勘助は田圃の一角に生き残っている手兵を集めた。
「これより真直ぐに敵陣を駈け抜けて、上杉が本陣を衝く。ただただ、駈けに駈けよ。辺りに構うな。皆の生命を今この勘助がもらう!」
おお!という地響きのようなどよめきが兵の中から起こった。
次の瞬間、勘助は修羅場の一角目がけて馬を疾駆させていた。
途中で一度、彼は後ろを振り返った。
萩原豊後、畑中武平はじめ多くの部下が一団となって彼についてきていた。
勘助は体を折って馬首を舐めるような前傾姿勢を取り、右手に抜き放った太刀を拝むように構えて馬を奔らせた。
今や、勘助隊は敵の重囲に陥ろうとしていた。
周囲はことごとく敵兵であった。
勘助はいつか全身に痛みを感じていた。
絶えず斬り、絶えず斬られていた。
気が付くと萩原も武平も討たれたのか、姿を消していた。
ふと、前方を見ると槍のふすまであった。
突然、馬は大きく跳ね上がり、狂奔して横に向きを変えて駈け出した。
半町ほど行ったところで後脚を折り、座るような格好をした。
勘助は大地に投げ出された。
起き上がりながら勘助ははっとした。
そこからは不思議に川中島の平原が見渡せた。
田圃が見え、薄の原野が見え、水たまりが見えた。
その平原の果て妻女山のふもとに、芥子粒のような黒い点が無数に散らばって見えた。
ああ、やっと来たと、勘助は思った。
勘助は太刀を杖にして立ち上がった。
何人かの雑兵が迫って来た。
一人斬ったが、肩を斬られた。
二人目も斬ったが、脚を払われて、勘助は地面に坐った。
「御館様、別働隊が参りましたぞ。さあ、勝鬨をお上げくだされ」
槍が勘助の脇腹を刺した。彼はその柄を左手で握ったまま、太刀で払った。
平原の黒点は数を増し、先頭の騎馬隊が掲げる六連銭の旗がはっきりと見えるようになった。
信玄の居る松林の一角にはまだ風林火山の旌旗が立っていた。
そしてそれを取り巻くように何十本の武田の旗が立っていた。
勘助は勝利を確信した。生きなければならぬと思った。
「山本勘助殿とお見受けいたす。首級頂戴仕る」
ひどく若い声であった。
勘助は声の方を見ようとしたが何も見えなかった。
突き刺された槍の柄を握ったまま、三尺の太刀を大きく横に払ったが、手ごたえはなかった
「御館様、御味方の勝利にござりまする。勝鬨を、勝鬨をお上げなされ!」
激しい痛みがまた肩を走った。勘助は半間ほどよろめき、松の立木にぶつかった。
勘助はそれに寄りかかりながらもなお太刀を構えていた。
勘助の一生のなかで。もっとも静かな時であった。
辺りには戦場の叫声と喚声が天地に満ちていたが、
勘助にはそれはひどく静かなものに聞こえた。
由布姫の顔が現れた。
彼女が機嫌の良いときに見せた笑い方で、玉を転がすように、その声は転がってきた。
「勘助、本当はこのわたくしが欲しかったのであろう」
「め、滅相もございません。姫様には古今東西、唐天竺に至るまで見回しても御館様以外相応しかろう御方はござりませぬ」
ナニをいきなり・・・
勘助は内心どぎまぎした。
葛笠村の百姓娘だったみつとはかつて恋仲であったし、
原美濃の娘のりつには半ば押しかけられた形で同居していた。
しかし、由布姫となるとまったくの別格であった。
炎上する諏訪桑原城で初めて出会って以来、思いを寄せてはいるが、
それは国を思うが如く昇華された思いであった。
いや、そうあらねばならないと思っていた。
人間には分というものがあるのだ。
あの稀にみるほど気性が激しく聡明な由布姫は使い手を選ぶのだ。
「その顔は何ですか。生まれつき見られない顔なのに、またそんなに醜く痙笑って、この期に及んでなぜ自分に素直になれないのですか!」
非難を込めて言う独特の由布姫の言い方の快さが勘助の心を痺れさせた。
「武田が軍師、山本勘助殿とお見受けいたす。お覚悟!」
また、若々しい武士の声が聞こえた。
勘助はこの若武者に討たれてやってもよいと思った。
「いかにも武田が軍師、山本勘助・・・」
言うや否や、勘助は己が生命を絶つ冷たいものが、さっと首筋に走るのを感じた。
(オマージュ:井上靖・風林火山、、、夢だすよ夢www)
「ヒメサマ~!!」
自分の声で目が覚めた。
頸を落とされたのに声が出るとは不思議に感じた。
携帯電話の着信音、、、
ワシは生きているのか?それともコレガあの世というものか?
寝室には薄明が訪れていた。
そうだ!
スキーに行くのだった。
「ハイもしもし、、、」
「ファルケ君、おはよう。今何時だと思っているのかね?」
電話の向こうで少々怖いカンジのAセンパイの声が聞こえた。
Aセンパイは年式相応に出世しているのですでに赤ベタなのだ。
福井方面は激しく雪が降っていた。
今回はしっかり雪道装甲^^
予想より気温は低く、強風と吹雪で大変だった。
カメラを持って行ったものの、今回も悪天候のためゲレンデには持ち込めなかった。
9時過ぎから2時半までひたすら滑りまくったものの、
息が上がることはなく、ヲーキングの効果甚大ということが確認できた。
本日のAセンパイの評価、、、「偏差値65」であった(笑)
今シーズン、あと一回行けるかな♪^^
ハテサテ、この夢にはいかなる寓意が、、、、( ̄ ̄ ̄ ̄m ̄ ̄ ̄ ̄;)
先ずは情報収集から始めよう、、、ラ~ララララ~♪