
その1
あのお社に続くみちは幅が2mもなかった。両脇は田んぼの畔から生えた草や低灌木が茂っていて、合間に岩があってもわからない。
それでもGoogleの地図アプリはとある四ツ辻の向こうへ進めという。
少し進んだ幅が更に狭くなる。これはだめだ。お社まではまだ遠いが車を止めておける場所もない。
「そっちじゃない」
声がした…様な気がした。
「四つ辻の手前までもどろう」
また聞こえた…気がした。
ギアをリバースに入れてソロソロと戻り、四つ辻手前で止めた。
ナビは違う道を示していた。同じような細い農道の先、鳥居が見えた。
その2
目的の滝は「神域」と書かれた鳥居と小さな祠の脇にあった。
なんだか胸が詰まって、嬉しいのだけど、そんな単純な感情でなく。
靴と、靴下を脱いで滝の下の半径3メートルほどの浅い滝壺に入る。足元は危ういが、水が滴り落ちているところまでかろうじて手が届いたので、手のひらに少し水を取り、頭にかけ、腕にかけ、首筋にかけ、顔に塗り込んで、最後に口に少し含んで飲んだ。
せっかくだから…とスマフォのカメラを起動した。シャッターを押したあと、撮影した画像を確認しようとした。
「データがありません」
え?と思いつつ、直接みんカラアプリから撮影して投稿しようとした。
カメラを起動してシャッターを押した瞬間…アプリが強制終了した。帰宅してから見ると、何枚か滝の写真が残っていた。

ではあのときのは誤動作?
あれは何だったの?
その3
帰路、渋滞に辟易して迂回路から自宅を目指した。宝塚から有馬へぬける街道…と言ってもちょっとしたつづら折りの道。それはそれで楽しい。
そこから神戸市北区のショッピングモールのあるあたりを抜けて、ダム湖沿いの緩いカーブの続く道を抜ける。
さらに、三木市の山手から再び神戸市に向かうささやかなワインディングを走っていると、とあるコーナーを抜けた時に目の前にハザードを出して脇に止まっている赤い車が見えた。
「あぶないなぁ…あ?」
やり過ごしたその瞬間。
普通でないことに気づく。周囲にはプラスチックの破片が散らばっている。メーカーのロゴもある。
事故だ。しかも直後。
赤い車の先20mくらいのところに少しバショがあるのでそこに止める。
事故後しばらく経っているなら、ドライバーはそのへんにいるはず。いないとしたら…
フロントグリルは凹んで大破。中はしおれたエアバッグが、だらしなくダッシュボードに乗っている。
嫌な予感がして運転席を見る。
…ドライバーは乗っていない。
そして、この付近に民家はない。
警察を呼んだのなら、車のそばで待機しているはず。
じゃ、ドライバーどこに?
できることがない。仕方なく、車を走らせて自宅に向かった。
Posted at 2022/08/11 02:42:13 | |
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