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aki@rsのブログ一覧

2024年02月03日 イイね!

シフトダウン

先日タツゥさんがシフトダウンのことを書かれていました。
あぁこれ僕も感じたことあるなぁと思って過去のブログを読み返したら、2017年の記事の中で「クラッチミートのタイミングが少し遅れると制動距離がずいぶん伸びてしまう」と書いているのを見つけました(ヒール&トゥ

要はフルブレーキング中にエンジンブレーキがどの時点から効き始めるかによって制動距離が変わっちゃうって話なのですが、特に感じていたのが最終コーナで、もともとタカスサーキットの最終コーナは奥に行くにしたがってキツくなるような形状で、コーナ進入時点での速度が正しいかどうかがその後のコーナリングに与える影響が大きい傾向があります。
そのうえ直前のストレートがわりと長いためブレーキング操作の誤差が制動距離の差として現れやすく、余計にフルブレーキングに対して高い精度が求められてしまうんですね。

僕は基本的にフルブレーキング中はABSを効かせる派なので、ブレーキペダル踏力が足りてない疑いは除外できることを考えると、こういうことが起こるのはリヤタイヤのグリップが余ってるからなんだろうなぁと思っていました。
でもよく考えたらABSが効いてるのにグリップ余ってるって変じゃない?ABSってタイヤのスリップ率を理想的な範囲にキープするためのものじゃないの?と思っていたものの、当時は無視していたのですが、今回いい機会なのでちょっと考えてみることにしました。

まずABS作動のおさらいです。
 (1)ブレーキペダルを踏む
 (2)4輪のうち最も回転速度の高いセンサの値をもとにして疑似車速を計算する
 (3)疑似車速と各輪の回転速度をもとにして各輪のスリップ率を計算する
 (4)各輪のスリップ率が一定の範囲に収まるようにブレーキ油圧を保持→減圧→保持→加圧を繰り返しながら制御する
細かいところを端折るとこんな感じでしょうか。

うーん、これだけ見てるとABS作動中にリヤタイヤのグリップが余る理由というのは思いつきませんね。
ABSを作動させるために十分なブレーキ油圧がかかっているなら、そこからエンジンブレーキが加わることで「タイヤをスリップさせる力」が増えたとしても、結局のところ適正なスリップ率になるように調整されるので結果は変わらないはずです。
力の源泉としてフットブレーキはブレーキの油圧、エンジンブレーキはシリンダ内のポンピングロスという違いはあるわけですが、どちらにしても結果的なタイヤの回転をホイールセンサが検知して、減速しすぎるようならブレーキ油圧を下げてタイヤの回転速度を上げる(スリップ率を減らす)ので、エンジンブレーキが度を超えて強力でない限り、スリップさせる要因が何かというのは関係ありません。
油圧の経路としても4チャンネルのABSは保持ソレノイドと減圧ソレノイドを各輪毎に持ってますし、フロントが減圧中かどうかはリヤの油圧には関わりませんね。




ということは…。



あれか…。




「そもそもリヤブレーキがフットブレーキだけでタイヤをロックさせるのに十分な性能を持っていない」




そんな気がしてきました。
雨道や雪道で実際にリヤが滑った場合はASB効くんでしょうけど、ドライ路面でフロントをロックさせる程度のブレーキ油圧ではそもそもリヤはロックしないんじゃないかと。
リヤタイヤのスリップ率が低いのであれば、フルブレーキング中にエンジンブレーキが追加されることで車両としての減速Gが増えるのは納得がいきます。
とはいえ僕、フルウエット路面でもずいぶんタカス走ってるんですけどね~。
ウエットだとどうだったかな…そう言えばクラッチミートのタイミングによって制動距離が変わるみたいなのは感じてなかったかもしれません。
あんまり覚えてないけど笑

スーパーフォーミュラではそういうことはないように思いますが、クラッチ切ってる最中に減速Gが落ちるというのは何故なんでしょうね。
普通に考えればブレーキ油圧が足りてない(増やせてない)、となると減圧の条件がちょっと低いのでは?と思いますが、減圧って実際にはスリップ率ではなくタイヤ回転の加速度(減速度)で設定されてることが(市販車では)一般的で、それだと疑似車速とかは関係なくて直接タイヤ回転の加速度を設定するだけなので、そこでその車の減速性能の最大値を使えば済む話だと思うのですが…。
まぁ頭のいい人たちがやってる最先端の技術はまた事情が違うのかもしれません。
レギュレーションで設定値を変えられないのかもしれませんしね。

どうでもいいけどタカスサーキットの最終コーナというのは本当にクセのあるコーナで、シフトチェンジとしては4速→3速→2速になるのですが、まず冒頭のような理由から4速→3速はなるべく早い段階でなるべく速い操作として済ませておかなきゃいけません。
さらに3速→2速が厄介で、これ、エンジン回転がシフトダウン出来るようになる地点において、ハンドル操作とブレーキペダルのリリースが既に始まってしまってるんですね。
ブレーキペダル戻しながらアクセルペダル煽るのをハンドル切ってる最中にやるのは至難の業ですよ~、出来ないことはありませんが、どうしてもいずれかの操作がおろそかになります。

当時、確かbjくんとこの問題について話してて「2速はヒールトゥしてないっすよ!」って聞いたのでマネっこさせてもらった記憶があります。
要はブレーキペダルのリリースが終わって、ペダルから足が離れた段階でアクセルペダルを煽ります。
で、そのままクラッチミートするのですが、この段階ではすでに最低速度地点付近まで来ているため、つまり大きな横Gを受けている状態でクラッチミートすることになります。

するとどうなるか、回転が合っていれば何事も起こらないのでアクセルコントロールしながらそのまま走れます。
回転が足りないとリヤタイヤがスリップしてスピンします。
最終コーナはタカスサーキットにおいて最も速度レンジの高いコーナです。
失敗すると外側のバリケードに刺さります!

と、まぁ大げさに書きましたが実際のところ時間的にもコーナのスペース的にもちょっとした余裕はあって、実際にリヤタイヤが少しくらい滑ったとしてもリカバリー出来ないほどシビアなわけじゃありません。
ただ初心者の方だと危ないので、試すならコースに慣れてからのほうがいいと思います。
そうは言ってもヒールトゥであらかじめシフトダウンしておくということが出来ないので、最初のうちは2速を使わず3速で走るようにしたほうが安心かもしれませんね。
まぁこのあたりはギアレシオにもよりますが。

というわけでちょっと脱線してしまいましたが、シフトダウンのお話でした。
タカスサーキットの最終コーナや影山コーナで「ブレーキング開始地点は毎周揃ってるはずなのに、なんだか制動距離が安定しないなぁ」と思った方は、ヒールトゥの際のクラッチミートのタイミングが揃ってるかどうか意識してみてください。
コーナ進入時点の速度が安定すると、コーナリングの練習がぐっと楽になります。
Posted at 2024/02/03 22:16:28 | コメント(2) | トラックバック(0) | 日記
2024年01月23日 イイね!

翻訳ツールあれこれ

EDRのデータは基本的に49CFRpart563というアメリカの法律に沿うかたちで記録されることになっています。
その法律は当然ですが英語で書かれています。
また事故データをCDR(クラッシュ・データ・レトリーバル)という機械で抽出してレポート化する際も、出てくるレポートは全て英語で書かれています。
英語が堪能な方は問題ないかもしれませんが、僕は英語まるでダメなので、それを読むにあたっては翻訳ツールが必要になります。

ところで49CFRpart563の英文ページをMicrosoft Edgeの機能で丸ごと翻訳すると、ところどころ変な日本語が混ざって出てきます。
日本語って特殊だし、AIも万能じゃないので仕方ありません。
具体例を見てみましょう。



(原文)
■Maximum delta–V, resultant means the time-correlated maximum value of the cumulative change in velocity, as recorded by the EDR or processed during data download, along the vector-added longitudinal and lateral axes.



(Edge翻訳)
■最大デルタ-V、結果とは、EDRによって記録された、またはデータのダウンロード中に処理された、ベクトルで追加された縦軸と横軸に沿った速度の累積変化の時間相関のある最大値を意味します。



「最大デルタV、結果」ってなんやねん笑
要はこれ縦と横の合力のことです、resultantの和訳が文脈に沿っていないことが分かります。
the vector-added longitudinal and lateral axesについても「ベクトルで追加された縦軸と横軸」と表現されています。
これも意味としては縦と横の合力のことなので、「ベクトルで追加された」って言われると変な感じしますね。

ちなみに翻訳結果に定評のあるChatGPTに翻訳させてみたらこうなりました。



(ChatGPT翻訳)
■最大デルタ-V、結果的には、EDRによって記録されたまたはデータダウンロード中に処理された速度変化の累積の最大値を、ベクトル合成された縦および横軸に沿った軸に沿って時間相関して意味します。



今度は「結果的には」とか言い出しました。
vector-addedを「ベクトル合成された~」と表現できるのはさすがです。
でもmeans the time-correlated maximum valueをうまく訳せてなくて、「時間相関して意味します」とかいうワケの分からない日本語が出てきました。
アマゾンのレビューでこんな日本語よく見ます。

ところで皆さん、次の和訳をご覧ください。



■最大デルタ-V(合力)とは、ベクトルで加算された縦軸と横軸に沿って、EDRによって記録された、またはデータのダウンロード中に処理された、速度の累積変化の時間相関のある最大値を意味します。



おお!これはかなり正確な和訳ですね!
日本語としてはちょっと文の構成が読みにくいかもしれませんが、原文がそうなってるので仕方ありません。
ちなみにこれ、Microsoft Wordの翻訳結果なんです。(「校閲」タブの中に翻訳ツールがあります)
resultantもちゃんと合力になってるし、vector-addedは「ベクトルで加算された~」になっていますが意味としてはそういうことなので伝わります。
ここでvector-addedをベクトル合成と訳すのは厳密に言えば意訳で、そのあたりはChatGPTすごいなと思いますがWordの綺麗な翻訳に比べるとまだまだです。

Wordでも49CFRpart563の全文翻訳だとResolution(分解能)という単語が「解決」と訳されてしまったり、event(イベント)が「出来事」と訳されてしまったりしているので、当然ですが完ペキってわけではありません。
文章中の言葉ではなく表の中の項目として出てくる言葉だと、前後の文章がなくて単語だけで判断する形になるので仕方ないですね。
でもでもNormal accelerationについて、表の項目としては「通常の加速度」と訳されてしまっていますが、定義の文章の中ではちゃんと「法線加速度」になっています。
これはEdgeでもChatGPTでもgoogle翻訳でも全て「通常の加速度」と翻訳されてしまうので、「法線加速度」と翻訳してくれるのはWordだけです。※

ただしChatGPTについては、突っ込むとちゃんと教えてくれます。







少し前までChatGPT使ったことなかったんですけど、文書作成というより普通に調べものでネット検索するようなときに便利だなって思いました。
所詮はネットの知識なので技術的なことを突っ込むとアホっぽい答えが返ってきたりしますが、ぜんぜん詳しくない分野の一般論を知りたいときなんかにはGoogle先生よりも丁寧に教えてくれるので、検索エンジンの代わりで使うならオススメです。
翻訳結果について詳しいところが知りたいときにもそのまま続けて質問できる気軽さがあって便利、ただし翻訳結果の良さでいうと個人的にはWordに軍配が上がります。

以上、翻訳ツールのお話でした。
CDRアナリストの方で「googeでうまく翻訳できなくて困ってる!」って方おられましたら参考にしてください。







※Nomal accelerationについて、Chat GPTで「日本語に訳してください」ではなく「日本語に翻訳してください」と入力するとなぜか法線加速度と訳してくれることが分かりました。
でも文脈によっては正規加速度とか規定加速度とか出てきたりしますね…。
便利なツールも使いようなので、違和感あるときは突っ込んで聞いてみましょう!
Posted at 2024/01/23 12:44:41 | コメント(0) | トラックバック(0) | EDR関連 | 日記
2024年01月17日 イイね!

デルタVとは

EDRデータ解析において、最も重要視される指標のひとつに「デルタV」というものがあります。
単位は速度で、km/hまたはmphが使われます。
一定の時間内にどれくらいのデルタVが発生したかによってデータが記録されるorされないが決まったり、記録終了のタイミングが決まったりするので、デルタVはとても重要です。
でも一般にはあまり馴染みがありません。僕も研修を受けて初めて知りました。デルタV。
それって何なの?

先日ご紹介した記事の中では「ここで言うデルタVとは、車両の速度変化を数値化したものを指す。加速度に似ているけれど、どちらかと言えば動的なエネルギー変化を表しているものだと考えるとわかりやすい。」と書かれています。
あー、はいはい。なるほど。うん。何言ってるのかまったく分かりません。

結論から言うとデルタVというのは加速度の積分です。
…という説明で分かってもらえる人は理系の方、僕は文系なので微分積分は全て忘れてしまいました。
もうちょっと詳しく見てみましょう。







分かりやすいように具体例を作ってみました。
速度変化は僕が適当にデータを打ち込んだものです。一番左のグラフがそれです。
20km/hの時点をスタートとして、15秒間の速度変化と、そこから計算で得られるいくつかの値を表示しています。

この図では都合上、加速度の単位をm/s^2ではなくkm/h/sとしています。
ここから加速度を積分してデルタVの値を得るために、真ん中のグラフを見ながら面積を計算します。(※)







つぎに、1秒毎の速度からそれぞれ20km/hを引いて、t0(スタート地点)からの速度の差、つまり最初と比べて何km/h増えたのか?を計算します。
そして「デルタV」と「t0からの速度差」、それぞれをグラフ化したのがひとつめの画像の一番右のグラフです。







青色とオレンジ色、それぞれよく似たグラフですが微妙に一致していません。
この差が大事なんですね。この差が。
これがデルタVを使うことの意味なんだろうと、個人的には思っています。

「t0からの速度差」というのは単に引き算で出す値であって、最初の速度と最後の速度だけを計算として使うため、その途中の速度がどのような変化であったとしても、それは計算には反映されません。
例えば20km/hから56km/hに変化した場合、その速度差は36km/hですが、途中の速度がどのような増減をしようが最終的に56km/hになりさえすれば、速度差としてはやはり36km/hとして算出されるわけです。
ところがデルタV、つまり加速度の積分であれば、途中の増減が変化すると積分の値(グラフ下の面積)も変わってくるため、そこでの変化が反映されます。
それが「デルタV」と「t0からの速度差」とのグラフの違いとして出てくるわけです。
ほんの少しの違いですけど、そこが重要なんだろうなと。

もうひとつ例を見てみましょう。







これは試しに加速度を一定の値に固定してみた場合のものです。
この場合は1秒あたり1km/hという加速度なので、当然ですが速度変化としては1秒毎に1km/hずつ増えていくような速度変化になります。
そしてこのとき、「デルタV」と「t0からの速度差」は1秒毎のどの時点でも一致します。
これは速度の変化の割合、つまり加速度が一定なので、こうなります。




CDRアナリストの研修では、演習問題としてデルタVを使った計算なども行いますが、便宜上、加速度は一定であるという前提で計算します。
そのため「2つの時点の速度の差」をもってデルタVとするのですが、このあたりが感覚的によく分かりませんでした。
結局デルタVって何なのか?
ちょっともやもやしていたので、グラフ作りながら考えてみたら疑問が解決してすっきりしました。

加速度が一定だと仮定して考える場合、「デルタV」と「t0からの速度差」は一致するわけですが、そうであれば別にデルタVを使わずに加速度を使ったほうが考え方としてはシンプルなわけです。
でもEDRは加速度ではなくデルタVを使います。
49CFRpar563でも加速度の値の扱いは適当で、「表示させるかどうかはどっちでもいいよ、メーカーに任せます」みたいに書かれており、あの数値もこの数値も何もかもデルタVで指定されています。
それはたぶん、事故の衝撃というものを判断するのに瞬間的な速度や加速度だけではなくて、区間内の変化の推移も含めたいからです。
加速度の積分であれば「どのような増減を経て現在に至ったか」が反映されます。

ちなみに49CFRpart563で求められているデルタVのサンプリングレートは1秒間に100回、速度に関する分解能は1km/hで、時間に関する分解能はなんと2.5ミリ秒です。
0.0025秒の分解能ですよ!加速度センサってすごいですよね。
それだけ緻密に測っているし、それだけ緻密に計算しているってことなんだろうなと思います。
恐れ入りますね。

そんなわけで理解のためとはいえ久しぶりに数字とにらめっこして、とっても頭が痛くなりました。
しばらくは仕事も家事も何もせずお空の雲を眺めて過ごしていたいです(おいおい)






















(※)ちなみに今回の場合、積分の値は「(1秒前の加速度 + 加加速度の1/2)の総和」で求められます。
CDRアナリストの方でこちら応用される場合は、サンプリングレートと加速度の単位にご注意ください。



Posted at 2024/01/17 12:42:00 | コメント(0) | トラックバック(0) | EDR関連 | 日記
2024年01月06日 イイね!

サーキット走行とEDRデータ

あけましておめでとうございます。
今回の震災で被害を受けた方にお見舞い申し上げます。

EDRは衝突事故を検知してデータを記録するためのものですが、実は事故がなくてもデータを記録することがあります。
「その衝撃が事故なのか、そうでないのか?」を判断するために使われる指標はたくさんあり、その中で例えば「トリガーしきい値」と呼ばれる値は「0.15秒の間で速度変化が8km/h以上あるかどうか」で定義されます。
加速度が一定の場合、これはGでいうと約1.5Gに相当します。  (8×1000÷3600)×(100÷15)÷9.8 = 1.5117157…
ただしデータの記録に関しては車種や条件によっていくつかの要素が関わってくるので、記録されたからと言って必ず1.5G出ていたとは限りません。

ところでこちらの記事では、VWのゴルフGTIをサーキットで走らせたらEDRデータが残っていました、という内容が書かれています。
https://web.motormagazine.co.jp/_ct/17585502
「オーナー自身もスポーツ走行に慣れているようで攻める走りを続けていたところ、ブレーキが途中で音を挙げてしまったという」とありますが、最悪、死ぬので、サーキットを走るときは油脂類とブレーキとタイヤの熱はちゃんと気にしながら走りましょう。
スポーツ走行に慣れてはいても、サーキット走行には慣れてない方の走行データのようです。

さて記事の中ではドライビングテクニックが云々と書かれていますが、結論から言うと、残念ながらEDRデータはサーキットの走行分析のためのデータとしてはあまり使えません。
まず、EDRで記録されるのは衝撃前5秒~衝撃後0.3秒くらいなので(今後の最新の車はもっと記録時間が伸びる可能性があります)(衝撃後0.3秒より早く記録終了する場合があります)、つまりフルブレーキの前5秒~後0.3秒のことしか分かりません。
データとしてはずっと上書きしながら記録し続けているのですが、実際に保存されるのはたったそれだけです。
また、記録できる容量が決まっていて、記事で紹介されているゴルフⅦの場合だと6件分の事故データです。(エアバッグ非展開の場合、最新の6件がどんどん上書きされて記録されます)
仮に100件くらい記録できたとしても、そこで分かるのはブレーキ踏み始め前後だけの情報なので、コーナリング中や立ち上がり、ストレートでの挙動は分かりません。
さらに比較的新しい車であるゴルフⅦですら、Pre-Crash Data(衝撃前の5秒間残ってるデータ)がコンマ5秒刻みでしか出てこないので、GPSロガーが通常コンマ2秒刻み(あるいはそれ以上)で記録できるのに比べると、ドライビングテクニックの解析に使うにはちょっと粗いデータとなります。
ただ、CDRアナリストの講習に一緒に参加されていた某自動車メーカーS社の事故分析担当の方は「事故の分析であればコンマ5秒刻みで十分です」と言っておられました。
ちなみにEDR搭載初期の古い車などは1秒刻みです。

そんなわけで、GPSロガーが既に市販品として普及してしまっている現状、残念ながらあえてEDRのデータをサーキット走行に活用する意味はない、というのが実態です。
EDR関連の調べ物をしていると、「サーキット走行のデータが取れる!」とか「安全運転の診断に使える!」みたいに書いてある記事を目にするのですが、ほぼ全て勘違いというか分析に有効なデータは取れないので、誤解のないようにお願いします。
ただ上記で紹介したwebモーターマガジンの記事では、実際のCDRレポートを掲載しつつ具体的な項目について言及があるので、「なるほど、EDRって具体的にはこんな感じなのかぁ」というのを知るにはとても参考になる資料だと思います。
記事の書き方や言い回しはずいぶん大げさですが、データを提供してもらっている立場上、オーナーの方に敬意を表さなければいけない背景は理解できるので、それを除けばおおむね正しいことが書かれています。
CDRレポートそのものは全て英語かつ専門用語も多いので直接読むにはハードルが高いかもしれませんが、解説を見ながら参考にしてください。
Posted at 2024/01/06 12:37:41 | コメント(0) | トラックバック(0) | EDR関連 | 日記
2023年12月20日 イイね!

EDRとは

自動車事故の衝撃を検知して、直前・直後の車両データを記録する装置、それがEDR(イベント・データ・レコーダ)です。
ほとんどの車の場合、エアバッグ(あるいはそれに準ずる装置)のコンピュータの中に記録機能を持たせることで、そのコンピュータがエアバッグを制御すると同時にEDRとしての役割も果たしています。

今から4年ほど前、東京の池袋で、旧通産省のお偉いさんが運転するプリウスが暴走して通行人を次々とはね、母子が亡くなるという事故がありました。
アクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いが疑われたものの、運転していた本人は過失を認めず、車両側に異常があったと主張。
ニュースは連日大きく取り上げられ、その後かなり時間が経ってからだったと思いますが「メーカーであるトヨタ自動車が調べた結果、ドライバーはブレーキペダルではなくアクセルペダルを踏み続けていたことが分かった」といった趣旨の報道が出ました。

え?それってどうやって分かるの?

と僕は思いました。
普段、整備の仕事をしていると、故障診断機を使って車両のコンピュータにアクセスする機会があります。
診断機には「データモニタ」といってリアルタイムのエンジン回転数やスロットル開度、水温センサの値、あるいはロール角や加速度、エアコンの作動状態などなど数々の項目を見る機能がありますが、あくまでリアルタイムのデータなので、過去のデータは見れません。
またフリーズフレームデータといって、警告灯が点灯するような故障が発生したりすると後からその瞬間のエンジンのデータなどを見ることも出来ますが、それもあくまで「その瞬間」のデータなので、時系列で見ることは出来ません。

ニュースを見たときは「まぁよく分からんけどそういうのはメーカーしか見れないようになってるんだろう」という程度に思っていたのですが、今回、資格講習を受けたことでようやくその中身が分かりました。
事故のデータというのは基本的に故障診断とは関係のないデータであって記録の趣旨がまったく違うため、必要になる機能も項目も精度も、故障診断とは違う。
使う機械も違うし、データを取り扱うのに必要な知識も違う。
というわけで交通事故案件には何の関わりもない一般の整備士である僕が知らないのも当然なのでした。

元を辿るとEDRというのはエアバッグの作動がきちんと行われたかどうかを後で検証するためのものだったようです。
データをきちんと取っていれば、お客さんから「事故が起きたのにエアバッグが開かなかったぞ!」とか「こんなの大した事故じゃないのに何でエアバッグが開くんだ!」みたいなクレームにも対処できますし、データを解析してより良い製品づくりに活かすことも出来ます。
ただ、そこにはエアバッグに関連する情報だけでなく「その事故がどういったものであったのか?」「ドライバーがどういう操作をして、車はどういう動きをしたのか?」というのを明らかにするために役立つデータが詰まっている。
この分野を深堀りしたのは訴訟大国であるアメリカだと思いますが、エアバッグのコンピュータの中のデータを事故の検証に役立てようとする動きが高まり、各メーカーがそれぞれに研究開発を重ねてEDRを車に搭載し始め、メーカー毎に違ういろんな記録様式のEDRが混在する中で、基準を統一するために、やがて49CFRpart563という法律が作られました。
それが2012年のことです。

自動車メーカーの中で最初に始めたのはGMだそうですが、トヨタでいえば初代ヴィッツの取扱説明書にEDR搭載の記載があるので、日本車のEDRもかなり歴史が長いことが分かります。
スバルやダイハツは2014年頃から順次、取扱説明書に記載が見られます。
ホンダ車の取扱説明書には今年からしか記載がありませんが、実際はかなり古くから搭載されているそうです。
説明書に書いてない理由は分かりませんが、今年から日本国内の新型車についてはEDR搭載が義務付けられた(継続生産車を除く)ので、今年から記載されたというのはそういう理由だと思います。

EDRはドライブレコーダに比べて社会的に認知度がまだまだ低く、「そういうものがある」「そういうことが出来る」と知っている人そのものが一般にあまりいないので、過去の事故案件で「それを知っていればデータを取り出してもっとこうしたのに…!」というケースも少なくないと思います。
業界全体の課題ですね。
Posted at 2023/12/20 12:56:35 | コメント(2) | トラックバック(0) | EDR関連 | 日記

プロフィール

「フェルスタッペン神がかってた」
何シテル?   07/01 00:02
福井のロードスター乗りです。 ロードスターは現在休眠中。 タカスサーキットをホームコースとしてサーキットアタックしていました。 GPSロガーの結果を元...
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2009/04/16 23:19:49
 

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