小ネタ

むかしむかし、あるとこに、
とんでもない金持ちの夫婦がおったんじゃと。

旦那はんは、百ドル札を束にして、
くるくる丸めて、暖炉のそばにそっと隠しとった。
「ふふ、これがワシのへそくりじゃ。誰にも見つかりゃあせまあ。」

ほんである寒い日のこと、
奥さんが暖炉の前で言うたんじゃ。
「今日はえらい冷えるなぁ。あら、こんなとこに紙が落ちとるが。邪魔じゃなぁ。」
ほいで、その紙をつまんで、ポイッと火の中へ。

メラメラ、パチパチ、
緑色の煙がふわ〜っと舞い上がったんじゃ。

その晩、旦那はんが帰ってきて、
暖炉の前でぽつりとつぶやいた。
「…あれ？ワシのへそくり、どこ行ったんじゃろうか…」

奥さんはにっこり笑うて、
「今日の火は、いつもよりぬくうて、ええ日じゃったわ。」

旦那はん、しばらく黙っとったけど、
「…ほんなら、ええか。」

安う見積もって一万ドル。
じゃけど、夫婦のぬくもりは、金じゃ買えんのんじゃ。


めでたし、めでたし。