みなさんゴキゲンよう!
モータージャーナリストの山田弘樹(やまだ・こうき)です。
千里の道も、一歩から。初心者でもクルマを目一杯楽しんで、最後の最後は「ニュルブルクリンクへ走りに行こう!」というこのコラム。
今回は、11月に富士スピードウェイで行われた全日本スーパー耐久シリーズ 最終戦 Rd.7 FUJI(S耐)にTAKASHI君と行ってきたので、その時の模様を振り返ります。
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画像提供:スーパー耐久機構
編集部TAKASHI(以下・TAKASHI):山田さん! S耐最終戦、メチャクチャ熱かったですね!
山田弘樹(以下・山田):ST-2クラス(※)の話だね?
※ST-2クラス:2400cc〜3500ccまでの4輪駆動車両、および前輪駆動車両
現行シビックタイプR(♯743 Honda R&D Challenge FL5)が大逆転で、シリーズチャンピオンを獲得したね。まさかシリーズトップのエンドレス・スポーツ GRヤリスが、あんな形(※)で線戦離脱するとは思わなかった。
※:レース開始後およそ1時間半の時点でエンジンから白煙があがり、緊急ピットイン。その後復旧するも規定周回数が足りなく完走扱いにならず。
画像提供:スーパー耐久機構
TAKASHI:さらに743号車の後ろには、♯225 KTMS GR YARISも迫っていましたね。
山田:743号車はトップチェッカーしか逆転優勝の望みはなかったから、チームはドキドキだっただろうね。
TAKASHI:その225号車が、終盤でまたもやスロー走行とは、本当にツイてないですよ。やっぱりレースって、過酷なんですね。
画像提供:スーパー耐久機構
山田:だからこそ、クルマが鍛えられるんだよね。
ここ数年はトヨタが音頭を取ってS耐を盛り上げているけれど、こういうことを表現したかったんじゃないかなって思うよ。
画像提供:スーパー耐久機構
山田:ST-Qクラス(※)もさ、メーカーがクルマを鍛える場としてS耐を活用しながらシーンを盛り上げている。ここで作り上げられた技術が生かされれば市販車が強くなって、それを使うレースも盛り上がる。
※ST-Qクラス:他のクラスに該当しない、STO (スーパー耐久機構事務局)が認めた開発車両
いまS耐は、なかなか独自の面白い展開になってきているよね。
画像提供:スーパー耐久機構
TAKASHI:そんな山田さんも、これまで何度かS耐に出場されていますけど、山田さんにとってS耐って、どういうレースですか?
山田:ボクにとってS耐は、
憧れのレースでしたね。
TAKASHI:過去形なんですか?(笑)。
山田:いやいや、出られるものならいつでも出たいですよ?
ただ自分がレースを始めた2000年頃は、
若手の登竜門という色合いがすごく濃かった。S耐に出ることができたら、
「レーシングドライバー」と名乗っていいと思ってました(笑)。
実はそんなことなくて、S耐はどこまでいってもやっぱり
ジェントルマンレースなんだけど、そのくらい、真剣に憧れていましたよ。
画像提供:スーパー耐久機構
山田:ところでTAKASHI君はなんで、S耐なんか観に来たの?
TAKASHI:一応これも仕事ですよ?笑
S耐はずっと
YouTubeで追いかけていたんですけど、やっぱり生で見たかったというのが1番です。
出走台数も多いので、やっぱり迫力が違いますね! あっという間の4時間でした。
画像提供:スーパー耐久機構
山田:ホントは
いつか出てみたいなぁ……なんて思ってるんでしょ?笑
TAKASHI:あっ、わかります?笑
山田:クルマ好きな男の子なら、それは健全な発想です。
TAKASHI:ちなみに、どうやったら出られますかね?
山田:まず国際C以上のライセンスが必要だけれど、資格的なことは置いといて、一番大切なのは、自分が
どのクラスで、どのクルマに乗ってレースをしたいかじゃないかな?
TAKASHI:そりゃ速くてカッコいいクルマに乗ってレースがしてみたいです!
#47 D'station Vantage GT8R(手前)と#777 D'station Vantage GT3(奥)
画像提供:スーパー耐久機構
山田:いきなりFIA-GT3マシンに乗るなんて、やっぱり無理でしょ?苦笑
いやGT4なら、実は運転しやすかったりするんだけどね。
でも完成度が高いクルマにジェントルマンドライバーとして乗るには、その分お金が掛かります。
TAKASHI:チームにお金を払うということですね。大体、どのくらい掛かるんですか?
山田:ボクも正確にはわからないけれど、スタディのM4 GT4に乗らないか? って話が来たときは、「ゴニョゴニョ」(耳打ち)って言われたよ。
TAKASHI:え゛ー!!
<スタディからS耐24時間レースに出た時の様子>
【コラム】そうだ、ニュルへ行こうよ!Vol.3 ~S耐に出るには?~
写真:BMW Team studie
山田:とはいえ年間シリーズでの話だからね?
スタッフの数やチームの規模を考えたら、すごく安くしてくれたんだと思います。それでも払えなかったけど!
つまりチームや体制、自分のポジションによっても、掛かるお金は変わってきます。
TAKASHI:じゃあ、私が乗ってるNDロードスターが活躍している、ST-5クラス(※)だとどうでしょう?
※ST-5クラス:1500cc未満の車両
画像提供:スーパー耐久機構
山田:確かにST-5クラスは、S耐でも参加台数が多いし
「レースしてる!」って雰囲気あるよね。
TAKASHI:ちなみに……いくらくらいですか?
山田:それでもたぶん、ゴニョゴニョゴニョ…。
TAKASHI:うわー、やっぱりレースってお金が掛かるんですねぇ!
山田:N1耐久の頃は、レース自体ももう少しのんびりしていて、これほどコストは掛からなかったみたいだね。
でも今はクルマの性能もずいぶん上がったし、そもそも貨幣価値もだいぶ上がったよね。それにしてもアマチュアが憧れるには、ちょっと高すぎるけどね。
画像提供:スーパー耐久機構
それにS耐は文字通り
耐久レースだから、レースを始めてみたいなら、まずはスプリント形式の
ワンメイクレースで、自分を試してみる方がいいんじゃないかな。
TAKASHI:なるほどー。でもS耐マシンの方がカッコいいし、スリックタイヤを履いているから本格的じゃないですか。
山田:いやいや、スーパー耐久だって市販車をベースにしたレースだから。FIA-GTマシンはちょっと別格だけど、ST-5クラスでレースをすることを考えたら、ロードスターのパーティレースだって基本は変わらないよ。
TAKASHI:えー、ラジアルタイヤを履いたナンバー付きレースカーじゃ、比べものにならなくないですか?
画像提供:スーパー耐久機構
山田:そんなことないよ! 確かにボディ剛性やタイヤのグリップ、コーナリング速度は低いかもしれないけど、むしろクルマをコントロールすることを覚えるなら、パーティレースから始めた方がいいよ。レースの戦い方だって、きちんと学べる。
TAKASHI:そしたらまずは、パーティーレースですね! そこで速くなれたら、堤 優威選手みたいになれるかなぁ!?
山田:彼はもともとカートをやっていて、スーパーFJを走っていたときも、ものすごく速いドライバーでした。
TAKASHI:あらっ(笑)。
山田:彼は自分の力でレースをやるために、パーティレースから仕切り直してメキメキ頭角を現したんだ。でも、彼は真剣にレースがやりたくてパーティレースを選んだんだから、それはボクたちアマチュアにとっても希望の光になるよね。
写真:マツダ
あと
「速くてイケメン」、これはレーサーになる必要条件かも(笑)。TAKASHI君も
実はイケメンだから、あとは速さだな。
TAKASHI:よーし、じゃあ早速
メンズエステに通って男磨きを……
山田:その前に、まずは自分のロードスターで走り込みでしょ。
TAKASHI:ですよね~(笑)
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山田弘樹(やまだ こうき)モータージャーナリスト
自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦。
こうした経験を活かし、現在はモータージャーナリストとして執筆活動中。愛車は86年式のAE86(通称ハチロク)と、95年式の911カレラ(Type993)。
日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。