三人で再度水へ入る。
自宅の敷地を出て向かいの家との間の道路へ出た。
彼ら二人ともここでお別れだ。
『気をつけて~!』の言葉を互いにかけ、東へ向かう学生さんとOさんを見送る。
彼らが向かう方向は少しずつ浅くなっているとあとで聞いた。
10mほど進んで行くの見届けながら何事もないことを祈った。
道路をはさんだ隣の家の二階から声がする。
午前中、同じように物干し竿の旗を振っていた家の二階のベランダからだ。
『大丈夫ですか?』
『とりあえず大丈夫です』
少しの間色々話し、これから母親がいる矢二中へ避難することを使えると、高齢の方が避難しているが心臓病の薬が必要だとのことだ。
さっそくメモを取り、矢二中に着いたらそれを伝えることを約束しAさんのアパートへ向かう。
来る途中よりもさらに慎重に公園を乗り越えてゆくが、水の底は多くの瓦礫があるので時間はかかった。
やっとAさんのアパートの下へ来た。
水の流れはないものの浮いているゴミが一階の階段下にたまっている。
階段を二階へ上がる。
待機していたAさんに忘れ物は無いかと確認し、荷物を一つ持ってあげて階段を下った。
わたしはさっきまで水に入っていたので少しは慣れてきていたが、Aさんは足を浸すとたん『冷たい・・』と震える。
ここは水位がまだ膝上くらいだが道路に向かえば徐々に深くなっていくだろう。
Oさんの水没した車を右に見ながら、慎重に足元を探り二人で丸太やゴミの間を進んでゆく。
あたりは妙に静かで我々の水をかき分ける音だけしか聞こえない・・・
やはり道路まで来ると腿の半分までの水位だった。
Aさんは股下まで水に浸かっている。
母親と避難させたSさんの家の入り口まで来た。
少し敷地は高くなっているのでSさんの庭を通って行くことにする。
Aさんのアパートからは見えなかったが、Sさんの庭には長い丸太が何本も浮いていた。
家の中に入っている丸太も数本確認できる。
建物正面から見て左の庭の奥の生垣まで来たが、この先は急に深くなっている・・・・・
・・・考えが甘かったようだ・・・
残念だが引き返す。
そのときだった。
自分の携帯電話が鳴り響く!!!
両手に抱えていた荷物を片手に持ち替え、上着の内ポケットからやっと携帯を取り出す。
『兄貴大丈夫か!?!?!?』
電話の向こうは埼玉に住んでいる下の弟だ。
『おおーー!大丈夫だ!!!心配ないぞ!!!』
『お母さんは??????』
『大丈夫、中学校に避難してるよ』
『ほんとに良かった!安心した!』
関東も大きな揺れだったが復旧は早かったようで、昨夜からのテレビの報道でこちらの状況を知り夜も眠れず心配していたそうだ。
昨日から何回かけても携帯電話はつながらないし、家の電話も応答がない。
今日になって公衆電話からなら携帯につながるということを聞き、行列に並んでやっとかけることができたのだそうだ。
一緒にいた弟の奥さんも電話に出て泣きながら『良かった!』を繰り返していた。
わたしも弟たちの声を聞いて安心した。
あとでなんとか連絡すると言って携帯を閉じた。
この後電波の状態は悪くなる一方だった・・・
Aさんを待たせたままなので再度矢二中へ向かう。
Sさんの庭を出ると水位は股下すれすれまであった。
水の底を足で探りながら進むが、徐々に深くなってきている。
歩道の縁石に乗りながら上がっては下がるの繰り返しで前に進む。
Aさんはすぐ後ろをついてくるので頻繁に後ろを確認し励ましながらの強行だった。
踏み切りの前の道路まで来るとすでに水位は腰まで達している。
Aさんも同じでつま先立ちで歩いているとのことだ。
たいした距離でもないのだが転ばないように注意しながら二人でやっとここまで来た。
踏み切りの手前はこのあたりでも低い土地だというのがこの時わかった。
一旦高くなっている踏み切りの線路まで来て休憩する。
線路は水がかぶっているがくるぶしくらいなのでやや一息つけたようだ。
天気は良いのでそう寒くは感じない。
そう長く時間もかけてはいられないので、すぐそこに見える矢二中の校舎を目指す。
踏切からは股下5cmくらいだろうか・・・
さっきよりはましだ・・・
距離としては100mも無いがここでもやはり丸太等の浮遊物をかき分け進む。
水没した車が2台道路をほぼふさいでいる・・・
その間を通り抜けなんとか矢二中の東の武道館の前に来た。
矢二中の浸水は2mほどだろうか・・・
悲惨な光景だった。
どこかで見たことのある船が武道館の入り口にある。
昨日目の前を通過していった小型のクルーザーだった・・・・・
どうやって撤去するのだろう?などと思いながら、それの対面にある校舎の入り口へ向かった。
水位はここで膝くらいまである。
『もう少しだ!!!』
Aさんと扉の前に来る。
重いドアは水と泥の抵抗で非常に開きにくい状態になっている。
少しずつ開き中へ入ることができる隙間ができた。
足の下は段差があるのでAさんに注意を促しながら校舎に入る。
一階の状況は惨たんたるものだった。
色んな学校の備品が泥に沈んでいる・・・・・
とりあえずここまで来れば安心だ。
冷えた足と体を持ち上げて二階への階段をAさんと進む・・・・・
『母とSさんはどこにいるのだろうか・・・?』
・・・・・階段は泥であふれていた。。。。。
Posted at 2011/06/24 20:12:25 | |
東日本大震災 | 日記