
みんカラを通してE30M3-EVO3のDMEを修理して欲しいと依頼があったのでショップを介して貰い、受け取ったDMEを調査すると、アイドルコントロールバルブ(ICV)制御回路のトランジスタが壊れている事が分かったのでこれを交換し、ショップ経由でオーナー様へ返却しました。
後日、オーナー様よりアイドリングが安定しアイドルアップをするようになったと共にパワーアップしたように感じると連絡がありました。
ICVはパワーには関係しないと思っていたので、ICVの動きが気になり調査してみました。
【測定風景】
エンジンシミュレータ、予備のDME(2.3L、モニタ機能付き)及びDMEモニターを接続し、ICV制御回路の波形をオシロスコープで測定しました。
【パラメータ設定】
DMEモニターの数値を見ながら、パラメータ(電源電圧、エアーフローメータ、エンジン温度、吸気温度、大気圧及び回転数)を設定しました。
また、エンジンシミュレータは温度センサーや大気圧センサーをボリュームで模擬しており、校正もしていないので値は目安となります。
なお、O2センサはデューティーが約50%になるように設定しました。
【ICV制御回路(イメージ)】
【エンジン温度が低温時】
エンジン温度を低温(-20℃程度)に設定した時のICV制御回路の波形を示します。
上側(CH2)は33ピンで下側(CH1)は34ピンの波形になります。
【エンジン温度が高温時】
エンジン温度を高温(100℃以上)に設定した時のICV制御回路の波形を示します。
接続は低温時と同じです。
【アイドルコントロールバルブ開閉率】
上図から、1周期(T-b)が約13msであることが分かります。
(T-a)/(T-b)をデューティーとし、エンジン温度と回転数を変えた時の値をグラフ化しました。
なお、実際のICVは10×15mm程度の金属が上下(左右)して空気の通り道を全開・全閉しているので、デューティーを開閉率として補正しました。
【考察】
ICV制御回路の故障では、トランジスタ(T560)に過電流が流れて異常発熱したり、34ピンからT560のコレクタ間のプリントパターンが焼損したりします。
なお、件数は少ないのですが、トランジスタがオープンモードで故障した場合は、電流は流れず発熱もありません。
いずれにしても、ICV内部の金属がある位置(開度)で固定されるので、アイドリング調整やアイドルアップが出来なくなります。
ICV制御回路が正常な場合は、高回転(約3,500回転以上)になるとより多くの空気をICV経由で取り込んでいることが、グラフから分かります。
ICV制御回路が異常な場合は、固定されている開度にもよりますが高回転になっても、取り入れる空気が増えることは期待できません。
暖機済みの状態で異常が発生したとすると、10%程度の開度になるので、正常な場合の最大開度約90%と大きな差があります。
その分が、パワーアップになるのではないかと思われます。
Posted at 2023/10/06 10:58:28 | |
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