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2021年08月30日 イイね!

本編に最後までお付き

本編に最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。



 



 



男女の友情と結婚をテーマに作り出した作品でしたが、楽しんで頂けましたでしょうか。



後半行き詰まる場面もありましたが()どうにか最後まで書ききることが出来たのは、読者の皆様のおかげです。



 



 



本編は完結しましたが、次のページから蘭sideの番外編をお届けしていきます。



久我との関係はどうなったのか、依織でさえ知らない蘭の一面などなど……本編では書けなかった蘭のラブストーリーになりますので、ぜひ番外編にもお付き合い頂けましたら嬉しいです。私はこれまで29年の人生の中で、朱古力瘤手術 両想いというものを経験したことがない。



 



 



好きな人に、好きだと言われる。



それは、どれだけ幸せなことなのだろう。



どれだけ心を満たしてくれるものなのだろう。



 



 



好きだと言って近寄ってくる男なら、いくらでもいた。



もしかしたら好きになれるかもしれないと思い、好きでもない男と一夜を共にしたこともある。



 



 



でも、感想はいつも『こんなもんか』だった。



16歳で初めてセックスしたときでさえ、感想は『痛いだけで気持ち良くない』だった。



初めての相手は、私のことを好きな一つ年上の先輩だった。



 



 



それからはずっと相手が変わっても、セックスに快感を感じることもなければ、また次も会いたいと思うこともなかった。



 



 



そして当然、身体を重ねても何も感じなかった相手に、恋をすることもなかった。



 



 



人を好きになるって、どういう気持ちなのだろう。



高校生の頃にそんな疑問を感じていた私は、彼氏の話ばかりしてくる友人に質問した。



 



 



すると、その子は言った。



目が合うだけで、胸が高鳴るのだと。



 



 



鼻で笑う私に、その子は熱く語ってくれた。



恋をすると、その人の全てが知りたくなる。



その人のことばかり、考えてしまう。



 



 



意識なんてしなくても、自然とそうなってしまうものらしい。「蘭の前にも、きっとその内現れるよ。この人だって思えるような人」



 



 



「まぁ、そうだといいけど」



 



 



「そういえばこの間、彼氏の友達に蘭のこと紹介してほしいって言われてたんだよね。今度、会ってみない?」



 



 



「ん、いいよ」



 



 



高校生の頃は、そんな軽いノリで合コンなどの出会いの場に顔を出していた。



とりあえず、自分に好意を寄せてくる男とは手当たり次第付き合ってみた。



 



 



でも、すぐに破局を迎えてしまう。



どれも恋とは呼べないものばかりだった。



 



 



目が合っても、胸が高鳴ることはない。



キスをしても、身体を重ねても、心が満たされない。



 



 



なぜ、人を好きになることが出来ないのだろう。



誰にも言えなかったけれど、あの頃の私は結構本気で悩んでいたのだ。



 



 



結局恋を知ることはないまま高校を卒業した私は、看護の専門学校に進学した。



その専門学校は看護師の他にも、プログラミングの学科や救急救命士の学科など複数の学科があり、大勢の人と関わる機会が多かった。



 



 



もともと人見知りではないため、友人は男女問わずすぐに出来た。



そんな中、私が依織と出会ったのは専門学校に入学した年の夏。



 



 



同じクラスの友人に誘われ行った花火大会で、私は依織の存在を知った。年に一度、8月の金曜日、札幌の豊平川で打ち上げられる花火大会。



多くの人が集まるため、人混みが苦手な私は最初行くのを断ったけれど、強引な誘いを断りきれず顔を出すことにした。



 



 



集まったのは他の学科の人たちも含め、 15人くらいはいたと思う。



知らない人も何人かいる中で、私の視線は背筋を伸ばして真っ直ぐ立つ依織を捉えた。



 



 



女子にしては背が高く、横顔でもわかるぐらい綺麗な顔立ちをしている。



依織は、花火が上がるのを待ちながら空を見上げていた。



 



 



初めて見る子だった。



どこの学科の子なのだろう。



そんなことを思いながら見つめていると、空を見上げていた依織が顔を下げた瞬間、目が合った。



 



 



……



 



 



けれど、私は咄嗟にぶつかった視線を外した。



目が合ったことに驚いたからではない。



 



 



目が合った瞬間、私は大きな動揺を隠せなかった。



なぜなら、何の意識もしていないのに、勝手に胸が高鳴ってしまったからだ。



 



 



あり得ない。



今までどれだけイケメンだと評判の男に対しても、こんな胸の高鳴りを感じることはなかったのに。



 



 



しかも、相手は女だ。



これは絶対に違うと私は自分に言い聞かせ、もう一度依織に視線を向けた。すると、依織はもう私のことを見ていなかった。



隣にいる別の子と話しながら、また空を見上げている。



気付けば私は、依織に声を掛けていた。



自分の方に意識を向けさせたかったのかもしれない。



 



 



「そんなに待っても、まだ花火打ち上がらないよ」



 



 



「え……



 



 



「始まるまで、あと10分以上あるから」



 



 



「そうなんだ、全然時間見てなかった……



 



 



他の人なんて、少しも目に入らなかった。



私は自然と依織の隣に立ち、言葉を続けた。



 



 



「ねぇ、どこの学科?私たち、初めて会ったよね」



 



 



「私は視能訓練士科なの。そっちは?」



 



 



「私は看護学科。桜崎蘭です。よろしく」



 



 



「七瀬依織です」



 



 



互いに簡単に自己紹介をし、その日は二人で並んで、打ち上がる花火を見た。



花火を見ながら、時折依織と言葉を交わす。



その度に、この声、好きだなと思った。



 



 



その日を境に、私と依織の距離は一気に縮んだ。



初めて話をした日から、話が合うと思っていた。



私たちはすぐに連絡先を交換し、休日も二人で出掛けるようになっていった。



 



 



そして二人で会う回数が増すごとに、私は自分の気持ちに気付かないフリを出来なくなっていった。

Posted at 2021/08/30 16:18:19 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2021年08月30日 イイね!

「それにしても

「それにしても、さっきの発言恥ずかしくなかったの?」



 



 



「何で?」



 



 



「何でって……私のどこが好きなのかなんて、普通は恥ずかしくて友達の前で言えないでしょ」



 



 



「まぁ、普通はね。でも口にしてみたら、避孕丸 案外平気だったよ。俺、お前と結婚してメンタル強くなったのかな」



 



 



ハハッと笑いながら、何でもないことのように言い料理を手伝う甲斐。



結婚してから、甲斐は冷たくなるどころか一段と甘くなったと思うのは私の気のせいだろうか。



 



 



本当は恥ずかしさよりも、嬉しさの方が大きかった。



私の好きなところを、蘭と青柳の前で堂々と言ってくれたことが嬉しかった。



でも、いつも私は素直に嬉しいと言えない。



すぐひねくれたことばかり言ってしまう。



 



 



自分が感じたような喜びや嬉しい気持ちを、甲斐にも感じてほしい。



それが出来るのは、私だけだ。



 



 



……本当は、嬉しかった。私、ちゃんと悠里に愛されてるんだなって実感できて、恥ずかしかったけど幸せな気持ちになれた」



 



 



甲斐との付き合いの中で、自分の気持ちを真っ直ぐ相手に伝えることが何より大事だと教わった。



 



 



伝え合うことで、きっと絆は深まっていく。



この先私は、今以上に甲斐のことを好きになる。「悠里の好きなところ、私も沢山あるよ。誰に対しても平等で、他人を気遣う優しさがあるところ。皆に優しいけど、私には特別優しいところ。笑いのツボが一緒のところ。私が落ち込んだら、いつも明るく励ましてくれるところ。料理が上手で、私の家族のことも大事にしてくれるところ。私の趣味に付き合ってくれるところ。それから……



 



 



どうしよう、止まらない。



次々と頭に浮かんできてしまう。



するとその途中、突然甲斐の顔が近付き、キスで私の言葉は遮られた。



 



 



「ん……っ」



 



 



しかもそれは、唇が触れ合うだけのキスではなく、思わず吐息が漏れてしまうような濃厚なものだった。



 



 



ダメだ、頭がクラクラする。



そのとき甲斐の手が私の胸に伸びたため、私は我に返りどうにか甲斐の手を振り払った。



 



 



「ちょ、何して……



 



 



「ごめん、我慢出来なかった」



 



 



悪びれずにそう言いながら、私を愛しそうに見つめる甲斐の瞳には、私だけが映っている。



 



 



この先もずっと、この瞳に映るのは私だけでいい。



結婚してからも、独占欲の強さは変わらないようだ。



 



 



……蘭たちに見られたらどうすんのよ」



 



 



「大丈夫、ここ死角になってるから見えない」



 



 



我慢出来ないのは、私も同じだ。



見つめ合うだけで、またすぐに触れてほしくなる。リビングからは、酔って仕事の愚痴を言う蘭の声と、それをなだめる青柳の声が聞こえてくる。



 



 



甲斐と二人だけの世界に入り込んではいけないとわかっているのに、私は甲斐の体に手を伸ばしギュッと力強く抱き締めた。



 



 



「どうした?」



 



 



……甘えたくなったの」



 



 



「依織が甘えてくるなんて、珍しいな」



 



 



「ダメ?」



 



 



「なわけないじゃん」



 



 



甲斐も私の背中に手を回し、同じくらいの強さで抱き締めてくれた。



 



 



いつも甘い空気を作ってくれるのは、甲斐の方だ。



私から甘ったるいラブラブモードに入ることは滅多にない。



イチャイチャするのが嫌いなわけではない。



ただ、甘えるのが下手なだけなのだ。



 



 



「このまま押し倒したい気分」



 



 



「な、何言ってるの。そんなのダメに決まってるでしょ」



 



 



「あー……何で今日アイツら家にいるんだろ。しかも桜崎なんて、絶対今日泊まってくパターンだよな。着替えとかやたら荷物持ってきてるし」



 



 



「うん、多分ね」



 



 



甲斐のあからさまに残念そうな声が、耳をくすぐる。それでも甲斐は、蘭を追い出すようなことは絶対にしない。



私にとって蘭がかけがえのない友人だということを、知っているから。



 



 



「じゃあ、明日蘭が帰ったらイチャイチャする?」



 



 



「えっ」



 



 



……ていうか、私がしたい、です」



 



 



毎日同じ家に帰り、一緒に夕食を食べてくっついて眠る。



そんな日々を過ごしているのに、まだまだ足りないと感じてしまう。



 



 



四六時中そばにいるなんて不可能だけれど、そんな不可能なことにも甲斐が相手だと本気で憧れてしまうのだ。



 



 



「お前、絶対確信犯だろ」



 



 



「何が?」



 



 



「だからさ、そういう可愛いこと、もっと普段から言ってほしいんだけど。何で今すぐ手が出せないときに限って言うかな。前も車の中とかでさ……



 



 



「よし、出来た!おつまみ完成」



 



 



甲斐の発言をほぼ無視して、出来上がったおつまみを器に移していく。



するとリビングの方から、蘭が私と甲斐を呼ぶ声がした。



 



 



「ちょっとー!二人ともキッチンの方に隠れて何してんのー?早くつまみ持ってきてよー!」



 



 



「はいはい。今行くから……



 



 



そのとき、器を手に蘭の元へ行こうとした私を、背後から甲斐が抱き締めた。「待って。あと少しだけ」



 



 



そう言って甲斐は私の耳たぶにキスを落とし、後ろを向いた私の唇と甲斐の唇が重なった。



 



 



甲斐を好きになってからは、いつだって今が一番幸せだと胸を張って言える。



そして前よりも、私は自分のことを好きだと言えるようになった。



 



 



変わっていくことは、とても怖い。



でも、人は変わっていくから、その先に光を見出だすことが出来るのだと思う。



 



 



薬指に光る指輪を見て、私は時々泣きそうになる。



 



 



こんな日が来るとは思っていなかった。



私が何より望んでいた、穏やかで暖かな笑顔溢れる家庭。



 



 



甲斐に恋をしていなければ、きっと一生手に入れることは出来なかっただろう。



 



 



「ん……っ、ちょっ、もうダメ。キス長い!」



 



 



「依織が可愛いのが悪い」



 



 



……バカ」



 



 



甲斐に恋をしていなければ、この胸を一瞬で熱くするような甘さを知ることもなかったに違いない。



甲斐を好きになるまでは、彼がこんなに甘い人だなんて知らなかった。



 



 



私に甘い彼を見つめながら、願うことは一つだけ。



 



 



この先も、私の隣で君が笑っていますように。

Posted at 2021/08/30 16:16:00 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2021年06月07日 イイね!

タンニルとシンドルは顔を見合わせていたが

 タンニルとシンドルは顔を見合わせていたが、ウルゴラーはハンベエを油断の無い眼で牽制しつつ、立ち上がって切り窓から外の様子を窺った。
 最強の戦士と称されたその筋肉の化け物のような男が窓に立ったのとほとんど同時に、馬車が車輪の音を響かせるのが聞こえた。
 ハンベエは館の入口の横の壁に背をもたせ掛けていたが、音を聞いてさり気なく表に出た。タンニルとシンドルはテーブルをひっくり返すようにしてウルゴラーの横に来て切り窓から外を見た。
 馬車が走り去って行くのが見える。御者台には何とヒューが座って片手で馬を御していた。
「ふっはっはは。まんまとやられたな。」
 と笑い声を上げたのはハンベエ・・・・・・ではなくウルゴラーであった。
「貴様、笑っている場合か。すぐに追わなくては。」
 タンニルもシンドルも真っ青になっていた。せせら笑いを浮かべているウルゴラーに舌打ちしたが、構っている余裕は無くそのまま館から飛び出した。
 館の外ではハンベエが少し離れて腕組みをしたまま立っている。飛び出して来た二人をチラリと目の端で見たが、別に手を出そうとする気配は無かった。
 タンニルとシンドルは遠巻きにハンベエを窺いながら、馬車の走り去った方向に足を横に運んでから、馬車を追って駆けだして行った。
 二人から少し遅れて、ウルゴラーがのっそりと館から出て来た。剣を手に持っているが、まだ鞘に収まったままであった。
「面白い見世物だった。利口ぶっていたナーザレフの間抜け振りに大笑いだ。」
 とウルゴラーは犬歯を剥き出した笑い顔でハンベエに語り掛けた。
「気付いていたのか?」
 とハンベエは抑揚のない声音で問うた。相変わらずぼんやりした顔付きだ。
「いやいや、我も騙された。だが、我にはナーザレフがどうなろうとあまり興味は無い。それよりも、このまま帰れるとは思っていないだろう。貴様は強そうだ。昨日のヒューゴって奴も中々だったが、貴様は更に歯応えが有りそうだ。ソンレーロのお陰で手に入れた力を試すには打って付けの相手のようだ。」
 ウルゴラーはそう言うと、剣の鞘を払って地に横たえた。
「やっぱり、そうなるよなあ。あああ、俺は置いてきぼりにされた可哀想な身の上なんだが、同情してくれないか。」
 ハンベエはトボけたため息を吐(つ)きながら、腕組みした手を降ろす。その一方で、
(ソンレーロ? 誰だそりゃ。)
 と思っていた。「ああ、同情するとも。我の手に掛かってここで果てるのだからな。クククク。」
 とウルゴラーが余裕たっぷり嫌味な顔で笑い声を上げた瞬間には、ハンベエは身を翻してタンニル達が駆けていった方に走り出していた。
「待てっ、逃げるのか。」
 相手の意外な行動にウルゴラーは慌ててハンベエを追った。
 意表を突いて駆け出したお陰で、ハンベエはウルゴラーから離れる事二十メートルは先を走っていた。森の小道を二人は駆け抜けて行った。森の木々に枝付く葉っぱを揺らし、二つの足音だけが響き渡っていた。
 しかし、ハンベエともあろう者がこのまま逃げ出してしまうのであろうか。 ハンベエは走る。ウルゴラーは追う。まさか逃げ出すなどと思いも寄らなかったウルゴラーの動きは焦りの為に若干鈍い。オマケに長い抜き身が走るのには少々邪魔だ。そのせいで、ハンベエとの距離が少しずつ開いて行く。
 前を走るハンベエは背後から追ってくるウルゴラーの気配がかなり遠ざかったと感じると、今度は道縁の林の中に駆け入った。木々の間を抜け更に走る。後を行くウルゴラーはチッと舌打ちを漏らした。
 ウルゴラーはハンベエが辿った跡を追って林の中に入ったが、もうハンベエの姿は見えない。ただ、気配のみが感じられる。
「出て来い、ハンベエ。まさか本当に逃げるつもりではあるまい。」
 とウルゴラーが怒鳴った途端に木々の隙間を縫って手裏剣が飛んで来た。キンッ、と剣で無造作に弾くと、手裏剣の飛んで来た方向遙か向こうにハンベエの姿が見えた。しかし、それも一瞬、すぐにその姿は木陰に消える。
「むっ。小細工を。」
Posted at 2021/06/07 23:19:16 | コメント(0) | トラックバック(0) | ショッピング
2021年06月06日 イイね!

クービルは笑みを浮かべて答えた

クービルは笑みを浮かべて答えた。「何を青臭い事を。そもそも、サンテーラ、チャードと共にゲッソリナにいた時にエレナを抹殺しておけば、こんな憂き目を見る事も無かったのです。『汚れの乙女』を討ち滅ぼすのは神の御心、神の子であるなら役割を果たしなさい。」「お断りしたら、どうされます。」「破門です。そうなれば、神は貴方を地獄に招くでしょう。」ナーザレフは暗い狂気を孕んだ眼差しをクービルに向けて言い放った。 それに対し、クービルは微笑を絶やさぬまま見返している。 一瞬、冷水を浴びたようにナーザレフはブルッと身を震わせ、一歩下がった。
それにつけても、ボルマンスクを出撃した時は貴族軍も併せて十七万の威容を誇った軍勢が今や一万である。風を受けて発せられる草木のざわめきに感じる物悲しさも一入(ひとしお)であった。「教祖の言いたい事は分かりますが、私は武人。暗殺などと言う手段に訴えるくらいなら、戦場で討ち死にした方がましですよ。」イザベラは林の中に潜み続け、クービルの気配が消えるのを待って街道に戻った。
ふう、ハンベエを連れて来たかったところだけど、総司令官じゃ無理か。」 と珍しく首筋に汗を滲ませていた。このところ、危ない橋が目白押しな彼女である。 イザベラを不穏な曲者と認知しながらもクービルは西に向かって急ぎ、コノサテキ原附近で、太子軍を追って東進中のボーン率いるサイレント・キッチン戦闘部隊と接触した。部隊の先頭に居たのはボーンではなく副官であったが、クービルを見知っていた。「これは第七師団長閣下。」と副官は顔色を変えて馬を降りた。太子本軍と共にボルマンスクの向かっているはずの師団長が鎧も脱いだ平服で、しかも馬にも乗らずにやって来たのだ。素破っ、本軍に変事出来(しゅったい)かと緊張の面持ちになった。慌てるでない。殿下達は無事コデコトマル平原を通過し、ボルマンスクに向かわれている。
私は特別な任務を帯びて、戻って参った。時に、ボーン殿は何処だ。」 副官の表情からその動揺の理由を察したクービルは穏やかに言った。「殿下は御無事であられますか。部隊長は最後尾にいます。」 副官は安堵して答えた。「追撃の危険に曝されながら最後尾か。あの御仁はやはり頼りになるな。では、会いに参る。」「第七師団長閣下のお通りだ。道を空けよ。」 副官の命令に後続の兵士達は気を付けして道を譲った。クービルは正面を向いたまま足早に進んで行く。 副官の言葉通り、ボーンは部隊の最後尾でゆったりと馬を打たせていた。 クービルに気付いても副官のような狼狽えた様子は見せなかった。しかし、怪訝な顔付きにはなった。「何故戻って来た。しかもその格好は?」 と尋ねるボーンに対し、クービルは無言で左右に眼をやった。ボーンは馬を降りて兵士達から少し離れた。クービルもそれに続く「王女軍の将領達を斬りに行く。敵は追撃して来ているか?」小声でクービルが話し掛けた。「ああ、一昨日ベッツギ川西岸に姿を現した。三万以上の軍勢だ。騎馬隊もいる。こっちを舐めてるの他の思惑が有るのか、急追はせず、俺達を後からゆっくりと追ってくる腹のようだ。しかし、クービル。一人で行くのか。」ボーンも小声である。「独りなら独りの戦いようがある。」
Posted at 2021/06/06 03:06:10 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2021年05月21日 イイね!

イザベラから今日コデコ

イザベラから今日コデコトマル平原で貴族達と太子の使者が交わした一部始終を聞いたモルフィネスはしばらく思案していたが、「グズグズしてないで、とっとと引き返すよ。これ以上危ない橋を渡る意味は無いだろう。」とイザベラに言われ、「仕方ない。勝てる見込みの無い賽を無理には振らない約束だった。」と呟いて元の道を戻り始めた。イザベラも加わって一行五人がモーセンビキ村に馬の首を向けた。一夜明けたモーセンビキ村では、ハンベエが早朝の鍛錬を終えて行水を使っていた。 モーセンビキ村には生憎入浴施設即ちお風呂は無く、村人は皆行水で事を足していた。モーセンビキ村にやって来て九日目になるがボチボチ風呂が恋しくて仕様がない。(兵隊共に手伝わせて、ここにも一風呂こしらえるかな。)とかなり真剣に考え込んでいた。 いっそ太子の派遣部隊を、とチラと思ったが、さすがのイザベラも一千人の部隊をどうこうするのは無理である。太子側の用心が功を奏した形であった。 moomoo app その面白からぬムシャクシャの気分のまま、コデコトマル平原に向かっているであろうモルフィネス達を止めに西に走って来ていたのだった。 もう合戦も間近に迫ろうという気配の最中、何処のお気楽野郎だ、今は困苦欠乏に堪え、ひたすら勝利を目指すべきだろうという声も聞こえてきそうだが、この若者に言わせれば、唯々我武者羅に頑張ったって勝つとは限らない。いや、頑張りすぎて身を損なう事こそ愚の骨頂であった。それにタゴロロームで風呂の設置を始めて以来、何所へ行っても風呂を造って文句を言われた事が無い。みんな風呂の良さはすぐ分かるんだ、何と言っても良いもんなんだからな。まだまだ風呂の恩恵を受けてない人間がこの国には大勢居る。機会有る毎に広めなくては、と使命感まで感じる時さえあった。風呂に浸かっている時のえも言われぬ心地良さが身に思い出されて、禁断症状寸前・・・・・・とまでは行かないが、(風呂入りてえ。)と叫びたくなっていた。そこへイザベラの一行が帰ってきた。途中野宿で一夜を明かし、今ようやくモーセンビキ村に着いたのだった。「ハンベエ、貴族軍への寝返り交渉にコデコトマル平原に急いだが、徒労に終わった。詳しくはイザベラとヒューゴから聞いてくれ。私はこのままベッツギ川まで引き返す。」とモルフィネスは勇んで向かった反動か、極めて素っ気ない一言を残して通り過ぎて行った。 イザベラもまだ不機嫌なままの様子だった。「取り敢えず、一息入れて話を聞かせてもらえるか。」 ハンベエはイザベラとヒューゴを後ろに続かせて、野営地の自分の天幕まで招いた。 イザベラは投げやりな調子で一部始終を語った。「何だ、貴族の連中は大廻りでパタンパに向かうんだろう。ほとんど戦列離脱じゃないか。上出来だよ、イザベラ。感謝だぜ。」 とハンベエは笑った。「そうは言うけどさ、ハンベエ。アタシだって貴族軍と太子軍が鉾を交えるところまでは期待してなかったけど、もうちょっとさ、こう、いがみ合うのを期待していたのにさ。」「イザベラもモルフィネスも物事に期待し過ぎじゃないのか。俺にはかなり嬉しい結果なんだがなあ。もう一度言わせてくれ。イザベラ、有難う。大感謝だぜ。」 ハンベエにこう出られて、イザベラも少し不機嫌を収めた。しかし、貴族軍は迂回してゲッソリナへ向かうのだろう。こっちに危険は無いのか。」ヒューゴが疑問を呈した。「南にグルッと回る道だぜ。しかも狭っ苦しい道だし、行軍中食糧も補給しなければならない。五万の大軍が反って仇で、貴族軍の行軍は相当苦労だぜ。ゲッソリナに辿り着けるのはいつの日やらって事になるさ。
Posted at 2021/05/21 01:09:57 | コメント(0) | トラックバック(0) | 音楽/映画/テレビ

プロフィール

「本編に最後までお付き http://cvw.jp/b/3015665/45418110/
何シテル?   08/30 16:18
jennifer92です。よろしくお願いします。
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