
こんばんわ。
映画評論家のなっち♪です(^-^v)
さてさて,「
感染列島」の続きです。
前回の話は
こちらで。
2.病院のあり方。
この話は,決して絵空事ではありません。
鳥インフルエンザのヒトへの感染例が報告されてから,新型インフルエンザの発生と大流行が危惧されています。
ちょっと前に話題になったSARSは幸い日本では流行していません。
そのせいもあると思いますが,厚労省はあまりにも楽観視しすぎと思われます。
以下,厚労省のホームページからの抜粋です。
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I-6 新型インフルエンザが全国的に流行した場合に、どのくらいの人が感染すると予測されるのですか。
日本政府は人口の約1/4の人が感染し、医療機関を受診する患者数は最大で2500万人と仮定して、対策を講じています。
また、過去に流行したアジアインフルエンザやスペインインフルエンザのデータに基づき推計すると、入院患者は53万人~200万人、死亡者は17万人~64万人と推定されています。しかし、これらはあくまでも過去の流行状況に基づいて推計されたものであり、今後発生するかも知れない新型インフルエンザが、どの程度の感染力や病原性を持つかどうかは不明です。
これ以上の被害が生じる可能性を否定できない一方、より少ない被害でとどまる可能性もありますので、実際の発生状況に応じて柔軟な対応がとれるように準備しておく必要があります。
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鳥インフルエンザは2009年1月27日現在,全世界で403人の罹患が報告され,254人の死亡が確認されています。
何と,死亡率63%ですよ。
アジア各国と日本の医療水準の差があるとはいえ,この数字ってあまりにもお粗末じゃないですか。
死亡率2~3%程度って・・・
人口の20%が罹患する計算っていうのも,どうやってはじき出した数字なのか定かではありませんが,世界的大流行が日本から始まる可能性は考えていない数字ですよね。
まぁそこには目を瞑ったとして,その死亡率は完全に舐めていますよね。
日本の医師数は約20万人,看護師数は約120万人です。
2500万人の罹患として,医師一人当たり125人,看護師一人当たり21人の診療に当たらなければなりません。
ですがこれは単純計算です。
実際にはSARSの時同様,拠点対応になるでしょう。
開業医が診察することはないか,あっても流行のほんの初期の段階だけでしょう。
隔離・封じ込めが行われる可能性が高く,罹患患者が出る地域,病院は限られると思われます。
そうなると,2500万人の実際の診察,治療に当たるのはごく少数の医師の看護師ということになります。
各地に拠点病院が決められ,実際に大流行が生じ,患者が溢れかえればその病院では一般患者の診療はできなくなります。
間違いなく病院機能は破綻します。
一般の患者さんたちの協力が必要です。
病院は,直ちに治療が必要な本当の意味の救急患者さん達で溢れかえりますから,今じゃなくてもいい人は帰りましょうね。
感染症以外の患者さんは他の病院に転院せざるを得ませんが,とてもじゃないけど紹介状なんて書いている暇もないでしょうし,転院先を探す余裕すらあるかどうか。。。
そもそも,救急を行う病院というものは,こういった事態を想定して,常に余力を残した状態でないといけないのです。
他には,大規模災害時がそうです。
普段の診療でいっぱいいっぱいでは,何か大惨事が起こったときにはどう対処すればいいのでしょうか。
患者さん側も考えていただきたいのです。
普段から,何でもかんでも大病院に行って診てもらえばいいというものじゃありません。
あなたの病気が本当に大病院にかかる必要があるものかどうか,もう一度考えてから受診しましょう。
地域の拠点となっている大病院は,あなた方の治療にとっても最後の砦です。
そこの機能が破綻してしまっては,誰も助けられなくなります。
警察と一緒ですよ。
事件があったときにいきなり警視庁に行きますか?
まずは110番するか,交番や派出所に行きませんか?
地域の開業医が交番や派出所の役割をしているんですよ。
救急隊のみなさんも,119番があったからって何でもかんでも大病院に運び込まないように。
何処とは言いませんが,某救急隊は何も考えずに隣町の大きな病院に患者搬送しますよね・・・自分の町にも大病院があるにもかかわらず。
しかも,その大病院の入院患者さんが外出中に転んだからって,わざわざ隣町の病院に・・・普通は入院先の病院に連絡するでしょ?!
さらに,こういった未知の感染症との闘いは深刻を極めます。
患者さんもそうですが,医療従事者は患者さんがそこにいる限り,未知の感染症にいつ感染してもおかしくない状況で働き続けなければなりません。
患者数を考えると,休む暇もないでしょう。
精神的にも肉体的にも疲弊していきます。
そんな状態ではますます感染症にかかりやすくなります。
感染した医療従事者は,もはや患者でしかありません。
診療に当たることはできなくなります。
誰かが罹患すれば,加速度的に医療現場は過酷になっていきます。
目に見えない脅威と戦うということ。
医療従事者は常に死と隣りあわせで戦っているのだということ。
医療現場とはそういう現場です。
逃げ出すことはできません。
まさに戦場と化すのです。
自らの生死をもかけて戦う場なのです。
ご存知ですか?
ガンでさえも・・・人から人へと染る可能性はゼロではないのです。
未知のウイルスであれば,新たなる感染を防ぐためには感染した患者さんを隔離しなければなりません。
危機的状況下では,防護服で重装備した人たちが突然目の前に現れ,病院へと連行されます。
感染しているということは,からだそのものがウイルスの温床です。
感染源になります。
放っておいても軽症で,すぐに治るような本当のカゼならいいですが,人を死に追いやるウイルスではそうはいきません。
あなたも隔離されるかもしれません。
あなたの大切な人も隔離されるかもしれません。
感染者数が増えていくと,病院すら隔離され,そしてついには街ごと隔離されます。
もしかしたら国ごと。
未知のウイルスと戦うということは,そういった事態が現実になるということです。
そんなときもあなたは冷静に対処ができますか?
この映画はそんなことも考えさせてくれます。
この映画では描かれていませんが,運よく治癒し,退院したとしても,おそらくは社会復帰はできません。
死をもたらす未知のウイルスに感染したということ。
未知のウイルスで汚染された空間にいたということ。
それらの事実によって,例え本当に治っていて,体内にはウイルスは全く存在しない状態になっていたとしても,人々は恐ろしくてその人に近付くことはできないからです。
症状がなくなったということは,治ったということではありません。
ウイルスは活動性を失っただけで,キャリアとなっただけかもしれません。
またいつ再び発病するかもわかりません。
どういう感染経路をたどるのかがわからない限り,どうやって感染を防げばいいのかを正確に知る人はいないのです。
どういう傷病経過をたどるのかがわからない限り,治ったと言い切れる人はいないのです。
再び猛威を振るうことができる体内環境になるまで,殻に閉じこもって潜伏しているだけなのかもしれません。
発ガン性のあるウイルスではいつの日かガンという深刻な病状をもたらすかもしれません。
そこまで深く考えていなくても,人々の心情として,ウイルスに犯された人には近寄りたくないものです。
そして・・・
魔女狩りが始まります。
もしこの映画のように,日本だけで感染が大流行したのであれば,日本は国交を絶たれるでしょう。
少なくとも海外からの観光客は来なくなります。
日本からの,特に食物の輸出には厳しい規制がかかるだけでなく,規制をクリアしたとしても消費者がこれを購入することはないでしょう。
逆の立場で考えてみてください。
鳥インフルエンザが人に感染したといわれる地域から送られてきた食物を口にすることができますか?
理屈ではないのです。
そういう感情が起こることはしょうがないことなのです。
だって,未知のウイルスなんですから。
何一つわかっていないのです。
映画では最終的にワクチンが完成しますが,死者は日本の人口の10%にまで達します。
厚労省の予測の何と大きくかけ離れているのは,このウイルスが鳥インフルエンザ以上に致死性が高いものだからです。
ですが,こういった類のウイルスであれば,現実的にはもっと増えると思われます。
日本人は感染に対して無頓着です。
大都市でのあの人口の密集具合を考えると,1日にして数千人~数万人に感染が広まるでしょう。
満員電車の中に一人でもそういう人が居れば,大流行です。
新幹線や飛行機や映画館やコンサート会場のように長時間閉鎖された空間を共有した場合にも・・・間違いなく大流行です。
そして,ウイルスなんてそんなに簡単に発見できるものではありませんし,ウイルスの性質も全てを詳細に知ることは不可能です。
ワクチンなんてそんなに簡単に作れるものではありません。
そういう意味ではこの映画は絵空事です。
でも,そこに込められているメッセージは,決して絵空事ではありません。
そういった目で,この映画を観てみてください。