箱根路の幻

こんばんは
飲んでますか
急に寒くなったので
飲んでます
（実際は寒暖に関係なく飲む）
佐渡の北雪かな

お玉ヶ池
小田原から箱根を
かけ上がり
芦ノ湖をめざす
バイクに乗っていた頃
何度となく走った道

伊豆や箱根、富士を
走るのが大好きだった
伊豆スカイラインを
北に向けて走ると
正面に富士
左に駿河湾
右には相模湾
壮大な景色に感動する
「日本」を手に入れたような
気になる

芦ノ湖に近づく頃
お玉ヶ池という名の池がある
いわくありげな名前
普段はチラ見して
通り過ぎるのだが
その日はバイクを停めた

見渡す
チラ見ではわからなかったが
想像より大きい
水面は静寂をたたえている

へぇ...これがお玉ヶ池か
お玉さんが
どうにかなった場所かな

やな予感までは
いかない
漠然とした不安、に近い
近代化から
取り残されたような風景
向こう岸も荒れ果てている
左手から
池を一周するよう視線を送り
右手前で止まる

人...
大きな石の上に
人がいる
釣り糸を垂れていた

池だから
釣り人くらいいるだろ...
そうなのだが
問題なのはその人の服装

着物に腰蓑（こしみの）
頭髪は後ろに結っている

浦島太郎か

そう、昔話の浦島太郎の姿
どうみても
浦島太郎にしか見えない
顔までは確認できぬが
若い男である

なぜここに
浦島太郎が...
男は釣り糸を見つめている

時空が歪む

思考が停止しそうな焦燥にかられ
急いでバイクに
またがった

あの時
何を見たのだろう

幻か...（コスプレだと信じたい）

以来
お玉ヶ池には行っていない