
とある日の午後22時、とあるパーキングに黒髭達が集まるという。そんな未確認情報をえて、仕事を終えた私は確証の無いまま一路横浜の某所に単独で向かった。
ただ、私には自信があった。何かが私を呼んでいる気がしたのだ。湾岸線をつばさ橋から大黒Jctへ。
確かにいるぞ。黒髭。
何者かを待ち受け、喰らい憑くかのごとくボンネットを開けて車が並ぶ。
その姿、威容。
黒いチャージャーに乗った副隊長であろう男が指示を出す。他の某Pへ移動をするという。
『よし、このチャンスに挑戦を挑もう!』
私はその集団の中にまぎれることに成功し、後方より先頭集団を追撃するチャンスをうかがうことにした。
スキール音とともに白煙が上がり出発の合図。
私の前でシルバーの300CがアメリカンV8の爆音とともにテールをスライドさせながら螺旋状になった高速の陸橋を駆け上がっていく!
『追いつけるのかっ!』刹那な不安と希望
アクセルを踏み込む右足が微かに震え、ハンドルを握る左右の手のひらに汗が滲む。
緊張しているのだ。
水銀灯の照らす高速道路を縦横無尽に駆け抜ける黒髭達。先頭集団に追いつくためにはアクセルを緩めることは出来ない。心臓の鼓動が高まり、一般車を右に左にかわしながら緊張のまま超高速走行が続く。
『先頭集団はすぐそこだ!』張り裂けそうな心で叫ぶ。
だがしかし、金港Jctの手前、目の前をGTウイングを付けた漆黒の300Cが私の行く手を塞ぐ。
『やれるのか!』
前方、三車線の真ん中に一般車が一台。黒いGTは右ラインを選択し追い抜きにかかる。私も躊躇することなく素早く右ラインにハンドルを切り込む。
『しまった!』
金港Jctは左に行かないと、某Pに行くことは出来ないのだ。
その瞬間、黒い300CはそのGTウイングでダウンフォースを最大限にもらい、トラクションを掛けながら右車線から左車線に一気に飛ぶ。
『これがモパーの太いタワーバーのハンドリング性能なのか!』
一般車が一台、二人の間に割り込む。
『私も間に合うっ!』
即座にハンドルを切り込むが、一瞬の戸惑いと迷いがアクセルとハンドルを戻させる。
『無茶をしてはだめだ。命があれば次の機会がまたある。』
自分自身にそう言い聞かせた。
分かれる車線。黒髭達とは別の道へ。
私は次の東神奈川ICで高速道路を降り、一般道に出て路肩に車を止めた。
パワーウインドウを下げると、冬の寒い風が車内に『スーッ』と流れ込む。
『完敗だ。』
ライターに火をつけ、ブラックメンソールのマルボロをふかす。
そうだ。今日の日は、タバコの煙とともにこの夜風に流してしまおう。
そこには、まだまだ諦めきれない孤独な自分がいた。
『I'll be back soon.』
今夜はやけにタバコの煙が目に沁みる・・・。
この物語はフィクションです(爆)
おまけ・・・このお方こそ536馬力のモンスターマシンを操る黒髭会の重鎮です。
バーン

Posted at 2008/12/09 13:37:18 | |
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