ヴェルファイアに試乗した帰り道、なんだか勢いづいてもう少し車を見たくなったので、以前から気になりつつも実は見たことがなかったCitroën へ伺いました。
駐車場には試乗車と思しき5008や3008がちらほら。
同じフランスというだけで、なんとなく顔見知りのような気がしてくるから不思議です。
車を降りると、めっぽう綺麗な営業の女性がお出迎え。
「本日はどのようなご用件で?」と笑顔。天使だ。
好きです。じゃなかったシトロエンを見に来たです、はい。
どうやらPeugeot の担当の方だったらしく、Citroën 担当の営業さんを呼びに行ってくれました。
さようなら、私の恋.....。
いらっしゃいませ、と出てきたのは、これまた綺麗なご婦人の営業さん。
好きです。
ようこそ、新しい恋。
なんだなんだここは。まだ何も聞いてないけどここはいいディーラーさんだぞうんきっとそうに違いない。
アレですか? そういう狙いの配置ですか?
だとしたらこっちは手のひらの上でビリー・ジーンの一つも踊ってみせるのにやぶさかじゃないですよ?
そんなわけでムーンウォークで店内へ。DSシリーズが並んでいます。間近で見るのは初めてですが、本当にポップというか、チャーミングなデザインですね。実はチンクよりもこちらの方が女性には受けるんじゃなかろうか。あとは知名度か....。
そして、丁度イタフラ得意の限定なのか在庫処分なのか謎の車として、ピカソが展示してありました。聞けばミニバンだと言う。ヴェルファイアの後だけに、このジャンルの車がどう違うのか興味があります。試乗車もあるので乗ってみますか? と言ってくださり、お言葉に甘えました。どうもありがとうございます。
結論を先に言っておきますと、頭ではなくハートで「ああ、この車ほしい」とため息がでたのは相棒以外では初めてです。素晴らしい車でした。
Citroën GRAND C4 Picasso
スペック
乗員定員 7
全長×全幅×全高 4605×1825×1670mm
ホイールベース 2840mm
トレッド前/後 1575/1585mm
車両重量 1640kg
エンジン
エンジン型式 AH01
最高出力 150ps(110kW)/4000rpm
最大トルク 37.7kg・m(370N・m)/2000rpm
総排気量 1997cc
ボア×ストローク 85.0×88.0mm
圧縮比 16.7
使用燃料 軽油
足回り
ステアリング形式 ラック&ピニオン
サスペンション形式(前) マクファーソンストラット
サスペンション形式(後) トーションビーム
エクステリア
テクノ調で無駄な装飾がなく、シックです。Peugeot 308然り、外観は単体で見ると格好いいなと思います。ですがエンブレムが「VW」となっても違和感がない気がしてしまう。
ホイールは205/55 R17 不快な突き上げなどは感じなかったので履きこなしているのでしょうが、外観的にも大径ホイールより、インチダウンでモチッとした扁平率低めのタイヤに変えるのも、見た目が愛嬌あって良さそう。ドレスアップにインチダウンって、このキャラクターならではです(笑
何よりこのキャビンを占めるガラスの割合!
インテリア
インパネ、ダッシュボード周りのなんとまあ洒落ていること。妙な位置にシフトレバーがあったり、不思議でわくわくします。どこどこにメッキがついて質感上がった、なんて眠たいこと言う手合いとはデザインの次元が違います。いや、これがデザインで、ああいうのはデザインとは言わないと思う。決して高級な素材を多用しているわけではないと思うのですが、見せ方が上手いんですね。
内装に興味ない私でも、流石にこの内装がデザインとして優れているのはわかります。
ただ、外観もインテリアも、一昔前と比較すると黒を基調とした落ち着いたランナップ展開になってきているということでした。
明るい色のものは限定車として出るくらいになってきているとか。
エンジン
試乗車はディーゼルモデルでした。
出来ればエンジンに乗ってみたかった。Picasso にも積まれているBMWと共同開発のエンジンって、排気流路の工夫とツインスクロールターボで、低回転から最大トルクが出るようです。モデルによっては、1400rpm から最大トルク!? と驚いた記憶があったので、体験してみたかった。
ディーゼルエンジン....なにもわからないよ。最近トルクとパワーの関係性もよくわかんなくなってきたのに(アレ? トルクって別になくていいんじゃない? とか)。
薄い報告ですみませんが、外からはえらくガラガラ言ってます。
室内でも結構聞こえましたが、私は内燃機関の音はなんでも好きなのでご機嫌でした。
車の楽しい部分のひとつ、体感する速さって加速の伸びに負う部分が大きいのかなと思います。MTの低いギアで引っ張るのもパワーを乗せていくためですよね。
Picasso はガソリンモデルが 165/6000, 24.5/1400-3500
ディーゼルが 150/4000, 37.7/2000
シフトチェンジしつつ踏み込むぶんには、低回転からトルクがきっかけを作ってくれて15ps パワーのあるガソリンエンジンの方がカタログ上は楽しそうです。でも欧州では「ディーゼルの方が速い、これ常識ね」でしたっけ?
走行して
では、本題。
乗り込んだ途端、おお、空が見える!
Aピラーが文字通りAの形で、ルーフが大きく後ろに下がり、そのぶんフロントウィンドウが長くなっています。Aピラーのこの三角窓も秀逸で、本当に死角が少ない。
リアのCピラー部もガラス、とにかくキャビンがガラス!なんだろう、この感覚。気分は潜水艇のコクピットみたい。
ただ動いているだけでワクワクします。走っていても空を見上げられるって想像以上に気分が高揚するもんだ。
これは、運動性能とかどうでもいいですね。春には桜、夏は海、秋の紅葉に冬の雪景色。いもしない家族とぎゃあぎゃあ言いながらレジャーに出かけて景色を見回す様がありありと浮かんできます。
しつけの悪いATにブツブツ言いながら走る運転手の父親に、ルーフウィンドウを横切る飛行機を追う子供。すれ違う車や物を眺めて前から後ろにウィンドウに張り付いて母親に叱られる様とか。
「車に乗って、どこへ行こう」
そんなキャッチコピーのCMが昔ありましたね。私はMEG3RSに乗って、運転を楽しむために行く場所を探します。「目的地まで移動するための箱」ではいかにも寂しい。
ではこの車は?
やはり移動するための箱です。でも移動の過程を冒険に変えてくれる魔法の箱です。
それはそれは鮮やかに、新たな価値観を提案してくれる素晴らしい箱です。
日本のミニバンはきっとこの車よりも広くて快適で、そして車内空間だけで完結しています。移動の過程で、子供達はゲームをしたり、室内テレビでDVDでも見るのでしょう。移動する部屋ですから。
Picasso には、移動する箱と外の世界のコミットメントがあります。季節で、目的地で、箱の景色は千差万別に変わるのです。
魔法の箱だと思えば、変なところでシフトショックがあるATも、もったりした加速も味だと感じるから、この辺は人徳(車徳)ですね。
「まあ、肩の力抜きなって。外の景色でも眺めて楽に行こうや。車ってそういうもんさ」
そんな声が聞こえてくるようです。
この車に乗って育つ子供は幸福だな、と思います。きっと大人になっても、運転はその子にとって楽しい思い出へとつながるポジティブな行為として根付いてくれるんじゃないかなあ。
独り者には用途的に合わない車ではありますが、その提案する価値観のオリジナリティと、自己完結しないとても健全なあり方に、ああ、この車と人生を共にしてみたい。と心から思いました。
価格は諸々込みで400万円を超えるでしょう。
車格を考えると割高です。
だけど得られるものの大きさと、この素晴らしいライフスタイルの提示を思うと....。代わりの見つからないミニバンなのは間違いないですね。
展示してあったこちらのDS5はクーペのようなスタイリングでこれまたなんとも洒脱で素敵でしたが、価格表を見て真顔になりました(笑
本当に素晴らしい車に乗せていただいたディーラーさんに感謝です。
さて帰りがけ、
私は車のキーにモン・サン・ミシェルで買った小銭入れをつけているのですが、それを見た営業さんが一言「私もそれ持ってます」と。
そうですかわかりました。式はいつにしましょうか?
行かないでと泣いて駄々をこねる営業さんをクールに袖にして、颯爽とディーラーを後に(一部、正確でない表現が含まれています)。
少しこなれたのか、UNIL OPAL のMTオイルは温まると程よい粘性があり、気持ちよくシフトチェンジさせてくれます。
本当の意味でデザインされた車には、まだまだ私の知らない世界がいくらでもあるんですよね。多様な人生には多様な価値観があって、そのライフスタイルによって、いい車の基準も違う。そして真っ当な意思を持って作られた車たちとの出会いは、異文化交流のようにインスピレーションや活力を与えてわくわくさせてくれる発見に満ちています。車っていいですね。
そうして「車の価値ってなんだろな」などと考えつつ、
いつものようにリアタイヤを感じてコーナーを抜け、
アクセルを踏む私に、
「当然、走りだろ? 相棒」とMEG3RS。
うん、そうだね。私には走りだよ、相棒。