
振り返りたくなるほどの足跡がある訳でも、前を向いて駆け出したくなるほどの目標がある訳でもない細い獣道を、ただ歩くために歩いてきたような僕の人生はもう半ばを過ぎていた。それでもなお続く旅路への「はなむけ」にでもと一年前に、自分で買って自分に贈ったRCZ。
偶然にも納車日は自身の誕生日と重なった。人生の折り返し地点を過ぎた頃から誕生日は、重ねた年月を祝うというより、残された年月を数えるカウントダウンのような気がして、あまり喜べなくなっていた。でも今年からその日はRCZと過ごした時を数える記念日へと変わった。
巨大なトランクと軽快な走りで買い物の足にも気軽に使える気さくさと、休日ドライブの非日常を演出してくれる唯一無二の近未来的デザイン。相反する二面性が一台の車に共存する魔性に魅かれ、とにかくただハンドルを握りたくなる衝動で、この一年多くの距離を走った。
最高のデートカーでソロドライブという、そこはかとない侘しさは横に置くとして…はじめの頃はあらかじめルートや名所などを調べ、目的地を決めて出かけてみた。しかしすぐに自分はただ運転していたいだけなんだと気づいた。それからは、方角だけ決めて気ままに出かけ、ひたすら何時間でもただ運転した。流れる景色とエンジン音とステアリングの感触。自分にとってはそれで充分、それが全てだった。
走り疲れて車を降りる休憩所。少し歩いてから忘れ物でも確認するふりをして一瞬振り返るのが密かな愉しみ。何度確認してみても、初めてRCZに出会った時のときめきは不思議と今も色褪せない。
見知らぬ人から「素敵な車ですね、なんていう車ですか?」と声をかけられることもあった。車のことだとわかっていても、褒められることに慣れていないせいか、気の利いた受け答えは今だに上手く出来ずにいる。
突然の警告灯と共に失速したイグニッションコイル故障の洗礼。ファンレジスターが焼ききれてエアコンが効かなくなった夏の日の思い出。気まぐれに点灯する警告灯。手を焼かされた一年でもあった。手が掛かる子ほど可愛いなどと車を擬人化するほどのマニアではないので流石に故障には閉口したが、修理さえすればすぐに元気を取り戻し、何事も無かったかのように澄ました顔して佇む姿を見ると笑顔で溜息、また一緒に出掛けたくなるのだった。
目的地など無くともただ前へと進み、流れる景色と時を楽しめばそれでいいこと、たまには休んで振り返るのもいいものだということを教えてくれたRCZ。
「スゴい」と言われる賞賛よりも「イイね」と共感してもらえる喜びを教えてくれた人々とみんカラに感謝。
新たな旅路の相棒と
さて今年はどんな一年を過ごそうか…
Posted at 2022/01/30 13:51:01 | |
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