受粉作業に最も適しているのが、おおよそで日の出から正午までの時間です。カカオの花は夕方に開き始めて翌朝には満開になること、加えて佐藤・坂口(1967)によれば花粉の発芽(花粉管の伸長)率は13時くらいまでが高い数値を示すことから、人工授粉に最適な時間は朝から正午過ぎまでということになります。
また、Youtubeに上がっている「COCOA HAND POLLINATION」の中でも受粉作業は早朝が良いと述べられていることから、これは間違いなさそうです。
ちなみに開花後2~3日すると受粉できていない花は落ちていきますので、受粉が成功したかどうかは作業翌々日くらいには分かることになります。
具体的な受粉作業のやり方
まず花粉を取るための花を用意します。次に受粉作業の対象となる花の仮雄蕊をちぎって柱頭を露出させます。花粉を取るための花の花びらをちぎって葯を露出させ、先端についている花粉(直径0.5㎜くらいの塊になっています)を指の腹と腹の間に優しく挟むようにして指に取ります。その花粉をそっと柱頭に接触させれば、うまく花粉が柱頭にくっつきます。これで終わりです。
ちなみに産地のカカオ農園ではピンセットを用いて受粉作業を行っていましたので、柱頭に花粉がつけば何を使っても良いかと思います。また、「COCOA HAND POLLINATION」によれば、花粉を取るための花は特定のエリアに区切られた中にある健康な花を用意する(≒受粉作業を行う樹とは別の、いわば受粉樹のような樹のこと?)とのことですが、我が家には1本しかないので同じ樹の別の花で受粉させています。農園の方法で人工授粉させると、動画を見た限りでは自然受粉の5倍~10倍くらいの結実量が見られるようです。
ちなみに「COCOA HAND POLLINATION」によるとガーナにはカカオの受粉を専門に行うPollinatorというスタッフがいるみたいですね。収穫量すなわち収入を劇的にアップさせるのと同時に、若者の雇用にも役立っているとか。
参考文献
・佐藤 啓一、阪ロ ナミ(1967),「カカオの温室栽培に関する研究」
・Eagle The Agency「COCOA HAND POLLINATION」
https://www.youtube.com/watch?v=lXe-xptz2Nk(2022年6月28日閲覧)
・Ministry of Agriculture Land And Fisheries「Hand Pollination of Cocoa」
https://www.youtube.com/watch?v=Y0b_73zWWuY(2022年6月29日閲覧)