Long Distance

先週、オデで東京から島根県益田市までを走破した

往復2000㌔、片道12時間の一人旅

実はオデを購入した時から、いつかコイツでそこに行きたいと思っていた


益田は私が社会人としてのスタートを切った街である

生まれてからずっと東京に暮らし、

大学を卒業した時、初めて慣れ親しんだ街を離れた

学生から社会人へ。東京から益田へ。

立場だけでなく環境も激変したことへの戸惑いは想像を絶するもので、

私は知らぬ間に自分を見失っていったことにさえ気づかないままだった

しかし、先輩方はそんな学生気取りで無自覚、口だけの未熟な私を可愛がってくれた

今と比べれば心身の双方にとって遥かに厳しく辛い労働条件、労働環境、プレッシャー、矛盾‥

まだ若かった私はそこに暮らし、そこに思い、泣き、笑い、

そこで出会った多くの人との間に生きた

いくら追いかけても追いつけない先輩方を追いかけ

多くの人たちから一生に値するものを貰い、それは血となって今も私の中に宿る

益田での10年以上もの月日がなければ、今の私はない

私は益田で社会人としてスタートしたことを誇りにさえ思う


４年振りに帰った益田は私がいた頃の面影を消す新しさと

もう15年以上も前に私が初めて訪れた時と全く変わらぬ姿が混在し、

今なお変わらぬ景色と人の優しさはまだ若かった自分がここにいて、

確かな時を刻んでいたことを語りかけてくる


久しぶりにお会いした先輩方は今も変わらず

それぞれに何かを背負い、思いを背負いながら厳しい道を歩んでいる

もう道は違えど、私も今の私の道を歩む

先輩は言ってくれた。お前はもう一人前になったんだ、と


私は何を惑い、見失っているのか。

かつて若かった自分が駆け抜けた街。

遥か長く遠い距離と時間を超えて‥


今まで歩んできた道。

今もなお、これからもずっと私の中に宿る時間。

そして、ただ続くだけでいい。


人に心があり、心と心、人と人は繋がる

この世に確かにそれはある


遥か長く遠い距離と時間を超え、今、私の心の中に迫る


私が益田に着いた時、季節外れの嵐のような激しい雨と風に木々がうねっていた

やがて、嵐は去って黒い雲の合間から不意に陽が射し、

雲が残した黒と空の青が混ざり合う彼の地特有の空から

やっと春を告げるであろう陽射しが街と人を照らしていた