栃木県日光市のホテル・カジュアルユーロのロビーにはいすゞ”117Coupe"が展示してあり、通常はドアロックされているが、宿泊客は時間帯により運が良ければ車室内やエンジンルームまで見せて貰える。
”117クーペ”の原点は1966年のジュネーブ・オートサロンに参考出品されたプロトタイプで、デザインはジョルジョ・ジウジアーロが手懸けその美しさは世界的に高く評価されたそうだ。いすゞ自動車は当時の開発コード番号をそのまま車名”117クーペ”として1968年に量産化に踏み切りました。ただ、大きなガラス面積に細いピラーや微妙にカーブを描くボディラインなどは当時のプレス技術ではデザインを正確に再現することが出来ず、イタリアから板金職人を招き、多くのパーツの生産を手作業で行っていた由、それもあって月産30〜50台に過ぎず初期型の117クーペは「ハンドメイド」と呼称されているそうな。展示されている車体はその1968年製のアストラルシルバーメタリックの車体である。

ボディ・サイズは全長4,280mm、全幅1,600mm、全高1,320mm、ホイールベース2,500mm、車両重量1,050kgの4座クーペである。エンジンは種類DOHC(水冷直列4気筒)、排気量1,584cc、最高出力120PS(88kW)、ゼロヨン16.8秒、路上最高速度190km/hであった。

初期型の室内は上質な発泡レザートリム、台湾クスノキのウッドパネルやウッドステアリング、円形のダイヤルで開閉できる三角窓などで造り込まれワンランクもツーランクも上の仕上がりだが、本場イタリア車のようなウッドと革の持ち味を活かしたお洒落な装いが出来なかったことが残念である。

リアウインドウのデフォッガをフロントと同様の送風式にし、熱線プリントを排しスマートなリアガラス(最初の一年間だけに生産された車両に限る)や、そのリアウインドウにダイレクトに覆い被さるように閉じるトランクなど各所に斬新な処理が施されています。

117クーペは1973年にマイナーチェンジしプレス加工のボディに変更され(中期型)、1977年にはヘッドライトが角形に変更され、テールの処理も繊細なイメージから変わってしまった(後期型)。1981年に生産終了したが、中期以降の生産車両は初期型の流麗なフォルム、優雅さには及ばない。

この車体の購入価格は172万円と表示されていた。同じ年のトヨペットクラウン・スーパーデラックスが112万円、スカイラインGT-R(ハコスカ)が150万円であったことを思えば117クーペの販売価格が如何に高価な高級車であったかがわかります。現在の貨幣価値で換算すると軽く1,000万円を超えます。この車は平成の世まで現役で、エンジンが鼓動を止めた時点のオドメーターの数値は87,907kmでした。
オーナーであり当ホテル・グループの社長でもある阿原さんによれば、コストも年数も掛かるが細部に至るまでレストアしもう一度公道を走らせたい、と語っていました。(取材:2024.9.27)
Posted at 2024/12/24 16:58:49 | |
トラックバック(0) | クルマ