作成:2024年5月1日
改定:2025年3月10日 情報追加、文言修正
ABS誤作動
コーナーへ入る時のブレーキング中、突如ブレーキペダルが石のように硬くなるこの恐ろしい現象は「Z34の持病」とも言われていて、SNSでもしばしば物議を醸しています
私もサーキットを走行中に何度も経験しましたが、臨機応変な対応で回避してきました
ABS誤作動を起こす原因については諸説ありますが、今回は私の5年間の経験に基づいた考察を僭越ながらご紹介したいと思います
Z34でスポーツ走行を嗜む仲間が覆轍を踏まないよう、今後のチューニングの一助となれば幸いです
ちなみに、Z33でもABS誤作動が起こるようですが、こちらは知見がないため今回は割愛します
【結論】
アシとブレーキが原因
2023年にリアブレーキの容量を上げてからABS誤作動が頻発するようになってしまったんですが、GTウイングの効きを上げたところ、高速域では飛躍的な改善が見られました
しかし低速域では依然としてブレーキペダルがロックしやすい状態が続いており、その原因を追究するべく実走とデータの渉猟を重ねた結果、ABS誤作動を起こすのはリアタイヤがロックしやすい状態/場所であるという共通点がありました
もちろんブレーキングをすれば物理的にリアが浮くので、必然的にロックしやすくなります
ここで言及したいのはそんな自明の話ではなく、+αの要因がある可能性についてです
まずは筑波サーキットを例に挙げてみましょう
第1ヘアピンに進入する際、ABS誤作動を起こしやすく何度もヒヤッとした経験があります
何が原因なのかと思って少しずつ走り方を変えてみると、ABS誤作動を起こす時は、進入時に右側の縁石を踏んでいることが分かりました
さらに分析していくと、リアタイヤが右側の縁石の上に乗った瞬間にブレーキングを開始していることが判明しました
縁石は路面ほどグリップしないし、さらに右に旋回して遠心力で内側(縁石側のタイヤ)の荷重が抜けているため、滑りやすい状態になっています
つまり第1ヘアピンでは、リアタイヤが滑りやすい状態でのフルブレーキングがABS誤作動を惹起しているということが推論できます
次に、第1コーナーについて考察します
ここでも私はABS誤作動を経験したことがあります
このコーナーは上り坂になっていますが、ブレーキングポイントを詰めていくとある地点からブレーキペダルが石になりやすくなるんです
もちろん、精神的なプレッシャーが踏力を引き上げたという可能性も大いにありますが、このコーナーは上り坂が終わると路面が突然フラットに変わります
登り坂からフラットになる瞬間、ブレーキングを開始したら一体どうなると思いますか?
荷重が急激に前方へ移動し、その反動で後方の荷重が(シーソーと同じ原理で)一気に抜けるんです
リアタイヤへの荷重(路面へ押し付ける力)が抜けてしまうと、リアは滑りやすく簡単にロックしてしまう状態になります
つまり第1コーナーでのABS誤作動は、リアタイヤのロックが起爆剤になっている可能性が考えられます
次に、袖ヶ浦フォレストレースウェイについて分析します
私の経験上、4コーナーへ進入する際のブレーキング中にABS誤作動が非常に起こりやすいです
ここは下り坂になっているだけではなく、70Rのコーナーになっているので、右側のリアタイヤは荷重が抜けやすいんです
ちなみに、5・6・7コーナーのエイペックスも70Rですが、ここではブレーキペダルが石になったことがありません
なぜなら、このコーナーはずっと上り坂になっていて、ちょうどアクセルをオンにするタイミングで下り坂になるため、リアの荷重が抜けにくいんです
つまり4コーナーでは、リアタイヤの荷重の抜けがABS誤作動を引き起こしていると推測できます
さらに私を考察を後押しするのが、9コーナーでもブレーキペダルが石になりやすいという点です
9コーナーへの進入でブレーキングを開始する地点に、路面の陥没があるのをご存じでしょうか(陥没というよりジャンプ台の方が近い)
ここでリアタイヤが跳ねた時にブレーキを踏むと、ほぼ確定でABS誤作動が発生するんです
リアタイヤがロックする=ABS誤作動を起こす
...というワケではありませんが、
ABS誤作動が起きた時、必ずリアタイヤがロックしています(ローターにABSが介入した痕跡があります)
以上の例を踏まえると、以下のことが言えます
ABSを誤作動させないためには、リアタイヤをロックさせないことが肝要である
では、どのような対策が有効なのか?
いくつか進言させていただきます
1.ブレーキの踏み方を改める
ドッカーン!と蹴るようにブレーキペダルを踏むと、急激にフロントが沈み込み、その反動でリアの荷重が一気に抜けます
このような粗暴な荷重の変化は、リアタイヤをロックさせる原因となります
まずは優しくブレーキペダルを踏んでフロントに荷重が乗ったのを確認してから、ググッと強く踏んでいくのとリアの荷重が抜けにくいです
ブレーキパッドの初期制動が強いと、この操作の難易度が上がります
2.リアウイングの効きを上げる
ウイングは嫌い!
可変式じゃないから無理!
...という人は、読み飛ばして結構です
GTウイングを立てたり大きくしたりして効きを上げるのは、リアタイヤをロックさせない予防策としては極めて有効です
数cm程度ウイングを立てるだけでも、絶大な効果が得られるのを確認しています
その代償としては、若干アンダーステアになるのと、ホームストレートなどでの最高速度が少し落ちてしまいます
また、リアウイングが効きづらい低速域では何の対策にもならないので、その点は注意が必要です
3.フロントのバネを硬くする
何も無いところでABS誤作動を起こすという場合は、ノーズダイブを起こしている可能性があります
つまり、フロントのバネレートが低すぎるということ
リアタイヤをロックさせないためには、
リアを浮かせないようにするのが有効であり、
リアを浮かせないようにするには、
フロントが沈まないようにするのが効果的です
もちろん減衰力を上げる手もありますが、ストローク量が短くなるわけではないため注意が必要です
また、フロントを硬くすると、乗り心地は悪化します
4.リアブレーキの効きを下げる
リアブレーキの仕事量を減らすのも有効です
社外品の4ピストンキャリパーが付いていたら純正の2ピストンに戻してみたり、効きが弱いパッドに交換したりするのも手だと思います
ただし、ブレーキの効きが下がると全体的に戦闘力が下がる上、フロントブレーキの負担が相対的に増えるので注意が必要です
5.フロントブレーキを強化する
前項とは逆のアプローチです
効きが強いパッドに交換するとか、キャリパーやローターのサイズを大きくするとか、やり方は色々あると思います
6.リアダンパーの特性を変える
競技用のベッタベタな車高調にありがちなのが、リアダンパーのストローク量が少なすぎること
ストロークが少なかったり伸び速度が遅かったりすると、リアの荷重が抜けた時にタイヤを路面に追従させ続けることができず、タイヤがロックしやすいです
しかし、これらの調整は普通は出来ませんので、車高調自体の買い替えが必要になると思います
ちなみに、以前使っていたOHLINSがまさしくこの考え方だったんですが、他のクルマと比較してABS誤作動を起こす頻度は少なかったと思います
リアタイヤをロックさせないことだけに着目すれば、ダイヤのグリップを上げるのも有効であることを確認しています
海外製のバッテリーに交換したらABSが誤作動するようになったという人もいますので、もしかしたら原因は錯節としたものかもしれません
ですが、私の5年間にわたる経験によると、ABS誤作動の原因はアシとブレーキです
具体的には、リアのABSが作動した後、さらに強くブレーキペダルを踏み込んでいくと突如ペダルが石のように硬くなります
ま、石になった瞬間ペダルをリリースすれば、
普通にリカバリーできるんですけどね
おそらく、リアのABSが作動した時のフィーリングをご存じの方はほとんどいないと思いますが、めちゃくちゃ気持ち悪い感じなんです
いずれにしても、ABSが誤作動するかどうか心配なら、リアに滑りやすいタイヤを履かせてドッカンブレーキしてみてください
もちろん、公道じゃダメですよ
サーキットならOKってワケでもないけど...