
NDロードスターのスタビライザーについての記事やブログでは、スタビブッシュがスタビライザー本体と接着されており、これを「剥離した方が良い」とか、「剥離するべき」と言うものが目立ちます。
一方で「なぜ接着されているのか?」についは、「何でか分かりませんが…」と言う記事がほとんどです。
マツダに問い合わせた人もいましたが、曖昧な返答があったとのことです。
なので、ちょっと調べて見ることにしました。
でも、私は一応エンジニアですが、車は専門外なので「は?おま何言ってんの?」って言う内容かもしれません。
ちょっと長いですけど、暇つぶしとして見て頂ければ良いと思います。では…。
1.なぜスタビライザー本体とスタビブッシュは接着されているのか?
調べ始めて一番最初に見つけたのが、「ゴムブッシュ付きスタビライザーバー」と言う言葉です。
これってまさに「スタビブッシュとスタビライザーが接着されれいる物」ぢゃないの?
調べてみると、これに関する特許がたくさんありました。
多くは、ゴムブッシュとスタビライザー本体の接着方法に関する特許です。
「なぜ接着されているのか?」に関係する、ゴムブッシュとスタビライザー本体を接着する特許はこれだと思います。
・出願番号:1997-290454 防振ブッシュ
この発明が解決しようとする課題は、以下の通りです。
[以下1997-290454の引用]
発明が解決しようとする課題
0003
ゴムの挿通孔に挿通される部材とゴムとが⾮接着であるため、スタビライザーブッシュの場合、ゴムの挿通孔に⽔が浸⼊したり、-30℃程度に温度が下がったときにスタビライザーロッドがゴムの挿通孔内でスリップして異⾳を発⽣していた。このような異⾳の発⽣を抑制するためにゴムの摩擦係数を⼩さくすると、ゴムがロッドの軸⽅向へずれて操縦安定性を悪くするおそれがあった。また、ラックマウントの場合もシリンダーがゴムの挿通孔に挿通されているだけであり、ゴムとシリンダーとの間で回転⽅向にスリップが⽣じ、ハンドルの操作時にグニュグニュした感じとなり、違和感があった。
課題を解決するための⼿段
0005
上述の⽬的を達成するため、この発明は、振動発⽣側部材及び振動受け側部材の⼀⽅が挿通される挿通孔を備えたゴムを他⽅の部材にクランプ材で取付けた防振ブッシュにおいて、ゴムの挿通孔に挿通される部材とゴムとを接着剤で接着したものである。
[引用ここまで]
そうです、ゴムブッシュとスタビライザー本体を接着する理由は、異音対策とスタビライザー本体の軸方向へのずれ防止対策なんです。
特許出願が1997年10月なので、スタビライザーとゴムブッシュが接着されているのは最近の技術ですね。
2.スタビライザー本体とゴムブッシュが接着されていてはいけないのか?
スタビライザーの働きを考えるとゴムブッシュを接着した場合、スタビライザーの動きがゴムの弾力に阻害されるため良くないように思われます。色々なところで言われているのはこのゴムの復元力がバネ力となって、サスペンションにストレスを掛けて乗り心地が悪くなると言うものです。特に車高調を取り付けて車高を下げた場合、スタビライザーが突っ張った状態になっているのでサスペンションのバネ定数にも影響するとも言われています。
普通に見ることができる多くの記事やブログではそのように書かれており、ゴムブッシュを剥離したり、ゴムブッシュを別の材質のものに交換したりすることが推奨されています。
しかしながら、ゴムブッシュをスタビライザーに接着すると言う特許があり、その接着方法に関する様々な特許が存在し、接着を強固にする方向にあると言うことは、接着することがスタビライザーの働きに対してそれほど大きな問題では無く、前述の異音対策やずれ防止対策に対するメリットの方が大きいのではないかと思います。
この件については、てこの原理で考えると分かり易いと思います。
スタビライザーはゴムブッシュで支えられているため、てこの支点がゴムブッシュになります。
作用点はスタビライザーがサスペンションとスタビリンクで結合されている部分になります。
前述の理論だと接着されたスタビブッシュの反力が力点になる訳ですので、スタビライザー本体の外径部分が力点と考えられます。ここで、仮にスタビライザー外径をφ20㎜、スタビライザーの取付位置からリンクで結合されいるところまでの長さを200㎜とし、リアサスペンションのバネ定数を1.2kgf/㎜とすると、スタビブッシュの反力でリアサスペンションのバネを1㎜伸縮させる力(F)は下記のようになります。
⇒ F×10㎜=1.2×200㎜ ∴F=24kgf
この場合、サスペンションのバネ力の20倍以上の反力が必要となる訳で、これほどの反力をスタビブッシュが発生させているとは考えづらいです。
したがって、スタビライザー本体とゴムブッシュが接着されていても、その影響はほとんど無いと思います。
3.スタビブッシュを剥離すると乗り心地は良くなるのか?
そうは言ってもスタビブッシュを剥離したり、スタビライザーブラケットを交換した結果、「乗り心地が良くなった」と言うレビューはたくさんあります。
前述のようにスタビライザー本体とゴムブッシュの接着がサスペンションの動きに影響することはほとんどないと思われますが、ここで言う乗り心地の改善は、サスペンションがあまり大きく動かない直線道路を走行している場合の揺れの感じ方の影響ではないかと想像します。
通常スタビライザーが働かない直線道路でも微小なうねりがあり、それが揺れとなって感じられます。特に左右の揺れの差が横揺れとなり、乗り心地に影響しているような気がします。
スタビブッシュを剥離することによりこの左右の揺れが同期し、横揺れが少なくなることで乗り心地が改善されるのではないでしょうか?
最後までご覧いただきありがとうございました。
Posted at 2020/10/17 00:10:14 | |
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