マツダの次世代商品コンセプト「マツダ 魁 CONCEPT(マツダカイコンセプト)」の記事は良く見かけるのですが、次世代デザインとして発表した、
MAZDA VISON COUPE (ビジョン クーペ)
http://www2.mazda.com/ja/next-generation/design/
は、イマイチ地味というか、注目されていないんじゃないかと感じます。
魁コンセプトが次世代アクセラのコンセプトであるのに対して、VISION COUPE は発売前提のものではないですし、何よりもクーペとか日本じゃ人気ないし、グレーとかが地味だったり、そういった点で魁コンセプトよりも注目が集まらないのかもしれません。
とは言え、パリで開催された「第33回Festival Automobile International(国際自動車フェスティバル)」では、「Most Beautiful Concept Car of the Year賞」を受賞するなど、世界的な評価は非常に高いのは間違いありません。
「マツダ VISION COUPE」がフランスにて「最も美しいコンセプトカー」に選出
http://www2.mazda.com/ja/publicity/release/2018/201802/180201a.html
で、この評価の高いデザインで目につくのは、非常に長いノーズ(フロントガラスより前のボンネット部分)。
また元日産GT-R開発者、現ラクスジェンU6開発責任者の水野和敏氏には、無駄なデザインとお叱りを受けてしまうかもしれませんが、魂動デザインの長いノーズも実は無駄ではなく、エンジニアリング要求をデザインに生かした結果だというのは
前回記事にも書きました。
となると VISON COUPE も無駄なデザインでノーズが長いのではなく、ノーズを長くする必要があると勘ぐるべきでしょう。
そう、直列6気筒エンジンです。
昔は高級車=直列6気筒でした。
直列6気筒は原理的に振動が少なく、2Lを超える排気量には適切なシリンダーサイズとなるため、エンジニアリング的にも優れたエンジンでしたが、衝突安全性を確保するためにエンジン全長を抑える必要があり、6気筒エンジンは左右3気筒ずつに分けた V6 エンジンに淘汰されてしまいました。
メルセデス・ベンツが新開発した直6エンジン+48Vハイブリッドシステム、いったいどこが凄いのか!?
https://autoc-one.jp/mercedes-benz/s-class/newmodel-5001552/
あの国沢光宏氏の記事なので信頼性に欠けますが、多分オートテックワン編集部とメルセデスベンツの監修を受けてるでしょうから、そう間違ったことは書いていないでしょう。
そして、注目すべきは次期アテンザにも直列6気筒エンジンが載るのではないかという噂です。
直6エンジンが今、見直されている本当の理由 - ベンツが復活、マツダ次期「アテンザ」搭載か -
https://toyokeizai.net/articles/-/213620
長い記事だし、読んで理解しづらいところがあるかもしれないので要約すると、
ハイブリッドが登場し、燃費競争が始まる
↓
欧米の燃費計測 NEDC は低負荷・低加速中心なのでダウンサイジングが有利
↓
燃費計測が実走行に近い世界統一のWLTPになってダウンサイジングが不利に
↓
適正な排気量(ライトサイジング)が見直され、高級車種は6気筒が必要に
↓
V6 だと吸気系も排気系も2つ必要
↓
直6 だと吸排気系が1系統で済む
吸排気系が2系統だと、EGRもターボもクーラーも2系統になりますし、特にディーゼルの排気系統は、DPFやNOx浄化触媒が必要なので高額になります。
V6 だとこれを2系統、左右に搭載する必要があるため、衝突安全性技術が進化した今、直列6気筒が見直されているという訳です。
ライトサイジングの方が有利だということは、ダウンサイジング全盛の頃から、
マツダの少し太った方のおっさん、人見光夫 マツダ株式会社常務執行役員・シニア技術開発フェロー が口を酸っぱくして言ってたんですけどね。
さらに、マツダの今後の方針とも合致します。
マツダは2012年に発売されたフルスカイアクティブのCX-5 以降、コモンアーキテクチャ(一括企画)という手法で車開発を進めてきました。
トヨタを震撼させたマツダの戦略 「コモンアーキテクチャー」
http://news.livedoor.com/article/detail/13082504/
簡単に言えば、上位車種から下位車種まで、共通に開発された技術を搭載するというものです。
部品を共通化するのではなく、技術を共通化し、開発コストを低減し、多くの車種にその恩恵を与えるという方針です。
例えば、他社では、エンジンの「部品コスト」を削減するために、1.5L と 2L のエンジンブロックとピストンを共通にし、ストロークだけ変えて排気量を変えるということをやります。
しかし 1.5L と 2L のスカイアクティブエンジンは、ほぼ共通部品はありません。エンジンブロックもピストンもクランクも別です。
その代わり、ボアストローク比を共通化し、燃焼室の形状もほぼ同じにし、同じ燃焼するエンジンとすることで、排気量の異なるエンジンを個別に開発するというエンジンの「開発コスト」を大幅に削減しているのです。
マツダは、このコモンアーキテクチャ(一括企画)を、次世代車種では変更し、「スモール商品群(普及車)」と「ラージ商品群(高級車)」の2つに分ける手法へと転換すると言いだしました。
【池原照雄の単眼複眼】マツダ、200万台体制へ脱・「一括企画」の商品開発とは?
https://response.jp/article/2018/05/09/309445.html
スモール商品群(普及車)は、直列4気筒横置きFF(AWD)というのは変わらないでしょう。
となると、ラージ商品群(高級車)が同じでは、差別化ができません。
よって、直列6気筒縦置きFR(AWD)という流れになるだろうと、私だけではなく、多くの記者が予測しています。
あの地味なグレー(失礼)も、高級車志向と考えると納得できます。
その経営方針の大きな変更が、VISON COUPE (ビジョン クーペ)にも表れていると思うのですが、元日産GT-R開発者、現ラクスジェンU6開発責任者の水野和敏氏の目にはデザイン偏重としか映らないんだろうなぁ。
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Posted at
2018/06/30 21:01:44