ハンベエという男は殺戮を楽しむ心を持っているのです。危険極まりない男ですよ。その後も、外敵との戦いに我が方が採った作戦にあらぬ逆恨みをし、第5連隊の兵士達を扇動して反乱をけしかける始末。どのようにして、姫に取り入ったのかは知れませんが、あれは明らかに邪悪な人間です。姫に取り入る一方、宰相ラシャレーの息もかかっているようですね。ともかくハンベエという男は胡散臭い喰わせ者です。しかも、今日は我が守備軍の兵士を二百人も殺戮してハナハナ山へ第5連隊を引きつれて逃げて行きました。」 バンケルクは、そもそもハンベエ抹殺の為に自分から襲撃させた事は隠してぬけぬけと言った。エレナはバンケルク周大福教育集團價值の話に得心がいかない表情をしていたが、ロキから聞いた第5連隊の怒りや向こう見ずなハンベエの性格から、ハンベエの方から手を出して、大暴れをした可能性は有るかも知れないと思った。「将軍。私の聞いているところでは、アルハインド族との戦いで、ハンベエさんや第5連隊の兵士達が怒りを持つ理由は十分にあると思いますが。将軍は第5連隊兵士達を始めから見殺しにするような作戦を行ったと聞いています。」「姫、確かに第5連隊にとっては厳しい条件での戦いになった事は否定しません。しかし、戦争なのです。国を守るためには犠牲も必要なのです。」「しかし、味方を騙し討ちにするような方法は許されるべきではないようでしょう。」「味方を騙し討ち、姫、どういう意味ですか?」「何でも、第5連隊を前線に配置したまま、撤退要請にも応じず、敵の蹂躙するままに任せたと聞いています。」「撤退要請に応じなかった。・・・姫、それは誤解です。我々は第5連隊に撤退命令を出したのですが、第5連隊側の不手際で、連隊首脳に命令が伝わらなかったのです。」「伝わらなかった。そうだったのですか?」「はい、そのせいで第5連隊長のコーデリアスに逆恨みをされ、弱っていたのですが、そのうちに誤解も解けるであろうと思っていた矢先にコーデリアスが自殺してしまったのです。全く困った話ですよ。」死人に口無しとは良く言ったもの。タゴロローム要塞司令部への帰還報告の時の、バンケルクとコーデリアスのやり取りを見れば、バンケルクの言に信憑性が全く無い事は一目瞭然なのだが、エレナはそのやり取りまでは知らなかったようだ。「誤解だったのですか。では、別の話をしましょう。将軍はこのタゴゴロームの売春宿から法外な賄賂(まいない)を受け、蓄財に励んでいると聞きましたが、本当の話ですか?」真っ直ぐに瞳を見つめてくるエレナのこの問いにバンケルクは、ちょっと困ったような顔をしてから答えた。「恥ずかしながら、それは本当の話です。」「何故?バンケルク将軍ともあろう方がそのような汚い金集めを・・・。」「それは、姫、あなたのためなのです。」「私のため?」「そうです。手紙にも書きましたが、国王陛下が亡くなられた後にはゴロデリア王国は必ず内乱になります。ステルポイジャンとラシャレーの対立はもう収まる事はありません。それぞれ、フィルハンドラ殿下、ゴルゾーラ殿下を押し立てて、王位を争わせるでしょう。姫の立場は極めて危険です。私は、姫をお守りするつもりで軍資金を蓄えたのです。いざというとき、金が無ければ軍勢は集めれませんからね。」「私は王位など興味ありません。王位など、兄ゴルゾーラにせよ、弟フィルハンドラにせよ、皆が相応しいと思う者がなれば良いではないですか。」「私は姫こそ王位に相応しいと思います。」「何をおっしゃられます。将軍、私は女です。国王などになりたいなどと思った事もありません。順当に太子である兄が父の後を継げば良いのです。