クルマ弄りを始めてから、40年になろうとしている。そのほとんどが走りには何ら関係のない、見た目と音(オーディオ)に関わる弄りであり、基本性能(走り)に関わるものは数少ない。いわゆる「プラモデル感覚」でできるレベルである。
そもそも技術も知識も乏しいため、その数少ないケース、例えばエンジンや足回りに関わるもののほとんどがプロ、セミプロ級の仲間の手によるものだ。わたしにできることと言ったら、せいぜいハイテンションコードやプラグ交換といった、引き抜いたり押し込んだり、ネジ回しといった類である。
でも本当の面白さはやはりエンジンや吸排気系の弄りにあり、使用前使用後に味わえる「体感」を得られたときに、時間と費用の投資効果に大いなる自己満足感を手にできる。
しかし、最近のクルマはセンサーの塊であり、もはや「電気製品」に近くなっていると思う。下手に弄って回路をショートさせようものならあっと言う間に不動状態に陥り、とてもシロウトの手には負えなくなってしまう。エンジン周りなど、悪いことは言わないからシロウトが手を出すのはやめておいたほうが良い、という「禁断の果実」である。
かつてのアナログ的、機械的構造のクルマであれば、何とか原因を突き止めたりできたし、電気的なトラブルもせいぜいヒューズ交換程度で治すことができた。いや、ディーラーや修理工場まで何とか自走することができたトラブルも多かった。
それを感じ始めたのはマークXZioを弄り始めたときである。実際に何度か不動状態に陥り、深夜に至るまであちこち電話しまくって、何とか元に戻せた、なんてことがあった。
今回乗り換えたメルセデスは、私にとって思いっきり背伸びした高級車であるとともに、初めてのディーゼル車であること、そしてより「電化」が進んでいるため、さらにカスタマイズできる範囲も限られている。その結果、弄ると言っても得意のデコ・チューンや、LED化、カーオーディオなどが中心となってしまう。それはそれで楽しいのだが、どこかもの足りない、不完全燃焼的な後味が残るのも事実である。
これまで乗ってきたクルマはガソリン車ばかりだったので、基本的な仕組みや構造は理解していた。だから多少のトラブルシューティングは自分でもできたのだが、点火するのにプラグを用いない、イグニッションコイルもないエンジンがなぜ動くのかは理解できなかった。もちろん、吸入~圧縮~爆発~排気というサイクルはガソリンだろうと軽油だろうと同じだということはわかるのだが、エンジンの構造は未知なるものである。悶々としながらも、今後はもうイタズラするのはやめなければと言い聞かせていたのである。
そんな気持ちでいたためか、Racechipというサブコンなるものを見た時、簡単にしかも驚くほどのパワーアップが図れるという謳い文句に、かなりの驚きと物欲の血が騒ぎ始めてしまった。
最初に見た時は半信半疑だった。きっとトラブルやクレームが多いはずだという仮説を検証すべく、ネットでウラを取り始めたのだが、アレ?意外と良さそうではないか!という書き込みが多いのである。
取り付けに不安があれば特約店なり、ショップに行けば良いようだったし、トラブルに対するアフターフォローの評価も高かった。何事もなくDIYで取り付け、パワーアップを体感しているユーザーも多い。簡単なら自分で取り付け、割安感と達成感を体感すること、それも楽しさの一つである。
それでついに触手を伸ばし、取り付けに至った次第である。
使用前使用後の経緯はすでにアップしたとおりである。短い時間だがその効果を体感できたこともアップしたのでここでは割愛するが、相変わらずなぜサブコンでパワーアップするのかは分かっていなかった。
ガソリンエンジンなら空気の吸入量とターボに代表されるように圧縮比を上げることでパワーが上がるのは理解できるが、ディーゼルも同じなのか?
そこで、この機会にディーゼルエンジンについて調べて見ようと思った次第である。
まず、なぜプラグが不要なのか?
それは、軽油がガソリンよりも低い温度で自然発火する性質があることだということがわかった。
軽油は圧縮すれば高温になって(シャルルの法則)それが発火点になり燃焼するということ。
だからツインターボで圧縮しているのかなぁという理解。
さて、ではなぜサブコンでパワーアップするのか?
Racechipのホームページを見てみると、「一般的なガソリンターボ車の場合には、ブーストセンサーとインテークマニホールドセンサーのコネクターに割り込ませることで、ブースト圧をアップします。
車両によっては、エアフローセンサーにも割り込ませる場合があります。
ディーゼル車の場合にはコモンレールデリバリーパイプに割り込ませることで、燃料圧力を変化させることで、パワーアップを行います」とある。
これがベンツの「コモンレールデリバリーパイプ」であるが、どうもここに送る「燃料圧力」というのがキーワードらしい。
これから先は私の忘備録として記載しておくが、さらに調べてみるとこんなことが書かれていた。
「コモンレールは最近良く聞かれるようになった、ディーゼルエンジンの用語。
排気ガス規制の強化により、完全燃焼(煤や有害ガスが少ない)を促進するために導入されたシステム。
「コモン」の意味は 「共通」、レールは燃料パイプのこと。
従来方式はポンプから直接各気筒に燃料を分配していたが、コモンレールは、燃料(軽油)を従来のポンプで発生した圧力(燃圧)よりもはるかに高い圧力で共通のパイプ(コモンレール)にいったん蓄え、蓄えられた高圧の燃料をコモンレールから各気筒 に分配している。
高圧となった燃料は高度に電子制御されたインジェクターにより燃焼室に吹き込まれる。
高度な電子制御は「噴射時期」と「噴射時間」を制御するとともに、本格的な噴射の前に少しだけ噴射する(プレ噴射)などの細か い制御を行い、完全燃焼を促進する。
燃料が高圧で噴射されることにより、霧の粒が小さく細かいために、良く空気と混ざり合い、燃料の気化が促進され、より完全燃焼に近づけることが可能となった。
燃料が完全燃焼すれば「煤(すす)」の発生は少なくなる。
参考までに、従来方式とコモンレール式の燃圧を比較してみると、
1.副燃焼室式 400~500気圧 旧式のエンジンのため現代の主流ではない
2.直噴式 1000気圧程度 現在、最も普及している燃焼方式
3.コモンレール 2000気圧以上 排ガス規制強化に対応できる新技術
1998年にメルセデスベンツとISUZU がほぼ同時に発表、99年になると自動車メーカー各社からコモンレール式の次世代ディーゼルエンジンが続々と発表され、現在はこのコモンレール式が主流になっている」
なるほど、ガソリンエンジンはブースト圧、ディーゼルエンジンは燃料圧力を弄ることでパワーアップしているのだということが分かった。
そして、「ディーゼルエンジンは吸入空気量ではなく燃料噴射量で出力を制御します」という解説もあり、このあたりがRacechipが何をしているのかということがだんだん分かってきた。
一方で、「燃費が更に良くなる」といった報告もあり、まだまだ奥深いものが潜んでいるようである。
あ~、面白い!
長々と最後までお読みいただき、ありがとうございました。