しんげん神奈川のブログ一覧

　ふと現実に戻ると、まだまだ残っている食材の調理に

戻った。何せ、焼きそば用の豚バラ肉だけで2㎏も用意

していたのである。その他にも牛肉が1㎏丸々残ってお

り、何とかこれらを皆の胃袋の中に押し込まねばならな

い(笑)　幸運にも、ここで最後の参加者である“D家”が若いオナゴを二人と一匹連れて馳せ参じ

て来た。私と愚弟の表情が、パッと明るくなった。私は食材の消費を進める事に喜び、愚弟は久し

ぶりの若いオナゴの出現に眼の色変えて喜び、そしてストーカーと化してゆく…(苦爆)

　と言う訳で、再度鉄板を加熱し、肉と野菜を投入した。と、その時、その勢いに押されてか、虎の

子の牛肉を、丸ごと落としてしまった！　しかも肉は転がり車の下へと入って行った。

　「くそー！　よりによってあんな所へ転がり込むとは！」

下を覗き込むと、スグには取れない所に肉は鎮座していた。仕方なく一旦火を止めて、匍匐前進

の様な態勢で這いつくばって、牛肉サルベージ行動を執った。と、その時、またデジャブーが目の

前に広がった…。



　濃霧の中、右足を痛めたフルチン姿の私は、取り敢えず右足の痛みが落ち着くのを待った。そし

てなんとか身体を動かせる準備が整い、まずは最優先課題である、脱ぎ捨てたパンツとズボンの

捜索にあたった。しかし立って歩く事は出来ず、匍匐前進、それもマニアックに“第三”匍匐前進の

態を取らねばならなかった。しかし、下は何も着けておらず、上はタンクトップ1枚であった事が、こ

の期に及んで功を奏し、衣服が泥水で汚れる事を避ける事が出来たのは、不幸中の幸いだった。

これならば、無事、皆の前に帰還した時も、大事になった事に気づく者もいないであろうから…。



　肉は目の前に転がっていた。しかし、どうしても、あと一歩が届かない！　右手を攣らんばかりに

伸ばしても、指先に肉の端が触れるだけ。

　そこである事に気が付いた。

　「……オイラは、“人間” だった」

そう、道具を使えば、何も素手で取る事は無いのである。(苦笑)　と言う訳でトランクからトングを

取り出し、再度クルマの下へと回った。と、その時、またデジャブーが目の前に広がった…。



　全身から激痛に耐える脂汗を流し、しかし必死にパンツを探していた私であったが、ついにその

体力も尽き果てようとしていた。

　「もはや、これまでか…」

この濃霧が晴れてしまえば、大草原のど真ん中で、“フリチン姿のオッサン” が倒れている光景が、

公然の前に晒されるのである。

　「ううう、く、くそ！」

と、怒りの視線を向ける先に、キラリと光る物体を確認した。目を凝らして見ると、美しく輝くラメ模様

のハイレグブリーフがひっそりと牧草の上に載っていた。紛れも無く私のセクシーブリーフであった！

　私は思わず呟いた！

　「コン兄ィよ、あれがパンツの灯だ！」　と…。

しかし、ここからが大変だった。なにせ体力の限界が近づいているのと、ここに来て右足の激痛が

再発したからであった。正に動く事も出来ない状態に陥っていたのだ。その時、やはり、ある事を思

い出していた。

　「……オイラは、“人間” だった」

そう、道具を使えば、何も全身全霊をかけて取る事は無いのである。(苦笑)

　と言う訳で、辺りに落ちているであろう木の枝を見つけるべく、辺りをまさぐった。そうして手頃な

枝を奇跡的に発見し、その枝を“マイ・セクシー・ブリーフ”へと伸ばしていく…。



　トングを手に入れた私は、やすやすと肉をゲット出来る筈であった。しかし、正にトングで肉を掴も

うとしたその瞬間、黒い物体が現れ。フンフンと匂いを嗅ぎながら肉を反対側へ引っ張り出そうとし

始めた…。



　枝を手に入れた私は、やすやすと“マイ・セクシー・ブリーフ”をゲット出来る筈であった。しかし、

どうしてもあと少しが届かない！　しばらくは、こう着状態が続いていたが、次第に“マイ・セクシー・

ブリーフ”はその重みで牧草の上から沈み始め、その下にあるであろう泥濘の中へと堕ちて行く…。



　慌ててトングで肉を掴むと、完全に黒い物体との引っ張り合いとなった！

　「この糞弟が！　サッサと離せ！」

　「フンフン！　グルルルルゥゥ！　ふんふん！」

どちらも一歩も引く事無く、事は長期戦に及んだ…。



　沈んでいく“マイ・セクシー・ブリーフ”を見た私は、最後の力を振り絞って枝を伸ばした！　しかし

無情にも、“マイ・セクシー・ブリーフ”はスルリと枝の間を抜け、下へと落ちて行った。

　「これで、おわ…り…か…」

意識が遠のき、目の前が暗黒に支配されようとした次の瞬間、その暗黒な中心から、輝かんばか

りの白い光が広がって来た！　そしてその中心には羽衣を纏った美しい女性が浮かんでいた。

　「あんた…天女って奴か…」

遠のく意識の中で、私は話しかけた。

　「・・・」

しかしその問いに応えようとはせずに、ただ優しい微笑みを浮かべていただけであった。

　「天女さん、あんた、何しに来たの？」

そう言うと天女は、ゆっくりと手を牧草の中に入れ、“マイ・セクシー・ブリーフ”を摘まみ上げると、

それを私の持っている枝の先に引っ掛け、私に向き直り、今度は輝かんばかりの笑顔を私のハート

に直接打ち込むと、あっと言う間に周りの光を引き連れ、漆黒の闇の中へと去って行った。


　　つづく