
「ナショナル」こと、松下電器産業株式会社(現社名:パナソニック株式会社)が、「子供たちに、科学に対する興味を持たせたい」との方針で、破格の予算を投じて、単独スポンサーをつとめた。オープニング映像では、ナショナルの電飾広告塔をバックに、空を飛ぶ「ナショナルキッド」の姿が使われるほか、番組提供の「松下電器」の文字と、ナショナルの広告塔が重ねられ、また劇中でナショナルキッドが使用する、エロルヤ光線銃がナショナルの懐中電灯と同じ形であるなど、かなり徹底したタイアップとマーチャンダイジングが行われた。
タイトルロゴも俗に「ナショ文字」と呼ばれる、当時の松下のロゴと同じ書体だったが、通常松下の単独スポンサー番組のオープニングで使われていた「 明るいナショナル 」は、同番組では使用されていない。当初番組題名も、ナショナルが1954年(昭和29年)に発売開始した、「ハイパー乾電池」に因んで、『ハイパーキッド』のタイトルで企画されていた。
特撮面では、通常のブルーバックではなく、赤いホリゾントを使った、白黒フィルム用の合成トラベリング・マットの手法が使われ、「ワンカットで宙に浮き、飛んでいくインカ金星人」や、多彩なメカニック、ミニチュア特撮の描写など、当時のテレビ特撮の、レベルを超えた本格的な特撮が画面を彩った。円盤の背景で登場する、国会議事堂や世界各国の建造物は、写真を引き伸ばして板に張り付ける書割の手法で撮影された。当時、日米安全保障条約を巡って国会が紛糾し、国会議事堂周辺では、連日、デモが行われていたため、国会議事堂の撮影には苦労したという。
制作には海外展開も見据えており、ブラジルでは1960年代から軍事政権によって、全てのヒーロー特撮が放送禁止されるまで放送され、現在でも知名度は高く、日本に先行してDVDが販売されている。
特撮専門誌である季刊「宇宙船」第四号(1980)では、小池淳等制作関係者に詳細なインタビューを行い、舞台裏について紹介している。松下電器では、視聴者である子どもたちへの、科学の啓蒙に期待していたため、ドラマの内容には不満だったという。メイン監督をつとめた小池淳は、CSの特別番組の中で池田憲章よりインタビューを受けた際にも、「制作を請け負ったのが東映だったために、科学的でないドラマになった」と語っている。第一部の視聴率は振るわず、第二部では視聴年齢を下げ、「幼稚園の児童でも分る内容」をめざしたが、スポンサーから視聴率不振を理由に第二部での打ち切りを通告され、放映回数も短縮された。ところが第二部に入って視聴率も好転したため、出演俳優を一部交代し、第三部を制作することになった。本来は第三部で終了する予定だったが、次回作の「 少年ケニヤ 」の、アフリカロケが遅れたため、第三部の後半五回分に急遽制作した四回分を付け足して第四部として放映した。第三部では原作として、戦前、少年向けの科学小説で人気を集めた海野十三が突然、クレジットされている。実際には「地底王国」の設定の際に、一部の作品を参考にした程度だという。
Posted at 2021/01/20 16:39:04 | |
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