珊瑚海海戦で、わが航空母艦飛行機隊の攻撃を受け、被弾炎上する敵空母「レキシントン」
敗戦の日が近づいてきた本日、
ネットで動画を見ていたら、
あるシリーズもののドキュメンタリー番組のクリップが出てきた。
「アメリカから見た第二次世界大戦・戦艦大和撃沈」
目新しくもないベタな内容だったので、
そこそこに切り上げようとした時、
耳を疑うようなナレーションが飛び込んできた。
コレの3分11秒あたりをよく聞いていただきたい。
曰く、
「魚雷11本、爆弾8発を受けて大和は撃沈。3000名を超える乗組員の大半は艦とともに還らぬ人となりました」
「撃沈」という言葉は、こんな使い方をするようになっかのか?
まずは、広辞苑を引いてみよう。
撃沈:
艦船をうちしずめること。
「敵艦を――する」
…とある。
他の国語辞典でも大略同様の説明がなされている。
普通、味方の艦船をうちしずめる阿呆はいない。
だから撃沈する対象は敵の艦船だ。
味方の船が沈むのは沈没であって、撃沈ではない。
どうしても撃沈という言葉を使いたければ、
「大和は撃沈された」と受動態を使えばよい。
アメリカから見れば、大和は敵艦なので、
戦艦大和撃沈で文法的には合っている。
それともこの「マスゴミ」は意図的に撃沈という言葉を使ったのだろうか。
日本海軍が敵だと思っている分には正しい表現になる。
穿った見方はさておき、
要は日本のマスゴミ、
それも一応はプロのモノ書き(国家資格はない)と自負する人々ですら、
広辞苑に載っている程度の用法を間違えているということだ。
したがって、一般人の用法や何をか言わんやであろう。
今や、「撃沈」という言葉は一般にもスラング(俗語)として広く浸透している。
失敗や不首尾、敗北、失恋、泥酔、意に反して眠りこんでしまったりする際に使われているので、
その辺のブログを見てくれば沢山お目にかかることができるだろう。
しかし、本当は「沈没」が正しい。
「睡魔に襲われて撃沈していました」ではなく
「睡魔に襲われて沈没していました」である。
どうしても「撃沈」が好きなら、
「睡魔によって撃沈されていました」が正しい。
言葉というものは、生身の人間がしゃべるナマモノであるがゆえ、
時代とともに常に変遷して行くものである。
だから、細かいことにあまり目角を立てない方がいいのかもしれない。
こういうことが鼻につく年齢に到達してしまった…ということなのだろうか。
ところで、沈没に似た言葉で「爆沈」「轟沈」がある。
ともに沈没の仕方を示す言葉で、
「爆沈」は船体が爆発して沈没すること、
「轟沈」は初弾命中からおよそ1分内外の短時間で沈没することを指している。
自動詞的に使えるので、彼我いずれに使ってもよい。
ちなみに、わかる範囲で外国語を調べてみよう。
英語では沈没も撃沈もsinkであるが、
自動詞的に使えば沈没で、他動詞的に目的語を伴えば撃沈となる。
ドイツ語では沈没はsinken(自動詞)、
撃沈は versenken(他動詞)で、ein Schiff(船を)など4格の目的語を要する。
イタリヤ語ではなんと言うのか?
本官はわからないので、脳内イタリヤ化のトリコローリな人たちに聞いて戴きたい。
Posted at 2010/08/14 23:44:15 | |
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