
ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まって2ヶ月半が経過しようとしてます。国際法上民間人への軍事攻撃は禁止されていますが、軍事衝突が発生すれば民間人の犠牲は不可避です。
ウクライナ南部の都市マリウポリはロシア軍にほぼ制圧され、アゾフスターリ製鉄所の地下施設に民間人とウクライナ兵士が避難して籠城している状況が続いてました。
今朝その製鉄所に避難していた民間人が全員脱出した旨の報道が流れました。
マリウポリ 製鉄所“市民の避難完了” ロシアは攻勢強めるか | NHK | ウクライナ情勢
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220508/k10013615551000.html
報道を額面通りに理解すればまだウクライナ軍兵士が製鉄所内部に残っている事になりますが、民間人がいなくなったとわかれば当然ロシア軍は総攻撃を仕掛けるでしょう。残されたウクライナ兵はこれから「玉砕戦」となるのでしょうか?
冒頭画像はGoogleマップのマリウポリの航空写真ですが、画面中央付近を拡大すると河川の河口の東側に「Asovstal」の文字が表示されます。

この河口〜沿岸エリアが製鉄所と思われます。
2/24の軍事侵攻が始まった日の記事で
戦争は明確な戦争目的を設定し、停戦や和平に向けた「終わらせ方」を明確にしておかないと悲惨な事になりますと書きました。
プーチンはこの軍事侵攻を始めた目的として、ドネツク、ルハンスクの「ウクライナ政府によって8年間、虐げられてきた人々を保護するため」と演説し、「ウクライナ領土の占領については計画にない」としています。
プーチン大統領 軍事作戦実施表明 “ウクライナ東部住民保護” | NHK | ウクライナ情勢
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220224/k10013498841000.html
これ以外の目的として
ウクライナのNATO加盟を阻止する事も挙げられるでしょう。ゼレンスキーは停戦交渉の中でNATO加盟断念の用意がある旨をロシア側に伝えたとの報道もありました。
ウクライナ大統領、停戦へNATO加盟断念と核武装否定の妥協案を用意
[2022年03月28日21時46分]
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202203280001079.html
これらを踏まえると、ここまでの紛争の流れがある程度見えてきます。
軍事侵攻開始直後、ウクライナの首都キーウに向けてロシア軍は進軍しました。キーウをある程度包囲する所までは行きましたが、ウクライナ軍の激しい抵抗もあってキーウは陥落しませんでした。
↓画像は
Live UAmapによる4/1時点での軍事勢力地図です。赤く塗られたエリアがロシア軍が侵攻支配していた地域です。

この後ロシア軍はキーウ周辺から撤退して行ったのは皆様ご存知の通りです。ウクライナ軍の抵抗に遭ってみっともなく撤退したようにも見えますが、
「ウクライナのNATO加盟を阻止する」という軍事目的を達成出来たと考えれば、理に適った行動にも見えます。そもそもキーウを陥落させゼレンスキーを殺害するなり追放してしまったら、停戦の為の交渉相手がいなくなってしまいます。そうなるとウクライナを支援している国々との「戦争」になってしまい、戦争を終結させる事が困難になってしまいます。大日本帝国は支那事変でそれをやってしまいました。近衛文麿政権が「蒋介石を相手とせず」としてしまったが為に支那事変が泥沼化し、対米開戦という愚を犯して滅亡への道を突き進んでしまいました。
プーチンが言うもう一つの目的である「ドンバス地方の親ロ派住民の保護」ですが、どうでしょう?

↑は5/8現在の勢力図ですがハルキウからドンバス地方の東部地域、そこから更にマリウポリ〜ヘルソンの南部沿岸部をクリミア半島も含めて勢力内に収めています。
先日ハルキウでウクライナ軍が攻勢を掛けてロシア軍が大幅に撤退した旨の報道がありました。
ロシア軍、東部ハルキウで40キロ後退…米高官「無気力という言葉がぴったりだ」 : 国際 : ニュース : 読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/world/20220503-OYT1T50115/
このエリアでは激しい戦闘が今も続いていると思われます。ロシア軍の損耗も激しい中この「軍事作戦」で新たな領土など何らかの「戦果」が得られなければ、プーチンの国内での立場が危うくなります。
ヘルソンからモルドバの親ロ派支配地域である「沿ドニエストル・モルドバ共和国(自称)」まで打通させようとしているのではないかという憶測もありますが、そのためにはオデーサも陥落させる必要があります。
一方のウクライナや国際社会は
「武力による国境線の変更は認められない」というのが基本的立場です。クリミア半島やドンバス地方を含めた領土奪還が最終目標になります。
↓は
防衛省サイトにある
4/26現在の戦況解説地図です。

民間人のさらなる犠牲が懸念されます。
Posted at 2022/05/08 10:16:13 | |
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