何気に普段乗っている車ですが、そこには色々と物理的なものが複雑に絡み合っているのです。さて、今日は日常で覚えておいて損は無い簡単なものを見える化してみました。なお、単位はN、ニュートンを使うより普段皆さんが感覚としてわかっているkgfを用いています。まあ、Nをgで割れば同じなんですけどね。さて、ではそんなものを50系プリウスで見える化してみました。
まず上からいきなり空気抵抗からです。これ、何に影響するかと言うと、ずばり燃費です。空気抵抗は速度の二乗に比例して大きくなり、それに必要な出力は速度の三乗に比例します。例えば時速60キロと120キロでは空気抵抗は4倍、出力は8倍必要になるのです。厳密に言うとレイノルズ数だとか、粘性などとかややこしい話が出て来るのですが、自分はそこまで利口ではないのでカットします。
セダンなんかでテールが絞られたデザインになっているのは、このレイノルズ数を下げるためですね。余談ですが、走行中の車の中からタバコの煙が車外に出ていくのは全圧=静圧+動圧=一定というベルヌーイの定理があり、この動圧が高くなると流線の剪断方向に働く静圧が低くなるからです。また、窓ガラスにへばりついた水滴がいくら速度を出しても思うように飛んでいかないのは、境界層という目には見えない流体の速度が限りなくゼロに近くなる層が車体の表面にあるからです。ジェットエンジンの空気取り入れ口が機体から離れているのは、境界層を吸い込まないようにするためです。あっ、リアスポ販売するなら速度とダウンフォースのグラフも出すべきだろ~、と思う私の様なのはただの変態です。でも、この計算式を見れば、空荷のトラックのウィング車が横風を食らうとどれだけ大きな力が作用するか、何となくわかりますよね。後述するロールモーメントが大きくなり、これが強風時における転倒の原因となるのです。なので、ウィング車とは並走しないほうが良いのはこの理由もあるからです。私はトラックと並走するのは相手が平ボディ車でも避けますけどね。
さて次は後で必要な車の運動エネルギーです。これも基本は速度の二乗に比例して大きくなります。
その次は勾配角度と走行距離から求めた位置エネルギー、厳密に言うと位置エネルギーが速度エネルギーに変換されたものなんですけどね。位置エネルギー=質量×重力加速度×高度なので。もし、この位置エネルギーが運動エネルギーに変換された場合の速度は、√(2×重力加速度×落差)、単位は秒速です。余談ですが、位置エネルギーと運動エネルギーはどちらも双方向で変換できます。
さて、その次は比熱と書いてありますが、下り坂で速度一定に保つためにブレーキを踏み続けた場合のローター温度がどれだけ上昇するかを求めたものです。実際は大気中の放熱だとか色々あるのでそこまでは上昇するとは思えませんが。
しかし、これを見ればわかる通りですが、仮にこの勾配の下り坂でトータル2キロをフットブレーキで制動すると、大気放熱を考慮しないとブレーキ温度はプラス120度上昇することになります。もし、定速ではなく、そこにさらに減速しようとするとその運動エネルギー分だけ更に温度は上昇します。これが、「長い下り坂ではエンジンブレーキを併用しろ。」と言われる理由です。それだけ下り坂、位置エネルギーって大きいのです。なので、箱根あたりでエンブレ使わずフットブレーキばかり踏んでいると、ブレーキがスカスカになり、運が良くて退避路にスキージャンプ台みたいに乗り上げるか、またはガードレール激突ってことになります。ハイブリッドならシフトBモードで回生とエンブレで制動できますので、下り坂ではバンバンBモードを多用してバッテリーに充電した方がお得です。あっ、Kはケルビン、絶対温度ですが、この場合は℃と同じだと思ってくださってOKです。
その次の運動エネルギーのみの場合は平たん路で停止した場合です。時速65キロで停止するとだいたい20K上昇します。まあ、平たん路でブレーキがフェードとかペーパーロックなんて、サーキット走行とかでしょうね。私はサーキット走行なんて怖くてできませんが・・・。
そして、最後は遠心力です。これも分かりやすいように単位はkgfです。50Rを時速65キロというのは、もう無謀に近いですが。この速度とRだと、およそ1トンの力が車の重心に作用して外に引っ張ろうとしています。つまり、単純に言うと、タイヤ1本あたり250キロ、横方向に力が作用していることになりますね。まあ、耐えるか耐えられないかは、摩擦係数×車重>遠心力が成り立っていれば、まあ何とかなるでしょう。と、言いたいところですが、さにあらず。この場合、単純に見ても車体にはロールが発生していますね。その場合のロールモーメントは遠心力×地表から重心までの高さになります。はい、同じ遠心力でも地上高が高いとこのロールモーメントは大きくなりますので、地上高の高い車はセダンなどに比べると横転のリスクは高くなります。まあ、そんなのは滅多にないでしょうけど。
と、まあ数十年前に殆ど勉強しなかった知識でザッと計算してみましたが、皆さま、安全運転を。
Posted at 2023/11/20 12:00:29 | |
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