードU』が登場します!
この時期、下級クラス=大衆車と呼ばれたカローラやサニー、コルトギャランやファミリア→グランド・ファミリア等、ユーザーの需要に応えるべく次々に車格をグレードアップする風潮がありコロナ、ブルクラスに迫る勢いとなってきていました。
そこで610は510の車格をアップ、510の上級エンジン(1600シングル/1800)搭載モデルを610に移し2000級に大差ない余裕のサイズを得たモノとなっています。
この事によりB110サニーと610のクラスが開いてしまい他社流出=70y発売の新車種トヨタ初代TA1♯系カリーナ を恐れた日産はモデル末期ながらも依然人気が衰えず商品力を持ち続けていた旧型となる510をこの狭間を埋める車種として車種整理の上残す事を選択、三菱等ではよく見られましたが日産としては異例の“新・旧モデル混在販売”となっています。
↓クラス上げにより誕生した4代目となる『610型ブルーバードU』
このため510/610の差別化の為、ネーミングに610では“U”を追加、“ユーザー本意”を表す『U』という名付けでした。
510は610発売直後に最終のMCが施されFr/Rrのフェイスリフトと車種編成を行い後々型となります。
Frは新登場の610チックのデザインが与えられRrもそれまで赤一色だったテールランプに安全対策からアンバーを追加しています。
↓最終型となる510・1400GL㊤Fr㊦Rr
車種整理はU発売の為、510では上級だった1800(L18ツイン)搭載モデルとクーペは廃版となります。
UにはHTが設定されていた為、クーペはお役御免となった訳ですね!従って510のこの時点でのラインナップはL14 1400(STD/DX/GL)、L16 1600(DX/GL)、L16ツイン 1600SSSとなりボディは2/4ドアセダンとバンという事になっています。
↓最終型㊤1600SSS㊦1400DX
このような”新旧体制”となったブルーバードですが皮肉な事に新型よりも旧型人気が上回ると言う現象が起きてしまいますorz…
これは610がそれまでのシャープでスポーティイメージ満点だった510を高級化という肥大化、肥満化、重量増がとラリーで鍛えた510の走りのイメージを完全にスポイルしてしまいブル・ユーザーには嫌われてしまい併売時は610の販売不振に悩む程のモノでした。
確かに610デビュー時、子供心にもあまりにも秀逸だった510の後続としては610はイメージが違い過ぎ同じブルーバードを名乗りながらも全く別のクルマの様相であり510に心酔したファンにはキツイかなと・・・
ワタクシは個人的に610も嫌いではなく思い出もあるクルマなんで支持しますが大方の日産ファン/ブルファンには認めがたい存在のようですね~。。。
現代水準からすれば610も決して重い・デカイといった部類ではないのですが当時として直線美で売った510とは180度変わってしまった丸味帯びたスタイルも許せなかったのは理解できます、ただあまりにも後年の610に酷評は?って感じです、乗ってみると610は鈍重でも扱いにくいサイズではなかったので。
(72/12)
後続610と1年余りを併売された510も遂に製廃となります。
この時点でまだ510はピークは過ぎながらも一定の販売はあり廃止は惜しまれましたが流石に誕生後5年を経過、後発のライバルとなるトヨタ・カリーナの好調もあり510はこのクラスの新開発車『初代710型バイオレット』に後を託します!
↓510後続は何と新車種の初代バイオレット!!
つまり510は上級グレード(1800)のテイストを610に、1400~1600SSSの走りを含む普及モデル(クラスでのという意味)をバイオレットに受け継いだ事になります。
510のDNAを直接、殆ど受け継いだのは新車種バイオレットですが開発順を示す型式(510→610→710)が伝統を証明しており名前は違えどバイオレット初代710はブルーバード一族となっています!
以上のように510ブルーバード、気合を入れてデビューしただけあり410の失敗を取り返すUP!!!UP!!!人気を得、前半ではライバルのコロナ人気に今一歩敵わないながらもコロナT40/50が後半、コロナ・マークⅡ(T60/70系)発売のゴタゴタもあり失速、一時廃版をトヨタは決意しコロナを大幅に車種整理、その後継続を決定しながらも後続の4代目T80系(70/2発売)が従来型ほどの人気は得られずDOWN気味だった事もありクラスNO.1を奪還した時期もあり自他共に認める人気車、UP!!!車でした!そして今では国産名車に数えられる程のモデルでブルーバード史上最人気を得たのもご承知の事と思います・・・
次回は二つの後続車である『4代目610ブルーバードU』と『710型初代バイオレット』を取り上げます!
この2車は果たして510のUP!!!遺産は受け継がれるのか!! お楽しみにぃ~v(^^)v