
手元にカレラTが来てから2週間弱が経ちました。距離も高速、一般道合わせて700km程になりましたので現在の感想を記しておこうと思います。
何かに例えるとしたら「イケメン執事」と言ったところでしょうか。とにかく乗り手の要求に過剰な程応えようとしてくれます。
横にフェラーリが並んでもあんまり貧相じゃ困るよなぁ。→フロントとリアのフェンダーをグッとボリューミーにして押し出しを強くしておきますね。
スポーツカーを運転してる気分にさせてよ。でも近所はあんまりうるさくてもなぁ。→スポーツエグゾーストでSwitch1つで切り替えられますよ。ついでに足の硬さもPASMで調節できますよ。
MTで運転したいけどクラッチ重くてもなぁ。→可能な限り軽くしてますよ。女性の方でもどうぞ。エンスト、坂道発進も心配しないでくださいね。ちゃんと対策してます。
峠道でもブイブイ言わせたいなぁ。→RASつけれますよ。フロントのトレッドも広げときました。グイグイ曲がりますよ。
etc、etc
年式で言えば996GT3以来20年ぶりの911はかように乗り手に寄り添おうとしてくれる車になっていました。かつての911が乗り手を拒む、選ぶ車であったのとは対照的に。ただそこにこそ、911乗りと言われる人の叙事があったのも事実です。他の人が嫌がるであろう車を乗りこなしている自分、まるで自分の手足のような錯覚さえ生じさせる一体感、ミリ単位のアクセル操作にでも反応する生き物のようなエンジン等。
でも、空冷の垢、澱は洗い流してしまおうと思うのです。20年前の自分、10年前の自分、現在の自分、体力も反射神経も落ちてきています。それに合わせて車がおぎなっくれるのも良いじゃないか。いろんな運転支援システムも付き、プリミティブな感覚は薄くなったかもしれない。安全の担保と引き換えに。それを好意的に評価しようと思います。
この前、アルピーヌA110Sを試乗しました。感覚は992より空冷に近いものがありました。でもあれで旅行には行けません。物理的スペースとあの乗り心地に体力が持ちません。911は昔からRSてあっても慣れれば疲れの少ない車でした。以前大阪から筑波サーキットまで行きましたがそこまで疲れはなかった。そこが911最大の美点でありレースで強い理由の一つです。
車って不思議なもので、車高調入れてマフラー変えてブレーキシステム変えてどんどんレーシーにしていくほど、乗りにくい狭いストライクゾーンの車になっていきます。その代わりツボにハマると最高の気分を与えてくれますが。
これから60歳台を迎えるにあたり、このカレラTを「イケメン執事」として自分をサポートしてくれるスポーツカーとして使っていこうと決心が固まりました。人間でも車でも距離感が大事だと思います。この少し緩い間が長く飽きずに使っていくにはプラスに働いてくれるはず。これから新しい911が生まれ性能は上がっていくのでしょうが、あの昔の感覚は再現されないでしょう。そういう意味でも諦めがつきました。今は、晴れやかな気持ちでこの文章を書いています。
主のいなかったガレージを見ると寂しかったのですが、今は紛う事なき911であるカレラTが収まっています。それだけでも人生に喜びと力を与えてもらっていることに感謝します。
Posted at 2024/06/17 21:27:46 | |
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