消えゆく技術と職人

私が作っている折り畳み式の幌屋根は、実はある家具職人さんと一緒に仕上げています。

この職人さん、今ではすっかり貴重な存在になった“叩き上げ”の方。若い頃は、親方にゲンコツをもらいながら技術を体で覚えたそうです。修行中の給料は、ほとんどお小遣い程度。現代ならすぐに問題になるような、厳しい環境の中で技術を磨いてきた世代です。

そんな時代を生き抜いてきた方だからこそ出せる「味」が、幌やドアの仕上がりに宿っています。

ただ残念ながら、こういった職人さんも年々少なくなり、技術の継承も難しいのが現状です。この職人さんに弟子はいません。つまり、この方が仕事を引退したら、幌もドアも、もう誰も作れなくなってしまいます。

3DデータやAIがどんなに進化しても、手の感覚や経験、細やかな勘どころといった“職人の技”は簡単には再現できません。

どうにかして、この技術を次の世代に残す方法はないものか。モノづくりに関わる者として、真剣に考えていかないといけない時期にきていると感じます。