弾けた魔力は小さな光に変化し、数多の光は瞬く間に小さな紙飛行機に姿を変える。そして膨大な量の紙飛行機が、一つ一つ、交ざったりすることもなく各新入生の手の中に滑り降りた。思わず拍手したくな
安老服務た。いやいや、洒落たことをするものだ。俺の許にも辿り着いた紙飛行機を開けば、簡潔に「1-B」と書かれている。「これにて入学式を終了致します。新入生は寮の説明を含めた諸注意がありますので、自分のクラスへ移動して下さい」この声でバラバラと、着席していた生徒達が立ち上がる。新入生は司会のアナウンス通り自分のクラスへ向かい始め、上級生の授業は明日からのため、そのまま去って行った。さして早くもなく遅くもないタイミングで俺も席を立つ。紙飛行機の折り跡が残る長方形の紙を、意味もなくひらひらと振った。無闇矢鱈と広い学園だが、敷地に足を踏み入れた時点で地理は把握してあるので迷うことはない。自分の居る場所の空間把握は戦いの第一。地の理があるかないかで、戦法には多大な差が出る。だからこそこの探査は、俺にとっては当然だった。首を傾げながらのろのろと進む周囲の生徒たちを尻目に、学園案内も見ずに歩き出す。「わっ!?」だから、案内図を見ながら歩いていった生徒に思い切りぶつかられ盛大によろけた男子生徒が丁度俺の目の前に倒れこんだのは、まるで狙ったようでも偶然だった。此処でさくっと避けるほど、俺も人でなしではない。「大丈夫か?」倒れ掛けた男子生徒を片腕で支えてやり、問い掛ける。男子生徒は慌てて傾いた体を直し、少々大袈裟な程勢い良く頷いた。「ごっ、御免!大丈夫、ありがとう!」「どーいたしまして」お礼の熱さに対して適当な返事だったが、男子生徒は気にしない。倒れ掛けた際にページのズレた学園案内を直しながら、人懐っこい笑顔をその顔に浮かべた。「僕はアルス。アルス・アコルデ。君、クラスどこ?」滑らかな挨拶だった。うん多分、こいつ友達多いタイプだ。俺はあえて名乗らずに、問いにだけ答える。「1-B。そっちは?」「あ、惜しい。僕はCクラス」「へぇ、隣だな」話しながら、流れに乗って歩き出す。このまま名乗らずに別れたら、後日尋ねに来るだろうか――――そんな、実験めいたことを思う。そしてタイミングの神は俺に味方した。「アルス!何クラス!?」
Posted at 2019/03/15 22:26:01 | |
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