
本日、さいごーどんトコの仕事で、キメっ!の予定。
この仕事はここ数年でもっとも頭を悩ませた仕事。
幅670mm、長さ1970mmのフロアの穴の下に階段をつけよ!
という指令。6Fから5Fへ降りる階段。
しかも制約がかなりあります。
まず、搬入時に手で運べ、エレベータを利用できる寸法でないといけません。
エレベータは小さな雑居ビルタイプなので高さも幅も制約があります。
次に製作の階段ですが、まずスタートで向きをかえ、1970mm行った先は壁なので、そこに踊り場を
つけ、方向転換しなければいけません。
それだけならば踊り場をつけて向きをかえて降りるわけですが、幅が狭いので、踊れない。
しかももう一つ問題が。下で向きを変える際、ビル自体の6Fの鉄筋コンクリートの梁があるんです。
梁の幅は700mm。その梁をくぐらねばなりません。そうなると、最低でも梁下で人が立てる高さの
最低限1800mmは欲しい。この際気をつけないと、真下で人が立てても、実際降りる際にはおでこ
をぶつけるという事故になります。ってことは手前の段で1800mm程あって、目線にはいってきて
気になる。逆に近すぎると目線に入ってこないので頭をぶつける。程よくないといけません。
それが、降りて壁に当たる前に700+1800mmで2.5m程おりなきゃいけないんです。
約2m行って2.5m下がってろと? どうしよ?。
全体の高さの差は3030mm…。
大工さん2人で悩みに悩んだけど、現場で悩んでても他の仕事が進まないので、元請会社さんの
社長の方で大雑把な図面を書いてみたらしいのですが、1つ1つのステップの高さがどうしても高く
なるのと、梁がくぐれないのと…で、どうしましょ?とウチに相談がきたのが始まり。
無理難題は慣れてます。
幅670mmなので、手摺がつくスペースが必要なので、有効は500mmかな(幅は通常の約1/2)。
奥行きは通常220~240mm程度とるけど(靴のサイズ参照)、段数で割っていくとどうしても210前後。
1ステップ減らすとステップの奥行きはとれるけど、高さが300mm程になり、頂いた図面では300mm
となってたけども…それじゃぁちょっとなぁ…。疲れる階段になってしまいます。
きつい階段というのは実在します。上ってて段数が細かくやたら疲れる、とか、降りてて滑りやすい
階段ってありますよね。あれって1段ごとの寸法の問題なのです。
例えば幼稚園の階段などは子供用に細かく段数を入れていきますが、大人では数段上がっただけ
で本当に疲れます。
木造建築で階段というと、だいたいフロアの高さが決まってますので、縦横比で寸法が出しやすく
なっておりますが、私んとこに来る注文はフロアの高さが様々。使える場所もある程度は制約が
あるので、毎回寸法を計算するわけです。
よくある階段の怪談で13段がどうちゃら…というのは、嫌うもなにも、寸法で決まるだけの話w。
いあ別に私らは13段だろうが20段だろうが別にいいんですけど、でも使えるサイズっていうのがある
んだよ?って話。
1段の高さを300mm以下にする場合、もう一段増やせばいいのですが、そうなると奥行きに関係して
きます。奥行きは少し奥側に余裕を数センチもたせると、つま先が当たらずにラクに上がれます。
ので上る際の奥行きは多少犠牲にしてもいいけども、でも210mm以下だと足の踏み場がない状態に
なり、降りる際は滑りやすく危険!…たとえ1ミリでも余計に欲しいな…。
案外、階段を上る際、1段だけ高さがおかしいととても違和感を感じます。高さで10ミリ違う程度でも
気がつきますのでビミョーなトコなんです。
ビルのフロアの住宅の部分、しかも、1人しか使わないので、多少の不自由はあっていい。
他にもエレベータや非常階段はあるので、荷物の上げ下ろしには使用しない。
というお話でした…が…でもね。
不自由があっていいと思うのは最初の1~2年で…人間誰しも年齢を重ねれば、多少の不自由が
苦痛となり、何れ使わなくなる…というのは、
作る側の私としては非常に寂しい!。
せっかく作るのだもの
なんとかフツーの階段に仕上げられないか?と考えてました。
思案の図面を書いて、なんとかなりそうなので、再度現場で細かく計測し(前回16日の回)、
たとえ1センチでも欲しいなと思ったのですが、下の階で計測すると2050mm♪ お!らっきー♪
1970って聞いてたから、80mm得した。8mmプラスできるな と思ってたら、自分の書いた図面では
1970mmは有効の幅で+50ミリで書いてたから、2020mm。それと手摺がつけば手の通る部分で…
あれ?!全然寸法がないじゃないの!!!
悩みに悩んで、踊り場の左右の壁際は中心の手摺を持って回っていくので、回るとこの壁の一部は
手摺は無しで幅を重視!。なくてもその前後の手摺はあるんだし、すぐ手が届く。後で必要そうな
らば、市販の簡易的な手摺を壁につけてもらえばいいんだし、ということで。
壁際は6ミリ厚の鉄板にして予定より44mm増。それを10段になんとなく割り振って。回るところに
も寸法をあげましょう♪。
踊り場で段数を増やすと、細いところでは足もなにも乗せられない。グルグルまわる螺旋階段が
思いのほか実用的でないのはその理屈。
次は搬入方法。なるべく軽く、そして、エレベータでの搬入できる寸法、分割方法、ナドナドを考えて
考えて…。
部材を変更をしたりなんなりで図面を全て書き直すこと3回。そのうちに折り曲げ加工の指示書等を
出して、各部品を作って。斜めの品物ばかりなので、数字がみんな細かい細かい^-^;。
通常の回ってる階段、しかも外ならば、工場で組んで直で溶接、あとは現場でクレーンでラクチンぽ
ん!なのですが、今回は全部バラッバラでボルト止め。しかも少ない工具類のみで組まねばなら
ない。
んでも現場での作業時間は短縮したいのと、全部分割だと出来上がってもクラクラするので、手で
持てる範囲でつけれる部品はつけて。図面はたっくさん書いたけど、それでも落ちてる寸法があって
PCと工場の往復をしながら加工…。
しかも試し組みをする時間もなくって…相当頭が痛い日々が続いて昨日まで品物を作ってました。
そして今日。
早めに出て、トラックを走らせると、やっぱり渋滞。明日は月末だし週末だし、最悪なので今日が
良かったけど、やっぱり混んでた。
予定より20分遅れで現場に到着すると、2台ある公共の車の積み下ろし場は先客がいてダメ!。
こんなことなかったのにな…幸先のいいスタート(?)。
しかたないのでギリギリでとめられる隙間を陣取り、品物を搬入し、遠く離れた駐車場へ。
戻ってきて搬入の続き… が この暑さでヘロヘロ。おまけに場所がないとこに階段をつけようってん
だから狭いのは当たり前。狭いと余計に暑苦しい…
仕事をしはじめると、案の定、ミスってる金具があるのを発見。どうやらコレ考えすぎでつけた様子。
そこを直して組み立てて…暑さでヘロヘロになりつつも、お昼が過ぎ15時頃には完成間近。
お茶を頂いて、残りの作業をして、片付けをして終了~♪
ふぅ…何とか終わったな…とトラックを取りに行こうとしたら、いやぁ~~な事を思い出した。
なんと
16時以降夜間はそこの道、進入禁止!!あと10分しかない!!
いつもなら16時までそこの現場にいないから忘れてた!
これを逃すと、大通りで車をとめる場所をさがして、そこまで荷物を運ばなきゃならないし、それが
ダメなら翌朝にとりにこなきゃならない
…そんなのしたくなぁい!!
トラックまで走って行って…何度も足がつりそうになりつつも、ひたすら走って。いそいでトラックをまわ
して。
あと1分!というところで
ギリギリセーフ!。
追い出される前に荷物を載せて…
その間、お客様ができた階段を見たらしく、無理難題なのはご存知だったようで、その中でもちゃん
とした階段にまとまってると、ほめて頂き(ノ´∀`*)、帰りの飲み物までご馳走になりました。
…よかった♪。こうゆう心配りがホントに嬉しい昨今です。
出来栄えの程は、自分で何度も上り下りしても違和感がなく「幅が狭いかな?」と思う程度で収ま
り、梁下をくぐるというのは私は背が高いので寸法でいけばブチあたる筈ですが、それでも気になら
ない程度になりました。…ほっ…
できちゃえばフツー なのですけどね^-^;。 フツーにしたてあげるのが大変だったんです。
制約ばかりの仕事だったけど、終わってしまえば達成感からか、なんだか楽しい気分になりまし
た♪。
画像は図面の平面図のイメージの一部。書いた図面はこの図の約30倍位。