ご存じの方も多いと思いますが。NDの純正スタビライザーは、スタビライザーブッシュとしっかり接着され固定されています。多くの方がここに疑問を抱き、スタビライザーブッシュを切り離したり車外品に交換されている方も沢山います。
ご多分に漏れず、私もブッシュの切り離しを計画しましたが。そもそもなぜ、この部分が接着されているのか先に調べておこうと思い直しました。
自動車メーカーは新車設計時、非常にシビアにコスト管理をしています。つまり、わざわざコストをかけてまで行った事には必ず意味があるからです。
そこで、まずはネットで検索して調べてみたところ。最初に見つかったのが当みんカラの、『SUGI@ND_RF』さんの記事でした。
https://minkara.carview.co.jp/userid/2833436/blog/44483115/
この記事によれば、スタビライザーとブッシュを接着する事に対して特許が取られており。その目的は、『異音対策とスタビライザー本体の軸方向へのずれ防止対策』の為との事でした。
それを踏まえた上で、次のリンク先を見てみます。
https://shine-and-eternity.at.webry.info/201301/article_5.html
こちらは外車オーナーの方ですが。スタビライザーを社外品に交換したところ、なぜかフロントスタビライザーだけが左にズレてしまうという症状に悩まれています。
なぜ左側にばかりズレるのかに関しては、自宅から道路に出るまでの間左折を繰り返す必要があり。それによって最初どちらかにズレると、後はもう加わる力が全てその方向にばかり押すよう作用してしまうからだろうと推測されていました。
そしてスタビライザーがズレた結果として一緒にリンクもズレ、それがアンダーカバーと接触して異音の発生の原因となっています。
さて。ノーマルスタビライザーはこの問題にどう対処しているのかの答えが、スタビライザー本体とブッシュの接着でした。
スタビライザーをブッシュと接着されていない社外品に交換した結果として、実際にスタビライザーがズレて周囲と接触してしまっています。
さて、NDの足回りはどんな状態だったかな?と思い、ネットで分かりやすい画像を探してみました。
https://motor-fan.jp/article/photo/10011063/20190819152142000000
斜め前方からの画像しか見つかりませんでしたが。フロントスタビライザーは、確実に左右にズレそうです。そしてすぐ隣にショックアブソーバーが位置する為、あるいはズレた結果として接触する可能性もあります。
ここまで机上で下調べしたところで、次は実測に移ってみます。
S スペシャルパッケージのフロントスタビライザーを計測。約2cm、左右にズレる余地があります。
続いてリヤスタビライザー。こちらは1.5cmくらい動きそうですね。
次は、車体側の余裕がどれくらいあるかを確認。フロントスタビライザーは、隣のショックアブソーバーまで3cmほど余裕があります。
一方リヤ側は、周囲に接触しそうな物はありません。少し上にサスアームがありますが、こちらはスタビライザーと一緒に持ち上がるので問題ないはずです。
結論としては、スタビライザー本体とブッシュを切り離しても周囲と接触はしませんが。フロント側はスタビライザーがズレて接近してきたら、接触までたった1cmしか余裕がありません。
これを安全と考えるか危険と考えるかは、人それぞれですね。
さて次は、スタビライザーとブッシュの切り離しが乗り心地に影響するかどうかを調べてみます。まずは再度スタビライザー本体を計測。
フロントスタビライザーのブッシュ部分から端までの長さは、約25cm。直径は、22.4mmでした。
同様にリヤ側を計測すると、約16cm。直径は11.2mmです。
これらの数字をCADに取り込んで、例えば4cm車高を下げた時に根元のブッシュがどれくらい捻れるかを作図して計測してみました。
フロント側は、約10度。リヤ側は、約15度ほど捻れてしまう模様です。
真面目に考えると、スタビライザーはサスアームの途中と連結されている為、車高ダウン量とスタビライザーの上昇量は異なってくる可能性もありますが。そこまで考えると面倒なので、簡略化してしまいます。
これだけ中心軸が捻れるのだから、スタビライザーブッシュは捻れやすいよう柔らかい材質になっているのかな?と一瞬思いましたが。触ってみると、しっかり固いです。もちろんゴム製品だけに、指で押せば気持ち凹むような感覚はありますが。全然手加減されていない、普通に丈夫なブッシュです。これは、捻れたら結構な反力を発生させそうですね。
さて、この反力がどの程度影響するかですが。最初の記事の中で『SUGI@ND_RF』さんが計算している通り、走行性能には全く影響しないでしょう。でも乗り心地にも影響しないかどうかについては、考えてみる余地があります。
というのも、車高を下げる事で同時に捻れが発生するサスアームブッシュの方では、1G締めという作業をされている方が多数いるからです。
1G締めとは、サスアームにしっかり通常の車重がかかった状態でサスアームのボルトを一度緩めてから、再度本締めする作業です。これによって、それまで捻れていたサスアームのブッシュが解放されて、静止状態では捻れていない状態に戻り。サスアームの動きがスムーズになるとの事です。
この1G締めによってブッシュの反力が無くなった結果として車の挙動が変わり、サスペンションセッティングを変更する事になったという話はさすがに聞きません。でも、乗り心地が変わったという声は調べると多数出て来ます。
となると。スタビライザーブッシュの反力が無くなる事で、乗り心地が多少良くなる程度の効果はあってもおかしくない気がします。
アスファルト舗装のつなぎ目やマンホールの蓋など、1、2mmの段差を乗り越えただけでも大抵の人は気付きますし。ちょっと気を付ければ、路面のざらつきも何となくなら感じ取れると思います。
大きく車高を下げているなら、サスアーム周りの1G締めと併せてスタビライザーブッシュの反力に関しても、多少考える余地はありますね。
さてそこで、私のNDでスタビライザーブッシュの切り離しをする必要があるかどうかを改めて考えてみると。現在車高はノーマルに戻っており、今後も下げる予定はない為、切り離すメリットはほぼ無し。むしろ、スタビライザーが左右にズレるというデメリットだけが出てしまうと予想されます。
そんな訳で、スタビライザーに手を加えるのはやめておく事にしました。
このままノーマルセッティングの脚で、今後も乗り続けていきたいと思います。