
ここまでの章では
・軸重
・レバー比
・スプリング自由長
・プリロード
・ヘルパースプリング
・伸びストローク
と、サスペンションの基本構造を整理してきた。
開発対象となる車両は
Lexus GS 450h (GWL10)。
ここでいよいよ、多くの人が最初に気になるテーマに入る。
「なぜ重量級セダンはバネレートが高いのか?」
例えば軽量スポーツカーでは、
フロント6〜8kg/mm
リア4〜6kg/mm
といったスプリングレートも珍しくない。
一方、重量級FRセダンでは
フロント10kg/mm以上
リアさらに高い数値
といったセッティングがよく見られる。
これを見ると
「重い車だから硬いバネが必要」
と単純に考えてしまいがちだ。
もちろんそれも理由の一つだが、実際にはもう少し複雑な事情がある。
その鍵になるのが
ホイールレート
という概念だ。
ホイールレートとは、
タイヤ位置での実効バネレート
を意味する。
第二章でも触れたが、サスペンションにはレバー比が存在する。
そのため
スプリングレートとホイールレートは同じではない。
計算式はシンプルだ。
ホイールレート= スプリングレート ÷ レバー比²
つまりレバー比が大きい車では、
スプリングレートを高くしないと十分なホイールレートが得られない。
今回の車両のリアサスペンションは、比較的大きなレバー比を持つ構造になっている。
この場合、例えば仮に
リアスプリング17kg/mm
という数字だったとしても、
タイヤ位置で効いている硬さは実際にはかなり低い値になる。
つまり
数字ほど硬い足ではない
ということだ。
さらに重量級セダンではもう一つ重要な要素がある。
それが
ロール剛性
である。
車がコーナーを曲がるとき、車体は外側に傾く。
この傾きを
ロール
と呼ぶ。
ロールが大きすぎると
・タイヤの接地面が崩れる
・応答が遅くなる
・運転感覚が曖昧になる
といった問題が起きる。
そこで必要になるのが
ロール剛性
だ。
ロール剛性は主に
・スプリング
・スタビライザー
この二つで決まる。
重量級の車は重心も高くなりがちで、コーナリング時のロールモーメントも大きくなる。
そのため
ある程度高いバネレートが必要になる
のである。
ただしここで重要なポイントがある。
それは
バネを硬くするほど良いわけではない
ということだ。
スプリングレートを上げすぎると
・路面追従性が低下する
・トラクションが減る
・乗り心地が悪化する
といった問題が出てくる。
つまりスプリングレートは
車両重量サスペンション構造タイヤ性能
この三つのバランスで決める必要がある。
そしてここで、次のテーマが見えてくる。
それが
タイヤ
である。
タイヤのグリップ力が変わると、最適なサスペンションセッティングも変わる。
第八章では
タイヤ性能がサスペンションに与える影響
について考えてみたい。
Posted at 2026/03/21 09:59:03 |
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