
これまで様々な分野の知見者に聞いてきた話をまとめます。
これまでに話を聞けた知見者は自動車メーカーエンジニア(国内大手5メーカー)、オイルメーカーエンジニア(国内外3社)、WRCメカニック(2社)、耐久レースチームメカニック(多数)です。
まずは基礎編
・高価なオイルを長期間使うより、安価なオイルを頻繁に交換した方がエンジンには良い。
(根拠)メーカー直系のレーシングチームでは純正オイルを走行1日毎に交換します。上位カテゴリに行くほどエンジンばらすまでの期間が短くなり、トップカテゴリでは走行1日毎にエンジンばらすので、必然的にそうなります。
(ユーザーとしての考え方)年間走行1万kmでオイルに使える予算が年1万円の場合、1万円のオイルを年1回交換より、5000円のオイルを年2回交換、さらには3000円のオイルを年3回交換する方がより良い。
・純正オイルは世界中のどこでどんな使われ方をしても大丈夫なように作られているので、よく言えばオールマイティ。悪く言えば限定された用途においてのベストは他にあるということ。
(根拠)メーカーの耐久テストでは寒冷地での冷間始動性、熱帯(砂漠)地域での連続高負荷運転など様々な条件で行い、これら全てに合格したものが純正オイルである。市販品より比較的安価なのは低品質や素材に安いものを使っているからではなく、純正オイルとしてほとんどの自社製品に使うことで量産効果を出しているから。純正オイル(量産効果大)より市販品(量産効果小)の方が安価な場合、何かしらの質を下げている可能性が高い。
(ユーザーとしての考え方)サーキット限定、寒冷(熱帯)地限定等、運転条件を絞ることができるなら、それに合わせたオイル変更は有効。ただし、ユーザー毎に常用回転域や使用方法が異なれば最適条件も変わるので、万人に良いと言えるものは無い。あるいはそれが純正オイルだと言える。
・オイルは固すぎても柔らかすぎてもダメ。
固すぎると(特に冷間で)十分な油膜を張れず、シリンダーヒット等の原因になる。また、フリクションが増え最高速が下がり、燃費が悪化するので良いことが何も無い(レースにおいて燃費はタイムより時として重要になることが多い)。柔らかすぎると(特に温間で)油膜切れを起こし焼き付く原因になる。
次に応用編(用途限定、主にサーキット、レース用途)
・WRCに参戦しているメーカー2社では、どちらも純正オイルを使っているとのこと。基礎編にも書きましたが、基本的に毎日交換だそう。
・WRXで耐久レースに出場しているチームで使用しているオイルは15W-50でした。このチームはシーズンを通して一貫してこの粘度を使っているとのこと。
・スプリント(耐久性を削ってでもタイムを出したい)に出るWRXは(冬場にアタックすることが多いこともあって)0W-30を使っていました。
・オイルの粘度選択は季節や用途よりも最高油温で選択するのが基本とのこと。
サーキット走行限定で高回転多用する用途だとしても油温が95℃で安定しているならxW-50もいらない(燃費悪くなるので)。冷却がしっかりしているならxW-30でも問題ない。逆に街乗りだけだとしても渋滞等で油温が110℃まで上がることがあるならxW-40~50が必要になってくる。
・冷間の粘度を気にするエンジニアはほぼ皆無。(当たり前ですが、レースは暖機してから走行するので。)ただし、冬場の耐久で15W-50を使用している場合は始動直後はオイルが冷えすぎていてアイドル不安定、エンジン振動が出たりするので、気を遣うこともあるそうです。(粘度を変えるのではなく、冷間始動時間をいかに減らすか、例えば予め外部から温める等の対策をするとのこと)
まとめ
・オイル粘度は最高油温で選択する。
(EJ限定)温度目安は95℃以下-30、105℃以下-40、106℃以上-50。
・銘柄に迷ったら純正指定から選んでおけば間違いは無い。
・純正より安価なオイルは何かが犠牲になっている可能性が高い。
・オイル交換頻度は高ければ高いほど良い。
※メンテナンスは自動車使用者の義務であり、自己責任です。
本投稿による一切の不利益の責任は負えませんので悪しからずご承知おきください。
Posted at 2021/03/14 22:12:53 | |
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