先日タツゥさんがシフトダウンのことを書かれていました。
あぁこれ僕も感じたことあるなぁと思って過去のブログを読み返したら、2017年の記事の中で「クラッチミートのタイミングが少し遅れると制動距離がずいぶん伸びてしまう」と書いているのを見つけました(
ヒール&トゥ)
要はフルブレーキング中にエンジンブレーキがどの時点から効き始めるかによって制動距離が変わっちゃうって話なのですが、特に感じていたのが最終コーナで、もともとタカスサーキットの最終コーナは奥に行くにしたがってキツくなるような形状で、コーナ進入時点での速度が正しいかどうかがその後のコーナリングに与える影響が大きい傾向があります。
そのうえ直前のストレートがわりと長いためブレーキング操作の誤差が制動距離の差として現れやすく、余計にフルブレーキングに対して高い精度が求められてしまうんですね。
僕は基本的にフルブレーキング中はABSを効かせる派なので、ブレーキペダル踏力が足りてない疑いは除外できることを考えると、こういうことが起こるのはリヤタイヤのグリップが余ってるからなんだろうなぁと思っていました。
でもよく考えたらABSが効いてるのにグリップ余ってるって変じゃない?ABSってタイヤのスリップ率を理想的な範囲にキープするためのものじゃないの?と思っていたものの、当時は無視していたのですが、今回いい機会なのでちょっと考えてみることにしました。
まずABS作動のおさらいです。
(1)ブレーキペダルを踏む
(2)4輪のうち最も回転速度の高いセンサの値をもとにして疑似車速を計算する
(3)疑似車速と各輪の回転速度をもとにして各輪のスリップ率を計算する
(4)各輪のスリップ率が一定の範囲に収まるようにブレーキ油圧を保持→減圧→保持→加圧を繰り返しながら制御する
細かいところを端折るとこんな感じでしょうか。
うーん、これだけ見てるとABS作動中にリヤタイヤのグリップが余る理由というのは思いつきませんね。
ABSを作動させるために十分なブレーキ油圧がかかっているなら、そこからエンジンブレーキが加わることで「タイヤをスリップさせる力」が増えたとしても、結局のところ適正なスリップ率になるように調整されるので結果は変わらないはずです。
力の源泉としてフットブレーキはブレーキの油圧、エンジンブレーキはシリンダ内のポンピングロスという違いはあるわけですが、どちらにしても結果的なタイヤの回転をホイールセンサが検知して、減速しすぎるようならブレーキ油圧を下げてタイヤの回転速度を上げる(スリップ率を減らす)ので、エンジンブレーキが度を超えて強力でない限り、スリップさせる要因が何かというのは関係ありません。
油圧の経路としても4チャンネルのABSは保持ソレノイドと減圧ソレノイドを各輪毎に持ってますし、フロントが減圧中かどうかはリヤの油圧には関わりませんね。
ということは…。
あれか…。
「そもそもリヤブレーキがフットブレーキだけでタイヤをロックさせるのに十分な性能を持っていない」
そんな気がしてきました。
雨道や雪道で実際にリヤが滑った場合はASB効くんでしょうけど、ドライ路面でフロントをロックさせる程度のブレーキ油圧ではそもそもリヤはロックしないんじゃないかと。
リヤタイヤのスリップ率が低いのであれば、フルブレーキング中にエンジンブレーキが追加されることで車両としての減速Gが増えるのは納得がいきます。
とはいえ僕、フルウエット路面でもずいぶんタカス走ってるんですけどね~。
ウエットだとどうだったかな…そう言えばクラッチミートのタイミングによって制動距離が変わるみたいなのは感じてなかったかもしれません。
あんまり覚えてないけど笑
スーパーフォーミュラではそういうことはないように思いますが、クラッチ切ってる最中に減速Gが落ちるというのは何故なんでしょうね。
普通に考えればブレーキ油圧が足りてない(増やせてない)、となると減圧の条件がちょっと低いのでは?と思いますが、減圧って実際にはスリップ率ではなくタイヤ回転の加速度(減速度)で設定されてることが(市販車では)一般的で、それだと疑似車速とかは関係なくて直接タイヤ回転の加速度を設定するだけなので、そこでその車の減速性能の最大値を使えば済む話だと思うのですが…。
まぁ頭のいい人たちがやってる最先端の技術はまた事情が違うのかもしれません。
レギュレーションで設定値を変えられないのかもしれませんしね。
どうでもいいけどタカスサーキットの最終コーナというのは本当にクセのあるコーナで、シフトチェンジとしては4速→3速→2速になるのですが、まず冒頭のような理由から4速→3速はなるべく早い段階でなるべく速い操作として済ませておかなきゃいけません。
さらに3速→2速が厄介で、これ、エンジン回転がシフトダウン出来るようになる地点において、ハンドル操作とブレーキペダルのリリースが既に始まってしまってるんですね。
ブレーキペダル戻しながらアクセルペダル煽るのをハンドル切ってる最中にやるのは至難の業ですよ~、出来ないことはありませんが、どうしてもいずれかの操作がおろそかになります。
当時、確かbjくんとこの問題について話してて「2速はヒールトゥしてないっすよ!」って聞いたのでマネっこさせてもらった記憶があります。
要はブレーキペダルのリリースが終わって、ペダルから足が離れた段階でアクセルペダルを煽ります。
で、そのままクラッチミートするのですが、この段階ではすでに最低速度地点付近まで来ているため、つまり大きな横Gを受けている状態でクラッチミートすることになります。
するとどうなるか、回転が合っていれば何事も起こらないのでアクセルコントロールしながらそのまま走れます。
回転が足りないとリヤタイヤがスリップしてスピンします。
最終コーナはタカスサーキットにおいて最も速度レンジの高いコーナです。
失敗すると外側のバリケードに刺さります!
と、まぁ大げさに書きましたが実際のところ時間的にもコーナのスペース的にもちょっとした余裕はあって、実際にリヤタイヤが少しくらい滑ったとしてもリカバリー出来ないほどシビアなわけじゃありません。
ただ初心者の方だと危ないので、試すならコースに慣れてからのほうがいいと思います。
そうは言ってもヒールトゥであらかじめシフトダウンしておくということが出来ないので、最初のうちは2速を使わず3速で走るようにしたほうが安心かもしれませんね。
まぁこのあたりはギアレシオにもよりますが。
というわけでちょっと脱線してしまいましたが、シフトダウンのお話でした。
タカスサーキットの最終コーナや影山コーナで「ブレーキング開始地点は毎周揃ってるはずなのに、なんだか制動距離が安定しないなぁ」と思った方は、ヒールトゥの際のクラッチミートのタイミングが揃ってるかどうか意識してみてください。
コーナ進入時点の速度が安定すると、コーナリングの練習がぐっと楽になります。