
'72年、850スパイダーのマーケットを受け継いでデビュー
X1/9は128のパワートレーンを流用した、極めてエポックメイキングなミドシップスポーツである。
128ラリー用のベルト駆動SOHC4気筒超ショートストロークのエンジンを更にチューンアップして採用。
従来のフィアットFFモデルと同じくエンジンの脇にミッションとデフを置き、不等長のドライブシャフトで前輪を駆動する“ダンテ・ジアコーザ”式FFから、操舵システムだけ取り除いてそっくりミドシップに移設したもの。
パワーは初期型1300cc版のEC仕様で75PSと決して多くない。
しかし、優れてファンなハンドリング、リーズナブルなパフォーマンス、ノンサーボ4輪ディスクのリニアなブレーキフィールなど、優れたスポーツカーとしての資質は全て兼ね備えた佳作であった。
ボディデザインとコーチワークはカロッツェリア・ベルトーネに託された。当時のチーフ、マルチェッロ・ガンディーニによる明快な美しさを見せるスタイリングも'70年代スポーツカーデザインの傑作と称されたが、驚くべきはその優れたパッケージングで、2人の乗員とかなり大量の荷物も容易に飲み込んだ。
X1/9で示されたコンセプトは、この後ライトウェイトスポーツカーの新たな基準となった。
北米ではポンティアック・フィエロ、日本ではトヨタMR2/MR-S、そしてイギリスではMGFなど、同様のコンセプトを継承するスポーツカーは世界で続々と現われ、FFドライブトレーンを流用したミドシップスポーツカーという全く新しいジャンルを築くことになる。
フィアット・ブランドでの生産は'82年を持って終了するが、その後も市場のリクエストに応えてベルトーネ・ブランドで生産は継続、結局1989年まで命運を保った。
エンジン
種 類 :ガソリン 4サイクル
冷却方式 :水冷
シリンダー配置 :直列
気筒数 :4
バルブ形式 :SOHC
排気量(cc) :1290
最高出力(PS/rpm) :61/5800 (DIN)
最大トルク(kgm/rpm) :9.1/3600 (DIN)
燃料供給装置 :キャブレター
キャブレター数 :1
過給装置 :
ボディ
構造 :モノコック
ドア数 :2
ボディ形状 :オープン
全長(mm) :3900
全幅(mm) :1570
全高(mm) :1170
ホイールベース(mm) :2200
トレッド前後(mm) :1335/1345
車両重量(kg) :890
乗車定員(名) :2
駆動系統
エンジン搭載位置 :ミドシップ横置
駆動方式 :MR
変速機 :4速MT フロア
性能
最高速度(km/h) :170
シャシー
サスペンション 前 :独立 マクファーソンストラット コイル
サスペンション 後 :独立 ウィッシュボーン ストラット コイル
ブレーキ 前 :ディスク
ブレーキ 後 :ディスク
ステアリング :ラック&ピニオン
タイヤ :165/70SR13
メンテナンス費用が嵩み、半年で売却