
スマホと格闘しながらの遅いランチとなったので、ゆっくり
と関西の味を堪能する暇も無く、とは言え、あっと言う間に
鉄板上から喰い物が消えて行った…。
次の予定も迫って来ており、喰い終えたと同時に会計へと向かった。そんな私の一挙手一投足を
欄干の隙間からジッと監視していた、虚弱体質の日本赤軍の様な風貌の店員は、会計に向かう私
の後をひっそりと付いて来た。
しっかし、私がイメージする関西人は “パワフルで喧しいに尽きる!” であったので、この店員は
真逆と言えた。
「
〇〇〇〇円です…」
思わず、
「ああ”っ⤴!?」
っと、声を荒げたくなったが、この時は聞こえなかったので、本当にそう言った。途端、ビクゥッ!!
と飛び上がった店員は、しかし同時に右手をレジの下へと忍ばせた。 その動きにピンッ!と来た
私は、先手を打った。
「ぴにゅぅぅぅぅんんんんん~~ぴよぉ~~んんんん!」
と口を丸く窄めながら、先程聞いた呼び出し音を真似し言った。
「その“呼び出しボタン”は押さんでもいい…」
少し低目の声でそう言うと、改めてもう一度金額を訊ねた…。
何となく食べ物は安いイメージが有ったのだが、現実は関東とそう変わらない金額ではあった。
しかし店員といい値段といい、関西に対してのステレオタイプな感覚に支配されている自分に
少しイラついたが、コレも時の流れだと自分を納得させると、さっさと勘定を済ませ、ひっそりと
佇むフィットに戻った。
しかしこの鉄板屋に隣接するラーメン屋を見るにつけ、私の眉間にはどうしても皺が寄ってしまう。
どう見ても、某ラーメンチェーン店のパクリすれすれのラーメン屋にしか見えないのだ! しかも実際
その某店は近くに存在しているのだから、ホント不思議に感じた。因みに大昔は、関西にラーメン屋
等殆ど無かったのだが、当時その事を関西人に言うと、決まって返事は、
「コッチにはうどんが有るから、あんなショーモナイもん、ウチラが食べる訳無いやろが!」
等と、牙を剥いて来たモノである。 それが今やこの体たらく! 今でも頑なに“うどん”を守り続け、
それ以外の麺類である蕎麦やラーメンを受け入れない讃岐の国の人達の爪の垢を煎じて飲んで
欲しいモノである…。
さて、駅に戻る前にもう一カ所寄らねばならない所が有った。それは大学時代の友人である、K氏
の元である。彼は在学中、兎に角大人しく、また関西人にも拘らず殆ど関西弁を話さなかったという
珍しい人物であった。いつも低目の声色で、ボソボソっと言った感じで話していた事をボンヤリ思い
出しながら、待ち合わせの場所へとフィットを走らせた…。
数十分後、鉄板焼き屋とは打って変わって、私がイメージする典型的な関西人が目の前に現れ
た。懐かしむ行動や挨拶もソコソコに、機関銃の様に捲し立てた! しかも終始ハイトーンで!!
「あんな、アレやけど、コレな、ドーンとな、ものスゴッ!って言う感じやから、気ぃー付けてな、
〇〇に渡したってな、あとついでにな、俺はアランドロンそっくりになってたって、言っといてな~♪」
年齢を積み重ねるごとに男の声色は低音で味わい深くなるものだと思うのだが、
「お前、普通、逆だろ!」
と言わずにはいられなかった。まあ、私よりも遥かに毛根間の距離が広くなった天頂部を見るに
つけ、何故か優しい気分になったのは何故だろう何故かしら…。
帰り際、Kが名残惜しそうに、しかしパワフルに言った。
「ものごっつ美味い店知っとるから、これから行かへんか? 勿論俺が半分奢ったるわ!」
自信と言う感情を満面に湛えながらそう私に言って来たが、東男たる私にとってはそのような態度は
最もイラつく部類に属していた。しかし私も、もうアラフィフのオッサンである。彼の顔面にチョーパン
一発ブチ込む代わりに、一つ肩を竦め丁重にお断りした。勿論行きたいのは山々だった。しかし帰り
の新幹線の時間が迫っているという事もあるが、ソレよりも近所のマダームに預けていた“坊(仮名)”
の事が気になっていたからである。
と言う訳で、「今度会う時は弔辞を読む時だな!」等と、お互い憎まれ口を吐きながらKの元から
去った…。
帰りの高速道路上。フィットのハンドルを握る私は、苛立ちを隠せないでいた。また事故渋滞に
遭遇していたからである!
「そんなに交通量も無いのに、行きも帰りも渋滞って!!」
今回の事故も同じく単独で今度は右側のガードレールに黒いヴェルファイアが貼り付いていたのだ。
「関西人は、真直ぐ車を走らせる事が出来ないのか!?」
クルマの返却時間と共に、帰りの新幹線の時刻も迫って来ていた事も有り、私のイライラは、頂点に
達しようとしていた。
まあ私がココで怒っても渋滞が無くなる訳では無いと気持ちを切り換え、忘れかけていた次期愛車
候補である現行のフィットハイブリッドのインプレッションを改めてする事にした。
「現行フィットって、何となく初代オデッセイっぽいな・・・」
コンパクトカーにも拘らず、結構広々としたダッシュボード周りがそう感じさせたのかもしれない。
しかし…。
実は完全無欠に見えるフィットにも、重大な欠陥が有るのだ!! それは何と言ってもAピラーの
太さと位置に限る!! 兎に角、かなり視界を遮られてしまうのだ! 特に運転席側のAピラーの
死角たるや、想像を絶するほど巨大だ!! 何せ横断している歩行者はおろか、トラックでさえも
スッポリとその死角に収まってしまう程の太さなのだから!
流石に初代から見ればかなり改善はされていたが、この部分に関しては、デミオの方が何倍も
優れている…。
レンタカー屋に返す前に、当然の事ながら燃料を満タンにしなければならないのだが、ココで先程
のネガな感情が一気に吹き飛んだ!
「う~んと、〇〇km走って、◆リットルという事は…」
両手を目一杯駆使して計算すると、何と、≪26km/ℓ≫というスンゴイ数値を叩き出していたのだ!
「うわ! コレ満タンだと、無給油で九州まで行けるじゃん!!」
何かフィットがとても格好良く見え始めた…。
さて、新神戸駅に戻り車を返して新幹線のホームへと駆け上がると、来る時とは打って変わって、
≪ソノ筋≫の人物は皆無であった。
“入り鉄砲、出女” では無いが、上りホームには確かに官憲も神経質になる事は無いのだろう。
ひとしきり“お土産”を購入した後、往きとは違い、帰りは酒も飲まず新幹線の車窓から暮れゆく
景色をボンヤリと見つめていた…。
無事新横浜に到着すると、少し贅沢な崎陽軒の焼売を購入し近所のマダームの元へと向かった。
御土産を渡し、“坊(仮名)”を預かってくれた謝意を言った後、今日一日も“坊(仮名)”の様子を聞い
てみた。 すると・・・。
「“坊(仮名)”は可愛いねぇ~ でも…おやつを盗み食いしたから、
チョット叱ったら、スグに玄関のど真ん中に≪ンコ≫して逃げて行ったのよ…」
「う~む・・・・“坊(仮名)”は何処に行っても“坊(仮名)”を貫いとるな・・・」
チョット頼もしく感じた。
迎えに来た私の姿を見て、また捨てられたのかと思っていた絶望の淵から、一転興奮して発狂
寸前となっていた“坊(仮名)”を小脇にかかえ、今度こそ本当の帰路に着く事にした。
長い一日だったが、あっと言う間の一日でもあった…。
おわり
※尚、この日の模様は、愛車紹介ホンダ フィット フォトギャラリー
内の→
“ココ” にありますので暇な時にでも、どうぞご覧下さい!
でわでわ!