「この前、すごい偉そうにふるまう交通誘導員がいたんですけど、なにか勘違いしてますよね。
彼らにはクルマを止める権限は一切なく、「止まって下さい」とお願いするのが仕事なのに、なんかすごい高飛車でぞんざいだったんですよ~。
もし、彼らの指示に従って事故を起こしても、ドライバーの責任になるんですから、ジョーダンじゃないッスよ」
自動車評論家のK君がたいそうご立腹であった。
すると社会心理学者のT君が、「制服を着た人には、制服のイメージに従おうという心理が働くんです。交通警備員は警察官に似た服装をしていますから、警察官──つまり、権力を振るいたくなったんじゃないでしょうか」と言った。
さらにT君は、「ところで、その故通誘導員の顔を覚えていますか?」と聞いた。
K君は首をかしげながら「顔ねぇ……。けっこうな年齢としか覚えていないなぁ」と答えた。
「やっぱりそうですか。警察官に扮した役者に職務質問をしてもらい、その後、「警察官の顔を次の写真の中から選んでほしい」と依頼したところ、七割以上の人が間違ったという心理実験があるんです。
なぜこのようなことが起きるかというと、警察官──Kさんの場合は警察官に似たですが──とにかく、制服にしか注目していないためなんです。それくらい制服の与える印象というのは強いんです」
「そういえば、ある地方の金融機関で、以前廃止した制服を復活させるということがありました。その理由は、私服OKにした途端、事務処理スピードが低下したためでした。
警察官やガードマンが制服を着用しているのは、「やる気」や「モラル」「規律」などを促す効果があるためです。
制服と私服を比べると、どうしても私服の方が気が緩むんです。そして、その気の緩みは、モラルや規律にも確実に影響を及ぼします。
最近は使い込みなどのニュースをよく耳にしますから、金融機関を選ぶときは制服を着用しているかどうかを見るとよいでしょう」
「なるほどね。でも、ボクが遭遇した交通誘導員には、とてもモラルや規律があるとは思えなかったんですけど」
「もしかすると……その人の制服は、あまりピシッとしてなかったのではありませんか?」
「たしかに、ヨレヨレで薄汚かった」
「なるほど、だからですよ。モラルや規律という影響を及ぼすためには、制服は綺麗でなければなりません。警察でも、これは徹底させられるようですよ」
「理由はわかったけど、納得はいかないなぁ……。
よしっ、工事を請け負っていたゼネコンにメールしてみよっと」
ゼネコンにひとつひとつの工事の苦情を送ったところで、対応などしてくれないだろうと思ったのだが、数日後、K君から「返事が来たんですよ!」という連絡があった。
そこには丁寧なおわびの言葉と、教育を再徹底することが書かれていたという。
これでようやくK君も溜飲を下げたようである。
これもクレーマーか?
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2017/07/08 19:09:59