高嶋哲夫の小説です。
とある日本のサルベージ会社が、第二次大戦中に水没した”ゼロ戦”を
引き上げたところから話が始まります。
このサルベージ会社の社長はこの引き上げた”ゼロ戦”に関係のある人物。
しかも、余命半年・・・。
引き上げたあと、この”ゼロ戦”にまつわる話が展開されていきます。
時代は終戦間際の1945年ボルネオ島近辺。
(インドネシア・ブルネイ・マレーシアの領土です。)
主人公はサルベージ会社の社長ではなく当時の上官。
主人公は特攻機の直掩機のパイロット。
紆余曲折あって、自分の機が失われサルベージ会社の社長が
乗るべきだった”特攻機”のパイロットに・・・。
運命の悪戯で、特攻する前に不時着することに・・・。
そこからストーリーは大きく変わって行きます。
第二次大戦という大波に翻弄される若者たち。
戦争に翻弄されたと言うよりは、資源、人材、空間を
うまく戦略に盛り込めなかった大本営に翻弄された感があります。
この感じは今の日本にも当てはまることのような気がしてなりません。
第二次大戦の緒戦、日本は優勢を保ち東南アジア、
太平洋と進撃していきます。
戦略物資に乏しい日本は、うまく講和に持ち込む戦略を執るべきでした。
しかし、何を間違えたか戦線の拡大をしていきます。
挙句の果てには、必要な物資は現地調達するように通達が出ます。
明らかに無謀な戦略。
(現地調達という時点で既に戦略とは言えないか。)
しかも、一度成功した”特攻”という暴挙。
将来を担う筈の若者の命を無駄に消費させていってしまいます。
緒戦では最強だった”ゼロ戦”も研究され対策が講じられ、”F6Fグラマン”
を投入されていきます。
もちろん、”特攻”も高射砲の弾幕の前には手出しできない状況になりました。
では、大本営は対策の対策を講じたかと言うと・・・。
皆無だったそうです。
では何が今の日本に当てはまるかと言うと、
目先の対策・・・対処療法に終始して、10年先、20年先は一切見ていない。
そういった戦略すりゃない。
政治家・政党・政府が夢想家、空想家になってしまうのは困りますが、
5年先、10年先の社会がどうなっていくのか、どうしたいのかという
ビジョンを示すべきではないでしょうか?
それも具体的に。
まあ、偉そうに言ったところで自分も目先の生活に囚われてしまって、
5年先、10年先を見つめることが出来てはいないんですけどね。
もう一度しっかりと未来を見つめなおしてみようと
考えさせられた小説です。
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Posted at
2012/04/11 12:44:12