
伝説の空手家・大山倍達の半生を描いた伝記的作品。「 寸止め 」での、組手を主体とする、日本の伝統的空手界に異を唱え、邪道と謗りを受けながらも、実際に打撃を当てる独自の空手(フルコンタクト空手)を提唱、国内や海外を転戦する姿を追った「超人追求編」「無限血闘編」「悲願熱涙編」(つのだじろう・画)、大山道場から、極真会館への刷新と世界進出や、主催する大会での場や他の格闘技と戦う、高弟たちの活躍を描いた「昭和武蔵編」「空手巌流島編」「世界制覇編」(影丸譲也・画)の六部構成となっている。タイトルには「激闘! 大山倍達伝」という副題も付く。
大山倍達を主人公に、世界中を転々としながら各地の強豪と戦う。山篭り以後は、一貫して、背中まで伸びた長髪の姿で描かれていた。極真会館を設立した後半部からは、当時の高弟である、大山茂・大山泰彦・中村忠・芦原英幸・山崎照朝・添野義二などにシフトしていく。これら高弟の一人である芦原には、大山道場の師範代・安田英治の武勇伝や、安田のあだ名「ケンカ十段」の人物像を加え、準主人公として梶原がいる。芦原は、大山倍達と人気を二分するほどになった。このあだ名と安田が、実際に浅草でヤクザ15人KO事件をした事実を、梶原は芦原に流用したと後に劇画『男の星座』で発表している。
「実話を基にしたノンフィクション作品」という触れ込みであり、物語冒頭で「これは事実談であり、この男は実在する」と宣言。物語内でも、例えば大山倍達が牛と闘うシーンで、「ただの漫画なら迫力溢れる描写で牛がすぐに男に突進するだろうが、本当の牛はいきなりそんな行動には出ない」、またアメリカ行きの飛行機内で倍達が飛行機酔いに悩まされるシーンで、「作り話なら颯爽とした主人公が飛行機に酔ったりしない」等の文章でたびたび「事実である」事を強調しているが、真樹日佐夫は、「内容の九割以上は梶原の創作だった」、松井章圭は「実際に劇画のような戦い方や人柄は山崎照朝先輩のみで、本当に劇画みたいな組手をしている山崎先輩は格好良かった」などと証言している。実際、雲井代悟のモデルになった柔道家(世界選手権での優勝経験のある棟田康幸の父、棟田利幸)は、芦原英幸と戦っていない。逆に、芦原英幸とは親交が深かった[ただし、試合形式の稽古をした事はあり、それによって芦原はパワーの重要性を認識する事になる)。その一方で家高康彦は「同劇画の3年前、1968年に出版された大山著の『世界ケンカ旅行』(ベストセラーズ新書)が基になっている」と指摘している。
Posted at 2021/03/03 17:23:29 | |
トラックバック(0) | 趣味