私が以前配属されていた部署で 建設機械の販売を行っていた頃の話
個人の方からの電話で 中古の小型油圧ショベルが欲しいとの問合せが
使用用途が農作業ということでそれに見合う機種を選定し
お聞きした住所を頼りに伺う事になった
場所は中国山地の真っ只中 県境付近の山深い山村
そこからさらに山道を奥深く入っていくようだ
ゼンリン地図上ではもはや道路は一本の線で略されている
なかなか険しそうだな
畑仕事中の農夫に怪訝な視線を浴びせられながら
その地図を頼りに車を走らせて行くと
案の定道はどんどん狭くなっていく
生い茂る木々で昼でも暗く 車一台通るのがやっとな山道
点在する倒木や落石の跡から しばらく車の進入が無い事がうかがい知れる
もう最後に民家を見てから相当な距離を走っているが…
道を間違えたか…?
半信半疑で車を走らせる私の目の前に
それは突然姿を現した
こ、ここ?
地図が指し示す場所はおそらくここだ
屋根は傾き 窓硝子は殆ど割れ 玄関だったと思わしき引戸は崩壊している
完全なる廃墟
人が離れて相当な期間が経っている事は一目瞭然
嘘だろ…
周りを見渡すと電気の引き込みがなされていないようだ
当然生活臭など微塵も感じさせない
文明社会から完全に孤立した異空間
近付くことすらためらわれる
やられた… 悪戯か
そう思った時
ある物に目がとまった
玄関にかろうじてぶら下がっている表札らしき物
恐る恐る近づいてみると 長年の風雨にさらされ朽ちてはいるが
なんとか文字は確認出来る
そこには
あの電話の主が名のった名前が刻まれている
指定された家はやはりここで間違いないのだ
…悪戯にしちゃ手が込んでるな
電話の主は「知り合いに紹介された」と私を名指しでかけてきた
そして仕事を口実にまんまと私を人里離れた山中に誘い出したのだ
なぜ私だったのか?
なぜここへ導いたのか?
そしていったい何者なのか?
圧倒的な異空間を目の前にし 得体の知れない恐怖が私を襲う
携帯は当然の如く
「圏外」
今私がこの場所にいる事を知る者は誰もいない…
一刻も早くここを離れねば
動物的本能が私を急かし出す
車の向きを変えるため何度も切り返しをしている時
チラリと目をやった廃墟に
何かの気配を感じた
気のせいか?
よせばいいのに私は車を降り 何かに引寄せられるかのように
もう一度廃墟へと歩を進める
普通なら絶対そんなことはしない
しかしその時だけは違っていた
心情を何と説明すればいいのか…
恐怖心があるレベルを越えると
好奇心へ変わるのかも知れない
好奇心が猫の命取り
つまりはそういう事だ
「こんにちは…」
戸口から中に声をかけてみる
気味が悪いほどの静寂を破る私の声
一歩足を建物の中に踏み込んでみると 建物内部は想像通りの荒れ果てよう
床は所々抜け落ち あらゆる所から外光が射し込んでいる
異常なほど乾いた空気感
「生」を感じさせるものはなに一つなく 当然返事があるわけもない
どうやら気のせいだったようだ
ならば長居は無用と外へ出た瞬間
私は凍りついた
私の車の横に
人の形をした生き物が立っているのだ
頭の先から足の先まで全身を包む鈍く光る白色の表皮
頭部は大きく 目と思われる部分は黒いスクリーン状の物でで覆われている
手には
鎌のような物を持ち こちらに向かって一直線に歩いてくるではないか
え! 宇宙人!?
オカルトの類いかと思ってたのに…
そっちだったかぁ!
そっちの方の心の準備は
何も出来てねぇってば!
※さてさて ここまで読んできて
「あれれれ…;」
と思ってる方も多数いらっしゃると思います
はい そうです
ここから先はいつもの通りのグダグダです
ご注意下さい
「○○さんです?」
え!日本語!?
地球の共通語は英語だというのに この異星人ときたら日本語か!
日本語もマスターせず国外からやって来て商売する
不埒な外人ビジネスマンも多いというのに…
地球外生命体に気安く名前を呼ばれる所以はないが
この異星人 なかなか見上げた心がけだ
やるじゃねぇか♪
「いい物件持ってきてくれた?」
…大気圏外に飛んでけるような物件はないですけどね;
「ん? 中古物件持ってきてくれたんでしょ?」
養蜂用の防護スーツを脱ぎながら語るその「異星人」
中から出てきたのは
60歳前後の人の良さそうな地球人
広がっていく安堵感と甘い蜂蜜の香り
話を聞くと…
退職後、山で養蜂と果樹栽培をしようと思った
山を切り開くために油圧ショベルが必要となり知り合いの土建屋社長に相談したところ
それならばと私を紹介された
廃墟はもともと生家で 今は里に移ったため空き家となっている
山仕事の休憩小屋としてこれから整備するのだとか…
あ―― そう
宇宙人登場の件は大袈裟にはしゃいでみましたが
廃墟の部分と手にしていた鎌にはマジでビビったんだからね!
で、肝心の商談は…
「他社の見積りが安いんでそっちにするわ」
……;
ははぁ~ん
私と同じようにビビった同業他社がいたのね (ビビってはないか)
な~るほ~ど~
まぁ それはいいけど…
もちろんそっちの物件は…
宇宙まで飛んで行けるんでしょ?
週末の貴重なお時間を
しょうもない話にお付き合いさせてもうしわけないです… はい…
最後まで読んで下さった方々…
Posted at 2013/11/22 23:10:13 | |
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