さて、このNSUヴァンケルスパイダーですが、オーナーだった友達のMさんの好意でちょくちょく運転させて頂きました(多謝)
その時のインプレでも。

まず、このエンジンのスペックは先日書きましたんで割愛します。
その中で、エンジンの基本的な構造はMAZDAのロータリーと大きくは変わりませんが、
吸排気口がローターハウジングに配置された“ペリフェラルポート”方式と呼ばれるのが最大の相違点です。
この方式はロータリーに詳しい方はご存じだと思いますが、
高回転域では効率は良いんですが、低回転域では未燃焼ガスが出やすい、いわゆる“オーバーラッップ”が発生し易く低速トルクが薄くなりやすい欠点があります。
この方式はレーシングロータリーには用いられていますが低回転域も常用する市販車には向かない方式ともいえます。
この“オーバーラッップ”対策の為にMAZDAは吸気ポートはサイドハウジングに設けた“サイドポート”方式を採用しています。
ちなみに、RX-8のRENESISは排気ポートもサイドハウジングに設けてローターハウジングには吸排気口が設けられていません。
まず、始動性ですが、さすがに暖気は必要としますがアイドリングは
想像以上に安定しています。
気になる振動もほとんどありません。
1ローターと言うと、MAZDAのロータリーエンジン開発の中で1ローターの試作車を走らせてテストドライバーに
電気アンマと揶揄されたエピソードがあるくらい低回転域の振動が大きいと言われています。

その対策がこれです。
エンジンマウントはエンジン本体に直接付ける方式では無く、コの字型のスタビライザー形のサブフレームを介して、その上にエンジンがセットされています。

ちょうど、このサブフレームがエンジンと共振することにより振動を打ち消し合う構造になっているみたいです。

エンジンマウントも独特の形状をしています。
ちなみに、暖まっていれば簡単に1発始動します。

排気の状態ですが、昔の車特有の排ガス臭がします。
2スト車に近い感じでしょうか。しかし、
白煙はほとんど出ません。
そして、走り出しての印象ですが。
まず、横に乗せてもらった印象は
極めて心地良いリズムがこの車にはあります
横に乗っているときの印象は振動は少なく、静粛性もこの当時の車では高い方です。
乗り心地も良く、振動の少なさがロータリーエンジン搭載車であることを感じさせます。
そして、オープンで走ってましたんで風の巻き込みは今のオープンの車以上に大きいのは当然ですが、高速も走っていただいたんですが不快に感じることはほとんどありませんでした。
ちなみに、ロータリー車特有のアフターファイヤーですが
“パチン”とかわいい音を出しますwマフラー替えたセブンみたいな極悪な音はしませんwww

さて、運転してみた印象ですが。
まず、みなさんは“ペリ”と聞くとどんなイメージを持つでしょうか?
低速は細く、気難しい印象を抱くかも知れません。
しかし、このスパイダーには
全くあてはまりません
クラッチミートもすんなり行えますんで拍子抜けしました(^^;)
低速トルクは確かに細いと感じますが、車重が軽いので難しくはありません。
全体的にフラットなトルク特性でロータリーの美点がここで伺えます。ミッションは4速フルシンクロですんで、チェンジにも難しい所はありません。ただ、2→3は少し離れてるんでちょっとコツが要るといったところでしょうか。ちなみに2→3でギアレシオが若干離れている印象でした、1→2で一気に加速して3→4でクルージングするといった走らせ方が気持ちよく走ると感じました。
加速性能は現在のNAの軽自動車よりちょっと速い、といった感じでしょうか、でも街中で迷惑がかかることはありません。
ハンドリングですが、RRという駆動方式ですんで内側に回り込み易い特性にあります。弱オーバーステアの傾向です。
直進安定性は高速を普通に走る分にはしっかりしており、どっしりした感じで、このあたりはドイツの車と感じました。
驚いたことに、この時代から既にラック&ピニオンの操舵機構が採用されています。
あと、ブレーキ性能ですが、ノンサーボ(アシスト無し)のブレーキですんで気を付けないと止まれません(笑)しっかり踏むことと、早めのブレーキを心がければ大丈夫です。
このあたりは40年以上前の車ですね~(^^;)、でも車重が軽いので効きは問題ありません。

さて、ここで私が感じたことは、
NSUとMAZDAのロータリーエンジンに対するアプローチの違いです。
今まで、私が感じたロータリーエンジンのイメージは
軽量、コンパクト、ハイパワー、スポーツカーに相応しいユニット
これは、大多数の人も感じるイメージだと思います。
しかしながら、NSUのアプローチは
余裕あるパワー、低振動、フラットトルク
じゃ、ないかと思います。
事実、このNSUスパイダーは先にも書きましたが、ゆっくり走るのがとても心地よい車です。
ロードスターをさらにユルくした感じでしょうか。
当時のドイツの田舎道をゆったり走り、トルクがフラットで振動が少なくて快適。
そんな、イメージが出てきます。
オーナーだったMさんも仰っていましたが、まさに
“和み系”の車であると。
これには、私も大いに同意しました。
もし、NSUが今もロータリー車を作り続けていたら、MAZDAのロータリーとはまた違った味の車が出ていたかも知れませんね。

大変、支離滅裂に近い内容で申し訳ありません(^^;)
さて、私が調べた数少ない資料では
NSUのロータリーエンジンは熟成不足、すぐ壊れるといった内容があちこちに見られましたが、ここで声を大にして言いたいです。
それ、大きな間違いです!!
実は、このスパイダートラブルは無いと聞きました。
基本的なメンテナンスは当然行っています、オイル、水、プラグと
今のロータリエンジンと変わりません
オーナーであったMさんも仰っていましたが
難しいことは一切していないと聞きました。
確かに、40年以上前の車ですんで、手はかかりますが、
メンテナンスの基本を押さえていれば問題は無いということです。

これは、今もロータリーエンジンに対する
偏見がどうしても残っていることに憤りを私も感じたことがありましたが、やはり正確な情報は大切であると感じました。
特にNSUスパイダーは
自動車史に残る、エポックメイキングな車であるにもかかわらず、少ない資料のおかげで間違った情報が溢れているとオーナーであったMさんも仰っていました。
ですんで、私も出来る限り、この車の正確な情報と印象をありのままに書かせて貰っています。

もし、間違いがありましたら、是非ともコメントお願いします。