実は今年に入って早々くらいの頃から。NDロードスターの冷却系に手を加えてみようと思い、色々と作業を行っていました。そもそものきっかけは、OBD2(故障診断等の為に使う)コネクター接続タイプの水温計を取り付けた事。水温がきちんと1度単位で表示されるようになった為、欲が出て油温も把握したいと思うようになったからです。
ですがNDロードスターのOBD2コネクターからは油温の情報は取れない為、当然ここに接続するタイプの簡易メーターは付けても無駄になります。そして油温等のセンサーを取り付けたアダプターを組み込み、配線処理を行うのであれば。どうせなら、一緒にオイルクーラーも取り付けてしまおうと考えました。
まずオイルクーラーとして、最も一般的なのは空冷式。冷却水を冷やすラジエターと同じように、冷却フィンの付いたオイルクーラーコアの中にオイルを流し。走行風や電動ファンの風などを当てて空気中に熱を放出します。
一番単純な仕組みだと、ただ熱いオイルを引き出して。オイルクーラーで冷却してそのまま戻したりしますが。これだと外気温の低い時などに、オイルを適温以下まで冷やしすぎてしまうオーバークールの可能性が出て来ます。そこで、これまた冷却水と同じようにサーモスタットを配管経路の途中に設置し。油温が適温以上に熱い時のみオイルクーラー側にオイルが流れるようにするのが一般的です。
なお、この配管に使われるメッシュホースの寿命は約10年くらいの模様。それを超えて使い続けると、ホースの途中などからオイル漏れを起こして走行不能になったり。最悪、火災の恐れもあるので。こまめな点検と寿命前の交換等が必要になります。
そして、もう一つの方法は水冷式です。ロードスター用として最も一般的なのは、NA型、NB型向けに『マルハモータース』さんが販売している製品でしょうか。
一般的に、普段の街乗りくらいの使用環境下では、油温は水温+10度くらいになるようエンジンは設計されているみたいです。ただ、冷却水にはラジエターという冷却装置が存在するのに対し。エンジンオイルは、エンジン内部を回りながら冷却水によって冷やされているのみ。スポーツ走行やサーキット走行等で高回転高負荷の環境下では、水温+10度を大きく超えて油温が120度以上まで上がったりもします。
しかし、仮にそれでも水温が95度くらいを維持出来ているのであれば。それはラジエターの冷却能力にまだ余力があるという事。そしてエンジンを出た直後の一番熱い状態の冷却水でも、まだエンジンオイルを冷却する事が可能な温度に留まっているという事です。
そこで、エンジンから出てラジエターに入るまでの間の配管に水冷式オイルクーラーを割り込ませ。そこでエンジンオイルを冷却した後、ラジエターへと流します。ここでの熱交換により、冷却水は熱い状態から更に加熱された上でラジエターに入りますが。冷却水の温度と外気温の温度差が広がれば、ラジエターの冷却能力も連動して一緒に向上する為。ラジエター通過後の冷却水の温度は、水冷式オイルクーラーによって加熱された分ほどは上昇せず。余分に熱を放出した上で、エンジンへと戻っていきます。冷却水の温度にはまだ余裕がある為、ラジエターから戻ってくる冷却水の温度が多少上昇しても、それを吸収する余地はあり。その若干のデメリットと引き換えに、エンジンオイルが冷却されて油温が適温に近づくのであれば。差し引きしたメリットは非常に大きくなります。
もう一つ、ND5RC型ロードスター専用の製品として。『R magic』さんの『RM オイルクーラー内蔵アルミラジエター』があります。これは分厚いレーシングラジエターの、サイドタンクの一部にオイルクーラーを内蔵した製品になります。以下は、商品紹介ページからの引用になります。
『サイドタンクに水冷オイルクーラを内蔵したラジエターです。
油温の厳しいNDロードスターにおススメです。
温度の高い物体と温度の低い物体を接触させると、必ず熱が高い物体から
低い物体へ移っていきます。これを熱伝導といいます。
水温と油温を比較すると、油温のほうが高くなることが殆どなので
オイルは水によって冷まされます。
また、物質の温まりやすさや冷めにくさを表す比熱は水が1、オイルは約0.5。
水はオイルと比較すると、温めるのも冷ますのも2倍の熱量が必要です。
( 水は温めにくく冷めにくい )
逆に同じ重さであれば、オイルは水に比べて倍のスピードで冷めていきます。
ラジエター内の水の容量はオイルクーラー内の容量の約25倍なので
水温は油温の影響をほとんど受けず、油温だけが下がるのです』
本格的な性能を持つ水冷式オイルクーラーは、とりあえず身近なところではこの2つでしょうか。それに対し、『CUSCO』さんが先代86及びBRZ向けに販売している水冷式オイルクーラーは、幾分簡易的な製品になります。
オイルクーラー本体は、純正のオイルブロックとオイルフィルターの間に挟み込んで装着する小型タイプのものとなっており。冷却水経路のアッパーホースとロアホースに、それぞれアダプターを割り込ませて。本流に比べてかなり細い支流の冷却水でエンジンオイルを冷却し、また本流へと戻っていく形になります。
製品としては安価であり、装着も難しくはありませんが。ただ『マルハモータース』さんの製品とは異なり『オイルとの熱交換で加熱された冷却水を、ラジエターを通さずにそのままエンジンへと戻してしまう』という基本構造となっている点に若干の不安を感じます。水冷式オイルクーラーを通る支流の流量は、本流と比べ圧倒的に少ない為。ロアホースへと戻されて混ざれば、ほぼ問題は無いのかもしれませんが。感覚的に、あまり気持ち良くはないですね。
と、ここまで考えてふと思いついたのが。サーモスタット無しの空冷式オイルクーラーで、まず油温を意図的に適温以下まで下げて。その後にCUSCO製の水冷式オイルクーラーを通してみるというのはどうだろうか?という案でした。
冷却水とエンジンオイルの間で熱交換を行うという構造上。水冷式オイルクーラーには、オイルの温度が水温より低い場合には暖めるという機能も備わっています。そしてオイルを温めるという事は、冷却水の側の温度が下がります。
つまりこの2つを組み合わせれば、空冷式オイルクーラーはいわば『油冷式追加ラジエター』としての機能も同時に担う事となり。水冷式オイルクーラーを通った側の冷却水も本流と同様に、きちんと冷やしてからロアホースへと戻してくれる訳です。
ただ、闇雲に空冷式と水冷式を組み合わせれば良いというものではありません。意図的にオーバークール状態に持ち込む以上。空冷式オイルクーラーが、およそ考え得る最高の環境下で最大限油温を下げたとしても、それをきちんと適温まで戻せる範囲に留めなければなりません。例えるなら『ライターの炎は、スプーン一杯の水を温めるには十分だけど。バケツ一杯の水を温めるには力不足。水の器の大きさは、火力に見合ったものでなければならない』といった感じです。
そこで着目したのは、オイルクーラーの冷却容量を示す数値でした。CUSCO製水冷式オイルクーラーの容量は、製品情報によれば4000Kcal。空冷式オイルクーラーの容量もこれとほぼ同じものにすれば、理論上は空冷式の側が目一杯冷やしたものを水冷側で再び冷やす前と同じくらいまで暖められるはず。まして元の温度と同じところまでではなく、適温まで暖めるだけであれば。きちんと余裕を持って適温に戻す事ができるはずだと考えました。
そんな事を考えていたところで、折良く中古のCUSCO製水冷式オイルクーラーがオークションに出品されているのを発見。無事確保する事が出来ました。そして空冷式オイルクーラーも、とりあえずセトラブ製の製品サイトをチェックしたところ、一番小さいサイズのものが、CUSCO製とほぼ同じ4200Kcalとなっており。ちょうどバランスが取れそうです。
そして、この2つをオイルクーラーとして使用した場合の性能はどうなるかを考えると。まず空冷式オイルクーラーの冷却能力で対応できる熱量の範囲では、前述の通りに空冷式のみで冷却が終わり。水冷式は、あくまでその後の油温を適温に保つのみとなります。そして負荷と熱量が上がり、空冷式オイルクーラーを通過してもまだ、油温が水温を上回るのであれば。ここでようやく、水冷式オイルクーラーがオイルの冷却を開始します。つまり冷却容量は、空冷式の4200Kcalと水冷式の4000Kcalを合計した8200Kcalとなり。CUSCO製水冷式オイルクーラーのもう1つの弱点である、簡易型ゆえの冷却容量の少なさもカバー出来ると思われます。
さて問題は、他車種向けの製品であるCUSCO製水冷式オイルクーラーがNDに装着出来るかどうかですが。現物を入手して検討した結果、十分に勝算はあると思われた為。試しに挑戦してみる事にしました。製品側を完全無加工で装着する方針で挑戦すれば、失敗したとしても再び中古部品として購入した時と同じくらいの価格で売却出来ますし。その場合はサーモスタットを追加購入して、単に空冷式オイルクーラーのみ取り付ければ済む事です。
そんな感じで、埼玉方面の調査と並行してずっと作業を行っていましたが。最近、ようやく完成の目処が立ちました。現在、部品の装着は既に完了し。オイルラインもウォーターラインも完成して、NDは問題なく走行可能な状態。油温計などはまだ装着していない為、そちらの温度はまだ不明ですが。水温側は90度前後で安定しており。恐らく装着による悪影響は出ていないものと思われます。
・・・が。狭いガレージ内でずっと作業を進めていた為、運転席側側面のウインカー付近とリヤ側のトランク上部に小傷が付いてしまい。それを綺麗にしようと薄く市販スプレー塗料のクリアーを吹き、1000番の耐水ペーパーで水研ぎをしたところ。NDの塗装がMR-S辺りの頃のものと比べ圧倒的に薄く、また1000番ペーパーの研磨力が予想以上に強かった為、ちょっと目立つ外観となってしまいました。
いずれは予算をきちんと組んで、しっかり塗装屋さんに塗り直してもらう予定ですが。それまでのつなぎとして、現在市販スプレー塗料で手直しを試みています。基本的には晴れていれば塗装、雨ならばメーター装着等の作業を進める方針で、全ての作業終了目標は5月末を目指しています。
全ての作業が完了したら、ブログに作業の内容をまとめて載せる予定ですが。ちょっと先出しとして、ツイッターにて『P5-VP(RS)』というアカウントを立ち上げ。細々とした画像や文章を投稿したりしていました。
また、整備手帳の方も暇を見て。作業内容を載せて行こうと思っています。
オーバーワークにならないよう、適度に休みを入れたりしつつ作業を進めておりますので。ご報告まで、もう少々お待ち頂ければと思います。
