
それはつまらない事故だった。
雨の日に、乗っていたトラックがすべったんだ。
全てがスローモーションに見えた。
フロントガラスが砕け散るのも、横からダンプがせまって来るのも。
俺…死ぬんだ。
俺には子供が2人いる。
あいつらに何も残してやれてないや…
ごめんな。
仕事ばっかりで、あまり出かけなかったな。
あんなに欲しがってたオモチャ、ケチらず買ってやれば良かった…
俺の体は幽体となって彷徨い、自分の葬式を見た。
親父の頭が真っ白になって、
気の毒になるくらい疲れきった顔をしてる。
悪いなあ、親父…
隣で泣いてる母親、それに姉貴、奥様、子供達…
子供達は理解して無い。
俺の遺影を見て無邪気にパパだ!なんて喜んで
パパどこ!?なんて叫んでる。
それを聞いてますます大泣きする奥様…そんなに、泣くなよ。
辛くなっちゃうよ…
子供を抱きたくても、奥様を慰めたくても、誰も俺に気づかない。
ああ…俺、死んじゃったんだなって思って哀しくなった。
俺の体は焼かれ、骨になり、周りの雰囲気もなんとなく
「ああ終わったな」って感じになった。
俺もそう思った。
葬式の帰り際、走り回っていた息子が急に道路へ飛び出した。
それをあわてて奥様が駆けつける…その真後ろにバスが。
あぶない!って思った。
バスのクラクションに驚く息子の顔が見えた。
助けなきゃ!!
ふわふわしてた気分もすっ飛んで、息子を抱きしめてる奥様ごとかばった。
ダメだ!!
誰か、助けてくれ!!!!!!
こんなの、いやだ!!!!
大切なんだ、俺の…
バスのクラクションが耳をつんざき、ライトが世界を真っ白に焦がした。
そこで目が覚めた。
まだ暗い。時計を見たら夜中の0時過ぎだ。
全身汗でぐっちょり。
パンツもべっちょり。
扇風機を回して2度寝。
朝、胸をはって奥様に、「俺が命がけで守ったから今があるんだぜ」
と言ったら、すげえ見下された目で見られた…
むうううううううう。
むこうが現実だったかもしれないんだぞ!
愛の力で捻じ曲げたんだぞ!!!
ちったあ感謝しろい!!!!!!!
なんて思いつつ、今日は仕事の帰りに
息子へオモチャを買って行ってやろうと決めた。。。。
Posted at 2009/05/23 01:08:56 | |
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