2009年07月23日
人の記憶は本当にあてにならない。29年も昔のことだから無理もないが、ホテルオアシスに投宿したのは3日ではなくて2日だったかもしれない。その後の旅程から逆算するとそうなった。メモも残していないので、まあいずれにしても曖昧だ。
オアシスは2、3階に何部屋かある小さなホテル。一夜明けて、早速銀行に行きスイスフランを手に入れた。すっきりしたところで、じゃあちょっとスイスを巡ってみようということで、首都はどこだっけ、ベルン?ということで行ってみた。
けっこうな距離だったと思う。町の雰囲気もフランスに近いジュネーブ、ローザンヌと違って、何と言うかドイツ的?言語圏もドイツで町の標識も違ったと思う(すべて記憶を頼りにした当時の印象で、現在の様子とは厳密には違うかもしれない)。
そう言えばスーパーマーケットに足を運んでみた。けっこうなスケールの店で、商品の陳列をはじめとするお固い雰囲気が、明らかにジュネーブやローザンヌと違う。後に何度も通うことになるドイツの感覚そのもの。そんなに大きくないスイスに、何時間か走っただけでまったく異なる言語圏、文化圏が存在する。
まあ考えてみれば、現在のEUに属する国々はいずれも多様な民族、文化、言語を内包する複雑さを持っている。スイスの4言語圏(フランス、ドイツ、イタリア、レート・ロマンシュ語)だけでなく、ドイツだって北のプロシアと南のババリアは古くから反目し合う仲だし、スペインのバスクとアンダルシアは基本的には別の国だろう。
イタリアは、古くから都市国家が互いに覇を競い合うカンパリニズモの国で、統一イタリアとして共和制が敷かれるようになったのは確か20世紀に入ってから。ローマ時代からの歴史を持つ土地だが、国としては非常に若いのだった。
英国だったイングランドとウェールズとスコットランドとアイルランドは基本的に別の国。サッカーのFIFAにはそれぞれ別々の国として登録されていて、ホームインターナショナルという独自の国際試合もあるほどだ。
以上挙げた国には、それぞれブンデスリーガ、リーガ・エスパニョーラ、セリエA、プレミアシップ……などといったように、サッカーのプロリーグが盛んだが、いずれも町単位で競い合った歴史が投影されている。それぞれのリーグの特徴は、クルマのあり方にもどこか共通するものがある。
すべては後々で知ったことだが、ファーストインプレッションで得たインスピレーションは、後からいろんな関連性を持ちながら繋がっていくもんですなあ。
まあ、とにかくベルンの街まで行ったのは事実で、そのことをホテルに帰って夕食時に「今日ベルンに行ってきたんだよ」レストランに集まったホテルの人達に報告すると「???」「???」「???」皆キョトンとしている。
「あの、B・E・R・Nとアルファベットをそのまま発音すると「Oh バァ~ン」ベルンはドイツ語読みで、フランス(英語)発音はバァ~ンなのだった。まったく言語的には世界の小学生以下といった感じだが、こっちには行動しながら学ぶ力がある。
行きたい時に好きなところに行ける。ガソリンと大過なく運転できるスキルさえあれば。公共交通機関を使うとなると、切符の入手から汽車/バスの発着時間にいたるまで多少なりとも言葉ができないとストレスが溜まる一方だ。
でもドライビングスキルに自信がありさえすれば、それこそ衣食住すべてに関わる言葉に不自由してもストレスを感じることがない。若い人に口を酸っぱくしていいたいのだが、AT免許なんかで楽しないで、自分の中にあるクルマを楽しむ能力に期待して積極的にドライビングに関わった方がいい。
できれば、サーキット走行やコンペティションの世界に足を踏み入れて、限界の存在を身体に入れておきたいところだが、そこまで行かなくても常にオンロードでイマジネーションを膨らませながら、どういう走りが理想的かを考えたい。
実は、パリを発って、フランスのカントリーロードを走った時に、まず一発目のカルチャーショックを受けていた。雰囲気の良いワインディングで見た光景。対向車線は下り勾配。そこをどう見ても60歳はいっていると思われるご婦人が、(ルノー4だったかな)なかなかのスピードでいい感じのロールを発生させながらビュンとすれ違って行った。これはヨーロッパ、相当手強いぞ。肌で感じ取った欧州の奥の深さだった。
いまも残っているかどうか不明だが、フランスのカントリーロードには片側1車線の真ん中に上下線共通のラインが一本あって、そこで追い越しを行なう。優先権は先入車にあるようだが、そういうチキンレースみたいな状況の中で絶えず緊張感を覚えながら合理的な走りのパフォーマンスを追求している。
こういうカルチャーショックは、若ければ若いほど鮮烈な記憶として残る。せっかくここまでグローバル化、フラット化した世界なのだから、『若者のクルマ離れ』などという怠慢なメディアやメーカーのマーケティング担当者の言い逃れのしり馬になんか乗っていないで(事実はクルマの若者離れが深刻な状態になっているだけだもんね)、もっと楽しむことを真剣に考えよー。楽しいことを考えると、人生けっこう楽しめるもんだよ。
つづく
Posted at 2009/07/24 23:09:15 | |
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