かつて昭和30年台に群馬県下仁田町にて産声をあげた林内作業車がありました。
「デルピス号」です。
デルピス号 概要(個人ブログ)
よくキノコ栽培業の方々に重宝され、後部荷台にキノコ用原木を満載してゆっくり走行している姿をごく時たま見かけることがあります。
少数ながら全国で使用されているそうですがなんと下仁田在住の個人製作だったらしく、コーションプレートには佐藤さんという方の個人名が載っているという非常に興味をそそられる車両です。
デルピス号プロペラシャフトのスパイダーが焼きついて破損してしまったという案件が持ち込まれました。比較的近くの整備工場でデルピス号の整備依頼だったそうです。
昭和40年付近の製造だったらしく、すでに50年近く使用されているとのことでした。360cc時代のダイハツ2サイクルエンジン、ミッションが搭載され、さらにトヨタの減速機がドッキングされて低速ながら半端ない走破性実現しています。
30cm程度の非常に短い軸で駆動しています。
使用されていたスパイダーにはトヨタの古い刻印がついていました。
焼きつき跡が見られます。カップも割れてしまっていて再使用は難しいです。
昭和40年前後の部品ですし部品番号や車種すらわかりません。スパイダーの入手は難しい状況です。考えたあげく手元にあったフーガかクラウンのスパイダーが使えないかと考えました。
どちらも新品軸を加工したあとに残ったもののため、未使用スパイダーなので使用するには最適です。
しかしフーガのスパイダーはヨーク穴径より1mmほど大きく、クラウンは1mmほど小さいということが計測してわかりました。
そこで考えたあげく、ヨーク穴径の加工はできないので、径の小さいジョイントに穴径に合わせたスリーブを製作してかぶせ、ガタが出ないようにする方法を試してみることにしました。
この方法は大変うまくいき、プレスで押し込みましたがガタなくスムーズに首を振るようになりました。
しかし固定するピンがないので上下左右どうにでも動いてしまう可能性があり、芯出しと動き止めをどうつくるかが問題ですが、ツラからの出具合をほぼ同じにし、独自工法の回り止めとしましたが、滑らかな動きながらもがっちりと固定されました。錆止めにシャーシブラックにて塗装して完成です。
整備工場の作業者に渡したところ非常に喜んでいただけました。
駆動系の部品は部品供給がなくなるととんでもなく苦労することが多いので、生き返らせることができて嬉しく思いました。
たぶんさらに10年以上は使われる車でしょうからこのスパイダーは十分役目を果たしてくれるでしょう。天下のトヨタ純正品、クラウンのスパイダーですからね~
Posted at 2017/05/30 18:31:31 | |
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