試乗会ラッシュはとめどなく続く。いったいどこが不景気なのか? 我が身とのギャップに平衡感覚を失いそうになるが、イベントがあるのは良いことである。スバル広報部からも今回は是非参加して! 念を押されたこともあって、富士山がよく見える快晴の中を河口湖ハイランドリゾートを目指した。
今日の出し物は、ニューモデルとしてはトヨタからOEM供給されるトレジア(ラクティス)、インプレッサWRX STi tSをはじめとするモデルイヤー(?)、それにそう遠くない将来FT86コンセプトの市販版にも搭載予定の新ボクサーエンジンFB20型2ℓNAが与えられたフォレスターのマイナーチェンジモデルなど。
400台限定生産というインプレッサWRX STi tSは、いかにもスバルらしい走りにこだわった逸品。いまはSTiで腕を奮う辰巳さんの渾身の作というフラットで雑味のない乗り心地とハンドリングのバランスは、無形の価値ではあるけれど一定の評価は下したい。ただ、内外装のデザインやディテールのクォリティから練り直さないと、せっかくの仕上がりがもったいない。走りのパフォーマンスだけで、クルマの価値を訴求するのはあまりにも発展途上段階の発想でもったいない。
注目はフォレスターに搭載された新ボクサーFB型エンジン。一台だけ用意されていた5速MTモデルと4-EATの組み合わせ。実用領域の使い勝手が問われるSUV仕様ということで、そう遠くない将来話題のFRスポーツカーに搭載される予定とはいってもセットアップは異なるだろう。分っちゃいるけれど、期待の大きさに結果がついてこなかった感じ。
トヨタとスバルの命運が掛かるクルマの心臓だけに、そのチューニングの可能性には全神経を研ぎ澄まさせたつもりだが、走りのイメージが大きく膨らむことはなかった。現在7000rpmに設定されているmax回転を、高めるのか否か。シュンッと回って、糸を引くように2次曲線を描く。Siモードなどの可変機構を巧みに使って、非日常のカタルシスと現実的な環境性能の両立を是非望みたいところ。
まだ1年以上時間があるので、現時点での断定は控えようと思うけれど、どんな仕上がりになるのか。いろんな意味で興味深いと思った。このFB20型エンジン、従来のEJ(第ニ世代)や初期のスバル1000用EA型(第一世代) が一貫してビッグボアだったのに対し、ボア×ストローク84×90㎜のロングストロークタイプ。
スバルには、これまでにも2ℓディーゼルのようにロングストロークのフラット4は存在していたけれど、量的にはまだまだ限りがある。このロングストローク化によって、エンジンの組立方法に大きな変化が訪れたという。従来は、コンロッドをクランクに締結させた後で、上からピストンをはめ込み、ショートストロークゆえに可能となるという隙間(サービスホールと言ったかな?)からピストンピンを差し込むという独特の行程で組み立てられていたという。
それがロングストローク化によって不可能となり、ピストンを組み付けたままシリンダー内に降ろし、従来とはまったく形状のことなるコンロッドとして特定の方向からコンロッドの下側を組み付ける。これまで比較的少量生産のディーゼルでは手組みでも問題なかったが、二桁の万の量産規模となるFB型では自働機が欠かせない。それを、独自開発で特殊な組み付けを行なうマシンを開発することで克服している。フォレスターの市川和治PGMは、その組み付け模型を自作し、アイデアの理解を得る役を自ら買って出ていた。
複雑な行程を、自働機で完璧に仕上げたというその工場のラインに興味が湧いたので、現在その見学を含む勉強会を提案中。そう遠くない将来、さらに詳しいリポートをお届けできると思います。FT86のこともあるし、このFB20エンジンにはしばらく目が話せませんね。
おっと、スバルにとっての飯の種、トレジアも紹介しておかないとね。こっちにはラクティスにもない欧州仕様そのまんまの足を組んだモデルが存在します。
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2011/02/15 23:02:20