ジム爺が「ジム兄ちゃん」で出掛ける時、夏以外はスカジャンが制服である。
「スカジャン」とは「横須賀ジャンパー」または「スカイドラゴンジャンパー」の略という二つの説がある。
スカジャンの由来は、駐留米軍兵士が来日記念に落下傘の布地で龍・虎・舞子・桜など日本的な刺繍をあしらったジャンパーを横須賀のテーラーにオーダーしたのが始まりだという。
もう10年以上前のこと、用事があって横須賀基地に行った帰りに、駅に通じるドブ板通り商店街にはスカジャン専門店が幾つかあり、覗いてみると立派な刺繍のスカジャンが陳列されていた。
物見遊山の冷やかしのつもりで入店したのだが、よく見ると数ある中には製作者の思いが縫い込まれた逸品があって驚かされた。
私が目にとめたのは画像のCROPPED HEADS社製のスカジャンである。ところが記憶ではこれが5万円近い値札がついておりその時は買い求めることができなかった。
しかしどこか心の片隅に引っかかっていて、翌年に横須賀を訪れた際に同じものを探したが既に生産が終了していることを知って残念な思いをした。
私の普段の装束は黒系統のものが多い「白髪カラス」であり、黄色と紺の上着には少々抵抗があったのだが、気に入ったのは「牡丹に唐獅子、竹に虎」の刺繍図柄のもの、リバーシブルの裏側は緑と乳白色である。
私は台詞少なく目で演技をする故人となられた俳優高倉健さんが好きである。その健さんが「背中で吠えてる唐獅子牡丹」と歌った「唐獅子牡丹」という映画(1966年)、実はこの題名のくだりは「牡丹に唐獅子 竹に虎」という仏教の教えの一部なのである。
この「スカジャン」の原図となったのは、京都東山の南禅寺、虎の見渡しと有名な庭園を望む廊下の欄間にある、300数十年前の左甚五郎作品である両面透かし彫り「牡丹に唐獅子 竹に虎」である。
(以下『 』内は大分県長福寺宇都宮住職の説法を一部引用)
『貴方の拠り所は何ですか。貴方が安心して身を寄せる安住の地はありますか。
「牡丹に唐獅子」 獅子は百獣に君臨する王、その無敵な獅子でも獅子身中の虫が自身の皮や肉を蝕む。しかしその虫は牡丹の花から滴り落ちる夜露で駆除できる。獅子の安住の地はそこにある。
「竹に虎」 獅子とともに屈強な虎、虎でも唯一歯が立たない動物は象、象牙にヒビが入ることを恐れるとともに巨体の象は入りにくい竹藪を嫌う。虎にとっては竹藪が拠り所である。
お金や地位や名誉、頼りになりそうだが却って無明の世界に迷い込むものである。
「頼りになるのは自分だけ」という自我のおごりを捨て、「もう一人の自分」調整を必要としない自分(仏心)に巡り会えると得難き拠り所、安住の地が得られる。』 (引用以上)というものである。
任侠映画の健さんの背中の刺青には、実はこんな深い理由があったのだそうな。
盆暮れ彼岸しか祖父母や親の墓参をしない仏心には程遠く罰当たりの私であるが、「牡丹に唐獅子、竹に虎」には心をひかれたのである。
私のお気に入りのスカジャンは、何年もかけて中古品でやっと見つけて求めた品である。
着こんでいるので既に布地も薄くなり結構ボロボロになっているのであるが、なかなか捨てられずに着ており、どうやって見切りをつけようかと考えているところである。
Posted at 2020/12/07 09:38:59 | |
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