アメリカのモビリティはどのように進展して行くのだろう。クライスラーが破綻処理に追い込まれ、6月1日に抜本再建策の期限を迎えるGMにも同じ処分が下るという予想が大勢を占めている。
元々楽に千万台超を誇ったビッグスリーの北米における生産能力は、暫時半減に向かうことになるのだろうか。最盛期(2000年)の米国における自動車販売(1735万台)は、多分二度と戻ってはこない。
バブル期に飛躍的に販売台数が増大し、バブル崩壊とともに半減に向かう。すでに日本が経験した道のりをアメリカも辿ることになるに違いない。今年の年間販売台数は中国に抜かれ、初めて2位に転落することが確実視されているようだ。
過去10年を振り返ると、アメリカの自動車販売における乗用車とライトトラックの比率は2001年にクロス。ライトトラックが乗用車を上回っている。
ここで言うライトトラックにはSUVとミニバンが含まれ、ライトデューティトラックに与えられた優遇税制の効果もあって、1995年から2004年までの10年間で5割増、940万台近くまで販売を伸ばしている。
この中で、ビッグ3のライトトラックは700万台弱で推移。ガソリン代が高騰した05年以降急速に勢いを失っている。ビッグ3の乗用車については99年以降ずっと凋落傾向にある。
いっぽうで日本車は、99年以降06年まで一貫して販売台数を伸ばし続け、乗用車で1.5倍の約300万台、ライトトラックは実に倍増の200万台超という飛躍を遂げている。ガソリン高になっても燃費の良い日本のSUV系は勢いを落していない。06年の段階で日本の自動車産業は日本国内販売を凌ぐ実績を米国で上げていたのだった。
ビッグ3が失ったシェアを丸々日本車がカバーしたわけだが、サブプライムローンに始まる金融危機によってオートローンが機能を失ったリーマンショックの9月15日を境に、時代は文字通り一変した。
クライスラー(とGM)の破綻処理は、これまでのガソリンがぶ飲みの大型車中心の企業形態からの脱却を期して行なわれるものだと考えられる。工場の仕組み(ワーカーの体質を含む)からいって、ビッグ3に燃費の良い小型車の開発生産を期待するのは難しいだろう。そこは日本を中心とした海外メーカーがカバーすることになるとみるのが妥当だ。
失われた雇用や経済の活力を取り戻すためにはグリーンニューディールということになるのだろうが、率直に言って過去100年のアメリカとはまったく異なる社会のあり方を意味する新しい産業がどのように興り発展して行くのか。にわかには想像が及ばない。
オバマ大統領は、就任演説の一説に「太陽と風と土壌の力を利用してクルマを走らせ、工場を稼働させる」と言った。昨年来のビッグ3のEV熱は、新政権の意向を汲んだもので、今年のデトロイト、ニューヨークで見られた変化は、これまでのアメリカ流儀に対する郷愁との訣別を意味していたのかもしれない。
そんなNYIASで、ちょっとしたサプライズとして登場したのがSCION.iQコンセプト。ご覧のルックスはFIVE AXIS http://www.fiveaxis.net/ というカリフォルニアのデザイン会社(カロッツェリア)の手になるもの。
トロイ・スミトモという日系3世が主宰するFIVE AXISは、2年前のトヨタ・ハイブリッドスポーツコンセプトFT-HSのデザイン・製作も手掛け、レクサスのプロジェクトIS Fやサイオンのショーカーのほとんどすべてを引き受ける実力派だ。
iQコンセプトは、オリジナルがどうだったかすぐには思い出せないほど自然なまとまりを見せている。245/40R18サイズのヨコハマ・Sドライブを収めるブリスターのために全幅は1813㎜まで拡幅され、エアロルックによって全長も3223㎜まで伸びている。オリジナルのロードホイールにカスタムのステンレスエキゾースト、TEINのストリートサスなどで固められたルックスは、不思議と痛い感じがしない。
ちなみに、エンジンはこの6月から欧州に展開される1.33L直4 93psで6速MTにアイドリングストップ機構がセットアップされる可能性が残されている。
GMのブースに足を運ぶと、PUMAというロゴが目を引いた。スポーツ用具メーカーとコラボか? いぶかしい思いで近づいてみると、セグウェイであるという。
PUMAとは、Personal Urban Mobility & Accessibilityの略。都市空間でのpersonalモビリティツールの提案だ。なんだかロールケージで覆われた車椅子みたいな造形だが、動きはまさにセグウェイ。停止時は前の小さな補助輪が地面に接した4輪で、いざ走る……となるとひょいとフロントを持ち上げてセグウェイらしい2輪バランシング技術を活かし、デュアル電動モーターで機敏に動き出す。
この市街移動用2人乗り2輪オート「PUMA Pod」は、重量が136㎏、リチウムイオンバッテリー駆動で、最高時速35マイル(56.3㎞/h)。一回の充電で35マイルの走行が可能であるという。背後にあるタイヤは何?と聞くと、もしもの時用との答え。
GMとセグウェイの共同開発という触れ込みだが、GMがNYIASに出展した思惑は……。案外、この路線を真剣に考えているのかも。
Posted at 2009/05/23 16:41:26 | |
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