今回思いがけず、ND RFを試乗する機会が得られました。ディーラーにて部品交換をお願いした際、作業の間1時間ほどND RFを試乗しても良いとの事。その上で、率直な感想を伝えてもらいたいというお話でした。2018年のマイナーチェンジで刷新された2Lエンジンには、実は私も興味津々だった為。ここはありがたく引き受けさせて頂く事にしました。
まず内装は、シートもドアパネルも全て新色のホワイト。新しい色が選べるようになった事で、コーディネートの幅が一気に広がりました。
乗り込む際にまず目に付いたのが、スカッフプレート部分にさりげなくアクセントが加わっていた点。これは格好いいですね。
メーターパネルは、まず左の各種状態を表示するメーターが大幅にデザイン変更されていました。中央のタコメーターも、1.5Lのものと同じレブリミット7500回転の表示になっています。なお左側のメーターには走行中、その道路の制限速度が一番脇に表示されるという機能も付いています。
オートエアコンの操作系は、従来のまま変更なし。それとどうやら、この車にはシートヒーターも運転席と助手席、それぞれ独立した形で装着されていますね。
装着タイヤは205幅の17インチ。指定空気圧は私のNDと一緒のままでした。
アイドリングストップ機能も付いているようですね。私としては好みの機能ではないのですが・・・。
と、ちょっとだけ各部を眺めてからミラーとシートポジションを調整して、まずは屋根を閉めたままで走り出します。
まず感じたのは、走行中に感じる剛性感の高さ。一通りの補強パーツを装着した上にドアスタビライザーまで追加した私のNDと比べても、素の状態で互角の車体剛性がある印象でした。確か2Lモデルは、パワープラントフレームもデフもドライブシャフトも強化品が装着されているはずなので。この剛性感の肝は、きっとパワープラントフレームにあるはずです。恐らくこの部分の強化は、私が予想していた以上に効果的だったのでしょうね・・・。
次にサイドミラーですが、私のNDにはワイドミラーを装着してある為、ノーマルミラーはこんなに映す範囲が狭かったのかと感じました。でもミラーの端にランプが内蔵されていて、センサーが追いついてくる車などを感知すると光って知らせてくれる仕組みになっています。この機能があるならば、対象物との距離を正確に把握出来るノーマルミラーのメリットが光ります。この機能を無効化してまで、あえてワイドミラーを装着しようという気にはなれませんね。
エンジンは、やはり2Lだけあって低速域でのトルクに厚みがある印象。私の1.5Lエンジンと比較して、劇的な差を感じる程ではありませんが。やはり排気量差に起因する余裕というか、重厚さがどことなく伝わってくるフィーリングです。それでいて、アクセル操作に対する遅れや重さを感じる事はありません。やはり、純正の制御も熟成が進んできていますね。ベースがこれだけ良いのなら、更に手を加えたチューンドECUはどうなるのだろうかと楽しみになってきます。
MTのシフトフィーリングは、1.5LのNDとほぼ同じ感覚。恐らく、シフトストロークも一緒だと思います。増加したトルクに合わせて耐久性を強化してあるかは不明ですが、少なくとも操作感は変わらぬまま。個人的に今のフィーリングは気に入っていたので、ここは嬉しかったですね。
しばらく走ってから、ちょっと自動車用品店に立ち寄り。手早く私用を済ませて、再度エンジン始動。今度は、停車する度に介入してきていたアイドリングストップ機能を無効化してみます。これは、ボタンを少し長押しするだけ。メーターに機能停止を知らせるランプが点灯して、それでアイドリングストップはしなくなります。ただし、次回のエンジン始動時にはまた有効になります。
そうして、次はディーラーに戻る途中のホームセンター屋上駐車場に車を止めて、各部を観察してみる事にしました。
ボンネットを開けてみてまず見えたのは、タワーバーも未装着のままのエンジンルーム。あれほどの剛性感にも関わらず、補強パーツを付けていなかった事には驚きました。そして排気量がアップしても、そこには適度な隙間が維持されていて。整備性の良さは1.5Lモデルと変わらないままの様子ですね。
この車の肝、改良後の2Lエンジン。もう1.5Lエンジンと同等の完成度を誇るレベルまで進化しているなと実感させてくれました。
なお2018年のマイナーチェンジの際、2Lエンジンは大幅に刷新されましたが1.5Lエンジンは小変更に留まりました。
新しい2Lエンジンが素晴らしいのはもちろんですが。私は、ほとんど変わらなかった1.5Lエンジンも素晴らしいと思います。例えばデジカメの場合、頻繁にフォームウェアの更新が行われていると、メーカーに大事にされているように感じたり、動作の安定や機能の向上を喜んだりしますが。実はそれは、発売時にはまだ未完成だった、まだまだ機能の向上が見込める状態だった事を意味します。
フォームウェアの改善が行われないのは、そのままで十分に安定していて、カメラの機能をしっかり引き出している事を意味しており。本当にすごいのは、発売前にしっかりそこまで熟成させてある方のカメラなのです。
2015年の発売から3年が経過しても、ほとんど改良の手を加える余地のない程に完成されていた1.5Lエンジンは、実はすごい存在なんですよ?
この車にはアイドリングストップ機能が付いている為、バッテリーは当然のように専用の高性能品。頻繁にエンジン再始動でセルモーターを動かす為には、相応の電気の蓄えが必要になってきます。当然、それを可能にする専用バッテリーはどうしても高価になってしまいますね。
もちろん装着されているブレーキは2L用の大型で、この車は非ブレンボ車でした。個人的には、これで十分な性能だと感じています。
足回りは、非ビルシュタインの純正脚。味付けとしては1.5LのNDよりもやや安定性を増す方向に振られており、より長距離走行が楽になりそうな印象を受けました。
ヒートシンク付きの大型デフは、2Lモデルの証でもあります。個人的には、ちょっと羨ましく感じてしまう部分ですね。
トランクは、幌モデルよりも多少開口部が小さいような気がします。でも容量自体は、ほぼ同等くらいでしょうか?
それよりもまず、自分の車との差を感じたのがトランクを閉める時。私のNDにはリヤウィングが付いている為、その重みで閉める際に負担がかからないよう手加減する必要がありますが。素のままでトランクを閉めようとすると、軽過ぎて上手く閉まらない為に気持ち勢いを付ける必要がありました。まあこの辺りは、自分の車として乗っていれば自然に慣れていく部分だと思います。
ここでいよいよ、屋根を開けてみます。開閉は全自動ですが、動作が完了するまでの間、ずっとスイッチを押し続ける必要があります。ここは何かを挟みそうになった時の為に、安全性に配慮しているからですね。
そしてこの動作ギミックは、眺めていて非常に楽しいです。こればかりは、RF乗りの特権ですね。
なお左斜め後方の視認性は、幌モデルと特に変わらない印象です。幌や屋根で隠れてしまう部分に、上手く後方の突起物を納めてありますね。
RFで屋根を開けると、天井部分と後方の窓は格納されますが、後方の突起物はそのまま残ります。そしてこれが、オープン走行時の巻き込み風を防ぐガードとして非常に優秀に機能します。若干開放感はスポイルされますが、それでもきちんとオープンカーの血統は引き継いでいますね。
キーのデザインは、私が使っているものとはかなり違っていました。これが、今の形なんですね。
それからセンターコンソールのUSBコネクターは、私の車よりも出力アンペア数が上がっていました。ちなみに私の車では、同条件で計測して0.5A程度です。
こうして一通りの使い勝手を確かめたりしてディーラーに戻ったら、約束の1時間を結構オーバーしてしまう結果に。ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありませんでした・・・。
そして当然、試乗の感想を求められましたが。私としてはほぼ同じデザインとボディサイズのままで、しっかりとそれぞれのモデルで差別化に成功しているなと感じました。
まず従来の幌モデルは、どちらかといえば初めてロードスターのようなスポーツカーを体験される方。それも、やや若者向けでしょうか?
全体的に動きが軽快に感じられる味付けをされていて、早く運転の楽しさを味わいたいと飢えている方がすぐに満足出来るよう、乗りたくなったらいつでも気軽に近場へ走って行けるような親しみやすい印象です。若い頃の石田三成が豊臣秀吉にお茶を出した際の逸話で例えるなら。喉が渇いている時にごくごく飲める、1杯目のぬるいお茶みたいな感じでしょうか?
一方のRFは、既にロードスターという車を知っている既存オーナー向けに、こんな形もありますよと提案しているような気がしました。一部で『ロードスター乗りは距離計が壊れている』などと言われるように、ロードスターにはどこまでも走って行ってしまいたくなる、ずっと乗っていたくなると感じさせる魅力があります。そして実際に、それを実行してしまう方も意外といたりするんです。
ですので幌モデルよりもややステアリングを重めにして、足回りも違和感の無い範囲で安定志向の味付けに。排気量アップによるトルクの厚みは、軽快感よりも扱いやすさ、乗りやすさを感じさせてくれます。いわゆる『ヒラリ感』は多少スポイルされますが、その代わりに長距離走行は楽になっているはずです。こちらはしっかりとお茶の香りと味わいを楽しめる、3杯目の熱々のお茶になるでしょうか?
人は若い内はカスタマイズを好んで刺激を求めますが、年配になってくると逆に純正に戻していって、本来の味付けやバランスの良さを楽しむ傾向があると、以前どこかで耳にしたような気がします。多分RFは、そうした方々が好む方向性になっているのでは?と個人的には感じました。
と。そんな感じの感想を、大まかにディーラーの方に伝えましたが。なにぶん口下手なので、あまり上手く説明出来ていないような気がします。ともあれ、現行RFには非常に好印象を受けました。
最後に、1.5Lモデルと2Lモデルではどちらが好みですか?と聞かれましたが。・・・済みません、どちらの方が良いかは選べませんでした。
例えるならば、元野球選手の王さんと長嶋さんではどちらがすごいかと質問されたようなものの為。それぞれ方向性は違うけど、どちらも同じくらいすごいとしか答えられないぞ、みたいな感覚です。
つまりは、約5年10万km乗って愛着が沸いている自分の車と同等の好印象を抱いてしまった訳でして。それだけRFは良い車なんだな、と思いました。