
セダンが最大限の居住空間を追求しはじめた頃から、日本車・外国車を問わず、どの車も似たり寄ったりの外観。仮に真横からしか見てはいけないという制約があるならば、なおさら見分けがつきません。
ショートオーバーハングにロングホイールベースを採用したW202/Cクラスが、世界の流れを変えたとも言われていますが、人間は空間に欲張りなので、Cクラスが存在しなくても同じ結果になっていた気もします。世の中の主流が、セダンという様式自体の制約からも解き放たれた現在、ベンツは頑なにC/E/Sクラスを中心に車種の展開をしています。他の車とベンツが似ているのではなく、我こそはコンサバティブなのだという自負に裏打ちされているのかもしれません。
しかし、自ら創り出した世界最高のセダンを超える車を目指して7年おきにモデルチェンジさせ、新たな魅力を演出することは大変な作業。自己否定を伴うものであり、大胆な変化は危険を伴います。どこかで見たことがあるけれども、何かが違うという落としどころが、ベンツの真骨頂です。
さて、CLSはEクラスをベースに、SLの足回りを移植したとされていますが、数多くの点でEクラスとの共通点があるため、購入を検討された方は、おそらくEクラスと何が違うのかという点に注目するでしょう。
その結果、CLSは運転席の見切りが悪い、後席居住性が悪い、窓が小さいことが欠点として指摘されます。しかし仮に、CLSの運転席からの視界が開けており、後ろの席が十分すぎるほど広く、窓が大きければ、たとえEクラスと大きさが違っても、それはベンツのコンサバティブなセダン様式になってしまいます。
つまり、CLSではベンツが目指している最高のセダンのかたちが一旦は完全否定され、どこから見てもこれまでとは違うことを使命に新たに生まれた車種であると考えられます。
とくに外観は、どの角度から見てもCLSであることの自己主張が鮮烈に印象付けられており、他車とは違うアイデンティティを何よりも優先したつくりが、私の感情を揺り動かします。
ところで、下記リンクの「Nissan Skyline, Mercedes CLS: Separated At Birth?」と題された記事。左にスカイライン、右にCLSといった合成写真が見所です。
巷では、スカイラインがCLSを真似ただの、いやフーガこそが元祖だの、いろいろ言われていますが、このサイトでも、やれCLSのような美しさはスカイラインのどこにも見当たらないとか、CLSは気色悪い車だとか、言いたい放題。
本来は、正面の意匠でセダンの差別化がなされるべきところ、正面からのみ似た車があるという状況は、むしろCLSのアイデンティティを証明する現象かも。一番苦悩の最中にあるのは、何からも「似ていない」ことが宿命のCLSを、モデルチェンジに向けてデザイン中であろう、ベンツのデザイナーなのでは。
Posted at 2007/04/12 23:16:12 | |
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